テラーノベル
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廊下に出ると、廊下にまでぎんぎんに冷房が効いているのに気付いた。外のうだるような残暑が、別世界の事のように感じた。
その廊下がまたたっぷり十メートルはあり、正源は外で汗ばんだ襦袢が冷えて寒気さえ覚えた。
その「子供部屋」のドアを開けると、十二畳はあろうかという広い部屋だった。入って来た正源に奥方らしい黒っぽい和服の女性と、黒っぽい半ズボンと高級そうな上着を着た、小学校に上がったばかりの年頃の利発そうな男の子が頭を下げた。
部屋の奥には例によってケースに入れられたロボットが横たえられていた。比較的小型の物で、高さは一メートル三十センチぐらい。
全身の表面に縫いぐるみの様に柔らかいフェルトの布が貼ってあり、形は童話か子供向けのアニメに出て来る、小熊のような動物キャラクターという趣だった。
「ご供養するのは、このロボットですか?」
念のため正源が訊くと、奥方が答えた。
「はい、左様です。この子の」
そう言って傍らの息子の頭に手を置く。
「面倒を見てきてくれたのです。私も主人も事業で忙しく、なかなかこの子の面倒にまで手が回りませんでして。使用人も二十四時間、この子につきっきりというわけにもいきませんでしたので」
「なるほど。ではお坊ちゃんも名残り惜しいことでしょうね」
正玄は鞄を開けて用意を始めようとしたところで、そこが絨毯張りの洋間である事に気づいた。
座布団はあるのか、と思って視線を左右にさまよわせていると、主人であるあの男が革製の筒型のスツールを抱えて来て、ロボットの正面に置いた。
「うちには和室がありませんでして。これにおかけになって下さい」
それからガラス製の小さなコーヒーテーブルが左右に一脚すつ置かれた。正源は向かって右のテーブルに鉦を置き、左のテーブルに携帯型の線香入れを置いた。
抹香を線香入れに散らし、伝統にこだわる正源はライターではなく持参したマッチで線香に火を点け、数珠を右手から垂らし、その家族に告げた。
「お経が始まりましたら、ご焼香をお願いいたしします。作法などはあまりお気になさらず、適当にでかまいませんので」
コメント
1件
うわあああ第18話も最高だったよ〜!!😭💕 小熊のぬいぐるみロボットのご供養…「この子の」って奥方が言いかけて息子くんの頭に手を置くところ、もうグッときたよね…🥺✨ おもちゃじゃなくて“家族”だったんだなって伝わってくる。正源さんのマッチにこだわる職人感も渋くて好き! 菊池川さん、毎回静かなエモさで泣かせに来るのズルいです🥹💖 次話も楽しみにしてます!!