バ先でほんの少し仲のいいだけのヤツに合コンだと言われ来てみればホストじゃねェかと目を疑う。
ここには漫画の中から出てきたのではないかと疑う程のイケメンがいるらしい。それを見たいが一人では来れないから、俺を合コンだと偽って連れてきたと言うことなのだとか。「まあまあ見てみろよ、きっと虜になるから。」と肩を叩かれそいつが来るのを待っていたら……。
___「いらっしゃい。来てくれてありがとな。」
そう声を掛けられ、顔を上げてみればマジで漫画の中から出てきたのではないかと疑うほどのイケメンが目の前にいた。これは普通の女は虜になるだろう。いや、男でも虜になる。
金髪の綺麗な髪の毛、海のように綺麗な青色の目、右側に火傷があるのを隠そうとしている髪の毛、声もいい。そいつに見惚れていたら「じゃ!俺帰るから!」
……バ先の奴が帰ってしまった。おいおい待て待て、コイツと2人っきり?ふざけんなよ。男に興味なんざねェぞ俺は。と大焦りしていると
『まァそう焦るなよ、折角なんだ、色々話をしよう。な?まずは名前からだな、俺はサボ。お前は?』
名前を聞かれてしまえば答えるしかない、素直に答えるか、それともダッシュで金を払って逃げるか、どうするかで悩んみに悩んだ結果は答える、だった。
「……エース。くっちゃべろうと思って俺ァここに来たわけじゃねェ。すぐに帰る。話したって意味ねェだろ。」
『エース、いい名前だな。ってそんな寂しいこと言わないでくれよ。これも何かの縁だろう?少しは話そう。』しゅん、という効果音が聞こえてくる。それ合わせ犬耳と尻尾が浮かんで見えてるような気がする。いやぜってェ見えてる。わかったわかったと話していくうちにコイツはクズだと言うことがわかる。何人もの女、男を堕とし飽きたら捨ててるのだろう。『今は姫とも縁を切ってんだがな。』いや嘘つけよ。……なんでこんな奴がモテんのだろうか。いや仕事だからか?普通ならこんなクズじゃねェのか?色々考えいるうちに俺はサボに呼ばれていることにさえ気付かず大声で「エース!!!!!」と呼ばれるまで気付かなかった。びっくりして声を出してしまう。と黒服だっけな。がサボを呼びに来た。次の卓へ行かなければ行けないらしい。流石ナンバーワン。
「じゃあ俺は帰る。またいつか来てやるよ。」
そうサボに伝えるとコイツは寂しそうな顔を見せた。いつかではなく明日には来てくれと。おーおー、罪なヤツなこって。
『なァエース、お前が来てくれなかった時ように連絡先、交換させてくれよ。』
「は?」
『ん?』
いやいやいや、おかしいだろ。何処からどう考えても連絡先交換は。俺がホスト初めてだからか?これが普通なのか?誰か教えてくれ。いやまァ……とりあえず俺から連絡しなきゃいいか。ということで連絡先を繋いだ。その時のサボはとても嬉しそうだった。何故かその顔にキュンと来てしまった俺がいた。___
_あれから俺はサボの元に行ってはいない。きっとこのまま行ったってまた複雑な感情が出てきて意味わかんなくなるだけだからだ。だから俺は行くことをやめた。のだが何度もこいつから連絡がくる。「今日は店に来れそうか?」「忙しいのか?」などと入っていたが俺は既読だけを付けてずっと無視を続けている。
無視をして約一週間がたっただろうか。その日はバイトで疲れていて、ゆっくり歩きながら帰っていた。急に腕を捕まれ引っ張り込まれ何事かと思えば『なァ、なんでメッセージ無視するんだよ。』
アイツが目の前にいた。バクッ、バクッ、と心音が身体中に響き渡る。まさにこれは壁ドンと言えるだろう、そしてこいつにジッと見つめられている。
「ちが、」
『何が違うんだ?俺に分かるように言ってみてくれよ。』
とてつもなく怖い。怒っているからだろうか、雰囲気が違う。仕事が忙しかったと言い訳を言うべきか、それとも正直な気持ちを言うべきか、俺には分からない。が嘘つけば後悔をすることが分かる。
「……お前の顔みんのがしんどくて行ってねェだけだ。これで満足だろ。」
『どうゆう意味だ。』
「さァな。よく考えてみろよ。」
サボは眉間に皺を寄せ、何もわかっていない様子だった。だから全て素直に言うことにした。これで嫌われてもいい、なんなら好都合だ。
「前初めて会った時言ってたろ?前の姫はダルい奴でだるくなったから捨てただのなんだの。いつか俺もそうなんなら沼る前に抜け出したかったんだよ。」
『…………じゃあ俺がもしそんな事言わなかったら来てくれてたか?それとも傷つけた?なら謝るから。』
謝る?何故?付き合ってもねェやつに何故そこまで必死になるのだろうか。
「どちみち行かなかったと思うぜ。俺はなァサボ。謝って欲しいわけじゃねェんだ。ただよ、もう俺にメッセージも会いにも来ないでくれ。」
『なんで。俺の事嫌いなのか?』
嫌い?なわけない。好きだからだ。……どうすることが “ 正解 ” なのだろうか。
嗚呼、どうしよう。心の奥が締め付けられる。なんでこんなヤツに恋しちまったんだろうなァ……。やめちまいたい。
「……いーや?好きだったぜ、お前のこと。でもな、お前に恋したって俺が辛くなんだよ。だからもう終わりにしようぜ。」
アイツの顔を見たらきっと俺は引き返したくなるだろう。だから引き返さず、見向きもせず俺はその場から立ち去った。
〈サボ目線〉
「好きだった。」その言葉に胸が締め付けられた。好きだった?好きじゃなく?確かに俺も最初は金としか見てなかったさ。けど今は本気でお前のことを好いてるのに。なんて事は言えなかった。
最初俺のダチ、エースからすればバ先のヤツだろう。そいつが連れてきたのがエースだった。俺は今まで色々な女共に「結婚して!」「サボくんしか要らない」「付き合いたいなあ」などと言われてきた、上手く受け流し笑顔で対応してきた。そんな俺がちゃんと恋をしたのだ。このエースという男に。好きだから何度も連絡をしていたがその連絡は毎回無視で終わっていた。
エースはきっと俺がホストで色々な女と絡むから付き合うことを嫌がっているのだろう。絶対幸せにすんのになァ……。本当は「行かないでくれ」そう言いたかった。けど言えばコイツに嫌われるのではないかと思って言えなかった。だから、最後だけはこれを言いたい。好きだと、お前の為ならばホストだって辞めれると。
『……エース。』
「…………」
『お願いだ。お前はきっともう俺とは話したくねェのかもしれないが俺はお前に伝えたいことが山ほどある。だからこれが最後になるなら伝えさせてくれ。』
勇気を出し、エースの手首を掴んだ。エースはとても辛そうな顔をしていた。今にも泣きそうで、苦しそうで、けれど何処か嬉しそうで、そんな表情を見てしまうと逃がしたく無くなる。
『俺も、エースが好きだ。心の底から好きで愛してる。一度しか会ったことないのに何言ってんだって思うよな。けど俺は本気だ。お前の笑顔も、大人しく話を聞いてくれるところも、今のそういうの表情も、全部全部好きなんだ。』
「……はァ、??」
エースは顔を顰めている。何言ってんだコイツはって顔だ。そりゃそうなるよな、ホストの俺がお前に恋をしたんだ。仕方がないだろう、こんな可愛くて笑顔が素敵なヤツに恋しないヤツなんていないはずだ。
『…………エース、好きだ。付き合えるなんて思ってはいないが俺はお前の為ならホストだって引退できる。それほど好きなんだ、お前のことが。』 ___
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