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日付が変わった。
帝都医療センターのICUは、まるで人工都市のように明るかった。
モニターの心拍音、人工呼吸器の駆動音、透析機の唸り声。
命を繋ぐ全ての機械が、静かに、しかし重く鳴り響いていた。
京本大我は、手に持つ患者リストをじっと見つめていた。
「重症集中治療患者 18名」──
ひとつのICUが収容できる数を遥かに超えていた。
仮設ICUまで使い、今この病院はギリギリの綱渡りをしている。
「京本、大丈夫?」
北斗が静かに隣に立つ。
「……わからなくなる時がある、、
誰を優先して、誰を後回しにするのか──」
そう呟く京本の声は僅かに震えていた。
治療の優先順位──トリアージ。
医療者にとって最も残酷な決断。
北斗はゆっくり言った。
「全部救う。それが俺たちの覚悟だろ」
京本はわずかに頷いた。
午前0時30分──
オペ室では、ジェシーが最後の緊急オペに入っていた。
「小腸穿孔、腹膜炎進行中。敗血症性ショックだ!」
「浄化療法準備!」
「膿瘍部切除、洗浄中!」
樹はすでに何度も昇圧剤の量を調整していた。
「血圧60台。もう昇圧剤は限界量超えてる!」
「ギリギリまで持ってくれ。腹膜内感染は抑え込める!」
ジェシーは口では強気に言いながらも、内心では限界を感じていた。
(俺の手の感覚、もう麻痺しかけてる……でも──)
それでも彼は、目の前の命を見捨てはしなかった。
午前1時──
検査室では慎太郎がCTを回し続けていた。
「また新たな血腫形成。脳出血の恐れあり!」
すぐに北斗へ報告が飛ぶ。
「京本、緊急脳圧コントロールが必要!」
「マンニトール投与、脳浮腫予防開始!」
京本が即座に判断する。
「肝機能も悪化してる!出血傾向出てくるぞ!」
樹が叫ぶ。
「血液製剤追加!凝固因子投与!」
慎太郎が透析装置の回転数を調整しながら指示を重ねる。
午前1時30分──
休憩室の片隅に、わずかに余ったベンチがあった。
髙地がそこに腰掛け、額を膝に埋めた。
「……あんなに助けたのに、まだ減らない」
彼の声は、誰にも聞かれないように小さく漏れた。
それでも、髙地は次の出動要請に備えて、静かに立ち上がった。
午前2時──
救命チーム全員が、奇跡的な集中力で極限の治療を続けていた。
だが──その時、再び館内放送が響く。
「コードブルー──心停止発生。ICU第3病室。」
再び、心臓が止まろうとしていた。
京本は深く息を吸い、人工呼吸器のスイッチを確認しながら走り出した。
北斗、樹、慎太郎、ジェシー、髙地──
誰一人欠けることなく、全員がまた集結する。
これは終わらない戦いだった。
それでも、彼らSixTONESは決して倒れなかった。