テラーノベル
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「ルールにはトラップを設置するなとは言われてなどいない。だから、このフィールドは俺の庭だ」
鬱蒼と茂る巨木の上、木漏れ日を遮る影の中でクロードは低く呟いた。
樹海のあちこちから、先ほど打ち上がった爆音と悲鳴の余波が届いている。大雑把に魔力を練り上げ、派手な大技で敵をねじ伏せることしか頭にない純血魔族たちにとって、足元に潜む「透明な脅威」など視界にすら入らない。
昨夜、クロードが仕掛けたのは単なる爆薬ではない。
木々の間に張られた特殊鋼ワイヤーには、すべて『局所遅延』の微小な時間魔法が施されている。獲物が触れた瞬間にコンマ数秒のタイムラグを挟んでワイヤーが跳ね上がり、足首を拘束した直後に指向性地雷が起動する——まさに悪魔的な殺傷システムだ。
「……あ、足が……っ! なんだこの細い糸は!? 切れない……っ!」
「ひ、ひぃっ! 地面が爆ぜ――」
足元で繰り広げられる惨状を、クロードは感情の籠もっていない瞳で見下ろしていた。
ポケットから取り出したのは、自作の戦術端末と『刻印』の回収袋。
「まずは三人……いや、四人か。効率が良いな」
音もなく樹上から舞い降りたクロードは、ワイヤーに絡まり、爆風の衝撃で意識を失っている大柄な魔族たちへ近づいた。
無駄な殺生はしない。ただ冷徹に、彼らの胸元から目標である『刻印』だけを淡々と剥ぎ取っていく。
「く……そ……っ、ハーフの……出来損ないが……小細工、を……」
かろうじて意識の残っていた候補生の一人が、苦し紛れに掌から小さな炎を放とうとした。
だが、その詠唱が完了するより早く——
**パンッ!**
クロードの放った消音拳銃(サイレンサー付き)のゴム弾が、男の額を的確に撃ち抜く。男は白目を剥いて完全に沈黙した。
「詠唱の隙だらけだ。実戦なら三回死んでいる」
刻印をポケットに放り込み、次の獲物へ向かおうとしたその時。
背後から、大気を激しく凍てつかせる鋭い冷気の波が押し寄せてきた。
凄まじい速度で周囲の樹木が白銀に染まり、クロードが仕掛けていた未起動のワイヤー数本が、脆い氷の結晶となって砕け散る。
「——見つけたわよ、クロード」
氷の絨毯を踏みしめながら現れたのは、セリス・フォン・ヴァルハイトだった。
その手には透き通るような氷の長剣が握られ、絶対的な怒りと、それを上回る激しい警戒心を瞳に宿している。
「やっぱり……この樹海全体に狂気じみた罠を張り巡らせていたのはアンタね。これがアンタの言う『準備』というわけ?」
「感心が薄いな、セリス」
クロードは振り返ることもせず、新しい弾倉を拳銃に装填しながら淡々と答えた。
「正面突破しか頭にないお前たちに、戦場の全域をコントロールする楽しさを教えてやっているんだ。誇り高き純血様には、泥泥した知略の味が少し苦すぎるか?」
「~っ! 屁理屈を……っ!」
セリスが氷剣を構え、足元の冷気を爆発させる。
「アンタの小細工はもう割れているわ! 罠の位置さえ分かれば、私の『氷結魔法』で領域ごと凍らせて粉砕するまで! 卑怯な暗殺術が、本物の『魔力』に勝てないことをここで教えてあげるわ!」
セリスの背後に、無数の巨大な氷のツララが展開される。一網打尽に樹海ごとクロードを穿とうとする、圧倒的な高火力。
だが、クロードは慌てる素振りすら見せず、冷ややかな手袋越しに——胸元から『起爆スイッチ』を取り出した。
「いい度胸だ。だがセリス……お前が今踏んでいるその氷の真下、何が埋まっていると思う?」
「……え?」
セリスの美貌が、一瞬で凍りついた。
コメント
1件
おお、第5話、読了しました! いやあ、クロードの「戦場の全域をコントロールする」という言葉がまさに体現された回でしたね。ワイヤーに時間魔法を仕込む発想、渋い。設定の作り込みが細かいところにまで行き届いていて、ゾクゾクします。セリスの「本物の魔力」vsクロードの「知略」という構図も熱いです。最後の起爆スイッチ、あれはブラフなのか本気なのか……続きが気になりすぎます!
n a ♡︎︎ *
124
蒼月
766
グリルタ
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