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シンヤがゴブリンキングを討伐して一週間ほどが経過した。
彼とミレアは相変わらず、冒険者として迷宮の探索を続けている。
この世界における一般的な冒険者は、大きく三種類に大別される。
一つの街を拠点とし、そこから通える迷宮に潜る冒険者。
あるいは、各地を転々と渡り歩き、冒険者の集まる街で依頼を受けたり、新たな迷宮を発見したりする冒険者。
それから、その二つの中間的な方針の冒険者である。
シンヤとミレアは、基本的に迷宮の探索をメインにこなしている。
時折薬草の採取や地上の魔物狩りの依頼を受けることもあったが、あくまで例外だ。
魔法の探究に精を注ぐシンヤにとっては、魔物との戦いに集中しやすい迷宮探索の方が性に合っていた。
「さあ、今日も頑張るか。その前に、一応は依頼に目を通してっと……」
シンヤとミレアは朝から冒険者ギルドに来ていた。
掲示板の前に立ち、依頼を確認する。
「お、これなんかどうだ?」
シンヤはある依頼に目をつけた。
「どんな内容なノ?」
「ああ。えーと……。『グラシア樹海に生息するレッドボアの討伐』。報酬は金貨一枚だ」
「それハ……、悪くない依頼だナ」
「Cランク以上の冒険者が対象になってるから、Cランクに上がった俺達ならちょうどいいんじゃないか?」
「なるほド。確かに、今のあたしたちに丁度いイ」
シンヤは先日のゴブリンキング討伐の功績により、Cランクに上がった。
そして、同時にミレアもDランクへと昇格している。
彼らがその依頼を受けることに、本来は何の問題もない。
しかし、ちょうど隣で掲示板を見ていた少年は違ったようだ。
「おい、そこの二人。ちょっと待てよ」
シンヤとミレアに声をかけてきたのは、金髪の少年だった。
歳はまだ十五、六といったところだろうか。
背丈はそれほど高くなく、どちらかというと痩せ型だ。
装備は軽装だが、よく使い込まれていて、それなりに高価な品であることが窺える。
彼の後ろには、パーティメンバーらしき面々が数人控えていた。
(うわ……。また面倒くさそうな奴が来たな)
シンヤは内心そう思った。
だが、無視するわけにもいかない。
「なんだ?」
とりあえず話を聞いてみることにする。
「お前達、レッドボアを狩ろうとしてるのか?」
「そうだけど、何か問題でもあるか?」
「あるに決まってるだろう! 明らかにヒヨッコのお前達が受けるような依頼じゃない!」
「だが、俺はCランクだぞ? 受注の条件は満たしている」
「はっ。どうせ何かカラクリがあるんだろ? ……ん? そっちの獣人が付けているガントレットは……」
金髪の少年がミレアを見て言った。
「これカ? これは『火焔のガントレット』だ。シンヤがあたしにくれた、大事な宝物ダ」
「そういうことか。装備のおかげで中級の魔物を倒し、その功績を主人のものにしたってところか? それはズルってもんだぜ? このオレ、レオナードの目は誤魔化せない」
「……」
シンヤは少し困った顔をした。
ゴブリンキング討伐の件はそれなりに広まっている。
そして、その後にシンヤがとある発言に立腹して殺気を振りまいた件も知っている者は知っている。
そのため、このグラシアの街においてシンヤやミレアに不用意に絡む者は激減していた。
しかし、それでも全員ではない。
グラシアの街を拠点にしている冒険者でもたまたま不在にしていた者や、他の街から一時的にやって来た冒険者などは、シンヤの規格外さをまだ知らない。
レオナードもそういった者の内の一人だ。
「悪いことは言わねえ。レッドボアは諦めろ」
「どうしてそんなことを言い出す?」
「簡単だ。レッドボアはオレの得物だからな」
金髪の少年レオナードはニヤリと笑った。
「へぇ……。面白いことを言うじゃないか」
「当然だ。なんといっても、オレは将来有望な冒険者だからな」
「じゃあ、その実力を見せてくれよ。こっちとしても、簡単にこの依頼を譲るわけにはいかないんでね」
シンヤがそう言う。
彼としては、別に普段通りに迷宮に潜っても構わない。
だが、血気盛んな若者と戦うのもいい鍛錬になるかと思い、あえて挑発的な物言いをしたのだ
「ふん、いいだろう。決闘だ。ただし、手加減はできないから覚悟しろよ?」
「望むところだ」
こうして、シンヤとレオナードは決闘をすることになったのだった。