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「あ、雨……」
誰かの呟きに続くように、鉛色の空から糸のような雨が静かに落ち始めた。最初は頬に一、二滴。だが、すぐに細かな粒が一面に広がり、遊具の金属がチリチリと乾いた音を立て始める。
主婦たちは子供を抱え、ベビーカーを押し、蜘蛛の子を散らすように東屋や駐車場の方へ走り出した。さっきまでの平和な歓声は、濡れた地面を蹴る足音とざわめきに飲み込まれていく。 蓮も立ち上がり、思わず空を仰いだ。吐き出した白い息がふっと散り、まつ毛に溜まった雫が視界を滲ませる。
(ナギと海斗くんは――どこだ)
滑り台のステンレスが鈍く光り、濡れたゴムチップが靴底をキュッと掴む。蓮は人の流れを縫い、アスレチックの方へ鋭く視線を走らせた。そのとき、雨の帳を裂くように、聞き慣れた声が響く。
「お兄さん、何やってるの? 早く、こっち! 濡れちゃうよ」
顔を上げると、ナギが海斗くんを抱え、屋根付きの遊具の下で懸命に手を振っていた。
「ごめん、今行く!」
蓮はフードもないまま肩をすくめ、滑らぬように手すりを掴んで小走りになった。頬を打つ雨はもう糸ではなく、細い針のような鋭さを持っている。
ようやく辿り着いて庇の内側へ身を滑り込ませると、耳元で雨音が一段遠くなった。濡れた蓮の肩を見て、ナギが気遣わしげに目を細める。
「これ、止みそうにないね……。家、すぐそこだから戻ろう。海斗が冷えちゃう」
「わかった。荷物、持つよ」
ナギは海斗くんをママチャリの後ろに乗せ、蓮は荷物を抱えて横に並んだ。三人と一台、雨脚を避けるようにして公園を後にする。
なんという怒濤の一日だろうか。あっという間に濃くなった雨は周囲を白く包み込み、蓮は気づけば、すぐ近くにあるというナギの実家へと招き入れられていた。
風邪を引いてはいけないからと、まずは海斗くんをナギが風呂に入れ、蓮は風呂上がりで裸のまま走り回る少年を捕まえて、タオルで拭き、服を着せ、髪を乾かしてやった。自分の周囲には幼い子供などいない。何をどう対応していいのか分からず、右往左往してしまった自分が情けない。
それから、半ば強引に風呂場へと押し込まれ、気がつけば小鳥遊家の風呂に浸かっていた。本当に良かったのだろうか。どさくさに紛れて、図々しく上がり込んでしまった気がしてならない。まさか、彼の実家の風呂に入る日が来ようとは。
湯船に浸かりながら、天井を見上げる。湯気でぼんやりと曇った視界の中で、蓮は一人、深いため息を吐いた。 今日一日、色んなことがありすぎた。クリスマスの日くらいはナギと一緒に過ごしたいとは願っていたが、まさかこんな「家族」のような展開になるなんて。湯気を吸い込みながら、胸のざわつきが少しずつ静まっていくのを感じる。
「――はぁ……上がろう」
これ以上考え事をしていたら、頭がのぼせてしまいそうだ。 風呂から上がり、ナギが用意してくれた服に袖を通すと、シャツからふわりと彼が愛用している柔軟剤の香りが立ちのぼり、ドクンと心臓が跳ねた。
サイズはぴったりで、着心地も申し分ない。襟元を鼻先に寄せ、すん、と香りを吸い込む。爽やかな甘さが鼻腔をくすぐり、まるでナギに包まれているような錯覚に、むず痒い気分になる。
「ごめん、服まで借りちゃって。お風呂、ありがと……って――」
リビングの扉を開けると、そこには海斗くんを抱いたまま、こたつでうつらうつらしているナギの姿があった。
「まったく……そんなところで寝てると風邪引くぞ?」
「ん……」
蓮の声に、ナギがぱちりと目を開ける。眠気に潤んだ瞳、とろんとした表情。それがいつも以上に無防備で、蓮の胸が再び跳ねた。腕の中では幼い弟がすやすやと眠っていて、その寝顔に思わず頬が緩む。
「ふぁあ……ごめん。いつの間にか寝ちゃってた」
「いいよ。海斗くんの部屋、どこ? ベッドに寝かせてくる」
そっと抱き上げても、よほど眠りが深いのか起きる気配はない。
(幼い頃のナギも、こんなふうだったのかな……)
そんな想像をしながら、教えられた子供部屋へ運び、そっとベッドに横たえる。こうして見ると、本当にナギに似ている。子供は得意じゃないし接し方も分からないが、この寝顔はたまらなく可愛いと思った。
しばらく見守ってから部屋を出て、リビングへ戻る。こたつに入ったナギが、隣に来るようにと手招きしてきた。
「なに?」
不思議に思って腰を下ろした瞬間、伸びてきたナギの腕が蓮の背中に回された。
「え、ちょ、なに? な、ナギ……っ」
驚いて身をよじると、ナギは猫みたいにするりと体を密着させてくる。
「……俺にも、かまってよ」
「っ」
甘えるような熱を帯びた声に、蓮は思わず目を見開いた。
「……僕の理性を試しているのかい?」
「なにそれ」
くすくす笑いながら、ナギはさらに寄り添ってくる。
「今夜……両親、戻ってこないんだ。だから……泊まっていってよ」
耳元に吐息をかけるように囁かれ、頬にちゅっと柔らかな感触。至近距離で視線が絡み合う。
「……だめ?」
熱っぽい上目遣い。そこに断るという選択肢など――理性の欠片とともに、どこかへ吹き飛んでいった。
「~~~っ、あまり煽らないでくれ。僕、我慢できなくなるから」
こたつの中で足先が触れ合い、寄りかかってきたナギと視線が溶け合う。引き寄せられるように唇を重ねると、互いの熱がゆっくりと移っていく。
「……我慢なんて――っ」
角度を変えて何度も口づけるたび、擦れ合う吐息が甘く、濃くなっていく。震える声で名を呼ばれ、蓮の背筋にゾクリとした戦慄が走った。
「ほんっと、誘うのが上手いよね……」
さらりとしたナギの髪を耳の後ろへ払う。触れた指先から、高い体温が伝わってくる。ナギの肩が小さく跳ね、くすぐったそうに身をよじる仕草が愛おしくて、自然と頬が緩んだ。
「……可愛い」
囁くと、ナギは恥ずかしそうに視線を泳がせる。こたつの陰で指がそっと彷徨い、布越しに互いの輪郭をなぞるだけで、呼吸は容易く乱れていく。
「こんな場所じゃ……せめて、ベッドで……」
「無理。このまま、君が欲しい」
腰を抱き寄せると、ナギの瞳が大きく瞬き、白い頬にゆっくりと赤みが差した。短い沈黙が熱を孕んで膨らみ、もう引き返せないところまで来てしまったのだと悟る。
腰を強引に引き寄せ、すっかり昂った自分の下肢を押し付ける。一瞬、ナギの瞳が驚愕に大きく見開かれ、それから恥じらうように頬を林檎のような赤に染め上げた。
「……っ」
一瞬の沈黙が、耳に痛いほど響く。だが、ここまで来て引き下がれるほど、出来た人間じゃない。
「ナギがそんなに可愛いことを言うから、僕の理性も限界だよ」
そのまま床に押し倒し、覆い被さってしまえば、もう彼に逃げ場は無い。
「ナギだって、このままじゃ辛いだろう?」
重なる影の中でベルトのバックルを外し、ズボンと下着をまとめて引き下ろす。熱を帯びた実躯を直接掌で握り込んでやれば、ナギの口からは、高く、甘い悲鳴が鮮やかに弾けた。
「 や……ぁっ……!」
蓮の手の中で、ナギのそこはすっかり形を変えていた。先走りにとろとろに濡れ、上下に扱き上げられるたびに、悦びに打ち震えるようにドクドクと脈打っている。
「気持ちいいか? もう、こんなにトロトロだ」
「っ……や、だめっ。言わないで……っ」
羞恥心を煽るような蓮の低音に、ナギは涙目になりながら、はねのける気力もなく首を横に振った。
「恥ずかしがっている顔も、たまらなく可愛いよ」
ちゅっちゅと湿ったリップ音を響かせ、蓮はナギの肢体のあちこちに執拗な口付けを落としていく。そのたびにナギが感じ入ったような声を上げるため、蓮の興奮は加速度的に増すばかりだった。
「あっ、んんッ!」
「わかるか? 俺の指を咥え込んで離さない……。すげぇやらしいな、ナギ」
たっぷりと唾液を含ませた指が、グチュグチュと官能的な音を立てて内壁を擦り上げる。ナギは瞳に涙を湛え、カーペットを掴む指を白くさせて激しく頭を左右に振り乱した。 その無防備な仕草が、どれほど男の嗜虐心を煽っているか。彼はきっと、露ほども分かっていないのだろう。
(あぁ……もう、本当に……なんて可愛いんだ)
「も、やだっ……指っ、やだっ、ぁっ!」
「嘘ばっかりだ。こんなに美味そうに俺の指を食べているのに」
嫌々と頭を振るナギの耳元に、蓮は意地悪く囁きかけた。潤んだ瞳で睨みつけてくる視線すら、今の蓮には逆効果でしかない。
「煽っているのか?」
「んんっ、違っ、……お兄さんの指、気持ち良すぎて……おかしくなるっ」
「指だけで満足なのか? 本当に?」
問いかけながら、蓮は内側の最も敏感な一箇所を、指の腹でグリッと強く押し潰した。
「あぁっ! そこっ、待っ……ふ、アァッ!」
ビクンと腰を大きく跳ねさせ、ナギの背が美しい弓なりに反った。 それでも蓮は指の動きを止めず、何度も、何度も、執拗にそこを攻め立てる。堪らないといった様子で身悶えするナギの痴態に、蓮の熱も限界を超え、ズボンの中で苦しそうにその存在を主張し続けていた。
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