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水の底でも、名前は呼ばれる。

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水の底でも、名前は呼ばれる。

1 - 正しさが、沈黙を選んだ世界

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2026年01月04日

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𝐩𝐫𝐨𝐥𝐨𝐠𝐮𝐞

この世界には、

正しさと沈黙しか残っていなかった。


間違えることは、許されない。

弱さを見せることは、騒音と呼ばれた。

だから人々は、声を殺し、感情を伏せた。


それでも溢れたものは、

すべて――水へ落とされた。


水は、抗わない。

裁かない。

ただ、静かに沈める。


「ここにいれば、苦しまない」


そう囁くその深さは、

あまりにも優しく、残酷だった。



白い世界は、正解だけでできている。

誰かを救う言葉も、

手を伸ばす勇気も、

すべて「余計なもの」として削がれた。


正しく生きた者だけが、

地上に立つことを許される。


壊れた者は、

最初から存在しなかったことにされる。



それでも、

水の底には声が残る。


消えきれなかった名前。

呼ばれなかった想い。

助けを求めるには、

遅すぎた願い。


沈んだものは、戻らない。

それが、この世界の常識だった。


―あの日までは。



僕が、

自ら水へ行こうとするまでは。


そして、

一人の相方が、

引き上げることを選ばず、

名前を呼び続けることを選ぶまでは。



水は、まだ冷たい。

世界は、まだ白い。


それでも、

水の底で消えなかった声がある。


この物語は、

救えなかった話だ。


けれど――

忘れなかった話でもある。


水の底でも、名前は呼ばれる。

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