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『俺を救ってくれたのは』
li視点
雨は冷たく、しつこく降っていた。
らいとは公園の隅のベンチに座り、
濡れた制服の袖をぎゅっと握りしめていた。
寒い。
怖い。
帰る場所が、ない。
家では、音を立てないように生きてきた。
息をするのも、視線を動かすのも、
全部、間違えたら怒鳴られる気がして。
今日は、とうとう追い出された。
「……俺が悪いから……」
そう呟く癖だけが、残っていた。
そのとき。
「こんな雨の日に外で座ってたら、
ドラマでも心配されるやつだよ?」
やわらかくて、少し冗談みたいな声。
びくっとして顔を上げる。
傘を差した男が、少し屈んでこちらを見ていた。
「……大丈夫?」
怒ってない。
怖くない。
それだけで、俺の体は固まった。
「す、すみません……!」
反射で頭を下げる。
男は一瞬驚いた顔をして、
すぐに、ふっと笑った。
「謝らなくていいよ。
怒らせるようなこと何もしてない」
その笑顔は、
作ってない、ちゃんとした優しさだった。
「名前、聞いてもいい?」
「……らいと、です」
「そっか。らいと」
ロゼは、名前をゆっくり口にした。
(……可愛いな)
心の中で、はっきり思った。
小さくて、怯えてて、
それでもちゃんと立ってる。
「俺はロゼ」
傘を少し傾ける。
「雨、冷たいでしょ。手、赤い」
近づきすぎない距離で言われて、
らいとの胸がぎゅっとなった。
「……家、帰れない?」
問い詰めない声。
らいとは、黙って頷いた。
ロゼは少しだけ考えて、
にこっと笑った。
「じゃあさ」
「一回、あったかいとこ行こ」
「拒否権あってもいいけど、俺は放っとけない」
その言い方が、
“選ばせてくれてる”感じで。
らいとは、小さく頷いた。
ロゼの家は、静かで、やさしかった。
「タオルここね。熱いから気をつけて」
「ココア甘いけど、嫌いじゃないでしょ?」
何も押しつけない。
でも、ちゃんと気にかけてる。
俺は、ずっと落ち着かなかった。
「……俺、ここにいていいんですか」
ロゼはきょとんとしてから、
柔らかく笑った。
「いいよ」
即答。
「らいと、今すごく頑張ってる顔してる」
「そういう人を追い出す趣味、俺ない」
その言葉に、
俺の目が熱くなる。
ロゼは、それを見て分かっていた。
(……やっぱり可愛い)
でも、触れるのは慎重に。
ただ、頭にそっと手を置いた。
「大丈夫」
「ここでは、何も起きない」
ぽん、ぽん。
俺は、その手の温度に、
初めて“安心”を覚えた。
翌日から、同居が始まった。
ロゼは距離を守りつつ、
でも確実に優しかった。
朝は
「おはよう、眠れた?」
学校に行く前は
「無理そうなら言っていいからね」
帰宅すると
「おかえり。今日どうだった?」
それだけなのに、
俺の心は少しずつほどけていった。
ある日。
「……あの」
俺が遠慮がちに言う。
「俺、迷惑じゃ……」
ロゼはすぐ遮った。
「ならない」
真剣な声。
「らいとがいると、
家がちゃんと“生活してる”感じする」
照れたように笑って、
また頭を撫でる。
「可愛いし」
「……っ!?」
らいとの顔が一気に赤くなる。
ロゼは気づいてて、あえて言ってた。
(こういう反応するの、分かってて)
でも、それ以上は踏み込まない。
「はいはい、行ってらっしゃい」
からかうように言って、
玄関まで見送る。
その背中を見ながら、
俺は胸を押さえた。
――なんで、こんなにドキドキするんだ。
日々の中で、
俺は気づいていった。
ロゼは、
自分が怖がる音を覚えていてくれる。
無理をしてると、すぐ分かる。
近づきすぎないけど、離れすぎない。
そして。
自分を見る目が、
いつもやさしい。
(……好き)
それは、
助けてくれたからじゃない。
一緒に笑ってくれるから。
ちゃんと対等に話してくれるから。
でも、言えなかった。
高校生で、
守られてる立場で。
だからこそ、
ある夜、勇気を振り絞った。
「……ロゼ」
「俺……ロゼのこと、好きです」
震える声。
ロゼは驚いたあと、
静かに息を吐いた。
「……うん」
否定しない。
「言ってくれてありがとう」
「俺もね」
一拍置いて。
「らいとのこと、可愛いって思ってる」
はっきりと。
俺の心臓が跳ねる。
「でも」
「今は、付き合えない」
「らいとは高校生だ」
優しく、でも強い声。
「卒業するまで待つ」
「その間、我慢出来る?」
らいとは、涙をこぼしながら頷いた。
そして、卒業の日。
「……ありがとうございました」
「俺、ロゼに会ってから、
自分を嫌いじゃなくなれました」
「それでも」
「俺は、ロゼが好きです」
ロゼは、微笑んで一歩近づく。
「うん」
「じゃあ今度は」
らいとの両頬に、そっと手を添える。
「恋人として、ちゃんと好きになろう」
ゆっくり、距離が縮まる。
俺は目を閉じた。
唇が、やさしく触れ合う。
短くて、あたたかいキス。
ロゼは額を寄せて、囁いた。
「これからは、一緒」
「ずっとらいとのこと守るから」
「絶対に泣かせない」
俺は、泣きながら笑った。
雨の日に始まった二人は、
もう同じ未来を見ている。
――これは、救済じゃない。
恋だった。
長ぇ笑笑笑笑笑笑
リクエストお待ちしております🙇♂️🙇♂️
コメント
4件
え、好きなんですが"、!????💫⚡️くんが少しづつ心を許していく感じとか凄く伝わりました😿👉👈
うわやっばい、、 好きすぎます、、、、 あったかい感じがこっちまで伝わってきて鳥肌、、