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「目覚めはどう?」
目の前がぼんやり霞んで頭もボーッとする。
「大丈夫?」
囁くような誰かの声と、優しく髪を撫でる指の感触で、私は瞬間的に現実に引き戻された。
えっ!!
すぐ目の前で笑みを浮かべているこの男性の顔は、我が目を疑う程に美しく……
「あっ、あっ、あの、すみません!」
ここがどこなのかもわからずに、私は慌てふためきながら寝ていた体を起き上がらせた。
「……彩葉(いろは)、見えてるから」
「えっ……」
自分の大事なところがあらわになっていることに気づくまで、残念なことに数秒要した。
「うわっ!!」
急いで薄めの布団を掴んで、何もつけていないあまりにも無防備な胸を隠す。
「今さら遅くないか?」
ベッドの中、隣で少し意地悪そうに言った男性。
この人を形容するには「イケメン」という簡単な言葉だけでは少なすぎる。
眉目秀麗、甘いマスク、ハンサム、一世一代の美形……どれであってもピッタリ当てはまる。
でも……
なぜ私はそんな人の横にいるの?
しかも、上から下まで何も着けてない状態で。
とにかくその答えを探したくて、頭の中をフル回転させ時間をさかのぼる。
あ……
しばらくしてある映像が浮かんだ。
そうだ、私……九条さんと……
「彩葉? 大丈夫?」
「……あの、私……」
九条さんもゆっくりと体を起こした。
一糸まとわぬその鍛え上げられた裸体は、逞しく、美しく、まるで古代ギリシャの彫刻のよう。
その大人の艶めかしい肉体美を直視できずに思わず視線を逸らすけど、心臓は正直に激しく脈打ち出した。
そうだ、私、この体に……
さっきまで夢中で抱かれてたんだ。
その感覚がまだ体中のあちこちに残ってる。
でも、この素晴らしい胸板にほとばしっていたはずの汗の雫は……もうすっかり乾いていた。
「彩葉?」
「あっ、はい。すみません、あの……私、どうして九条さんと……」
「その質問は本気? 冗談?」
「えっと……」
「本気で覚えてないのか?」
「いえ、その……」
確かに九条さんに抱かれたこと、それはもちろん覚えてる。
だけど、なぜかその前のことはまだぼやけていた。
「数時間前、俺は君とたまたま道の途中でバッタリ出会った。声をかけたら君が突然ふらついて倒れそうになったから、休憩できるところに連れてきた。それがここだ。今に至る経緯、思い出した?」
そうだ、ようやく思い出した、九条さんの言う通りだ。
数時間前のあの時、私はたまたま道路沿いに止まった1台の高級車から颯爽と降り立った九条さんに出会った。
九条 慶都(くじょう けいと)、31歳。
九条グループ、日本一の医薬品メーカーであり美容の分野でも幅広く成長を遂げている超有名企業の御曹司。