注意。ちょっとグロです。
「…………ん、」
………寝てたのか。
床、冷たい。冬だしな。なのにコンクリうちっぱなしの謎の部屋に転がしとくのって、やっぱ常識的に考えてめっちゃ不親切だよなぁ。しかも相も変わらず薄暗い。窓くらい付けてくれたって良いだろうに、お陰ですっかり時間間隔が狂ってしまった。
いや、彼奴等に親切さを求めるだけ無駄か。
じわじわ目が覚めてきた。
あぁ。そうそうそうだった。「そこ」で終わってたんだった。起きてしまったし、今日はその続きからなんだろう。
………………怖くなんてない。
怖い怖いと言うから怖いのであって、怖くないと言えば怖くなくなるのである。そうきっと。
だから怖くない。全然怖くないぞ。
左足がひしゃげたところで、何が怖いものか。
まだ蝿は湧いていないんだからマシだろう。
時間が経ったせいか、眠る前より晒された赤が少し暗くなった気がする。微かに動かせば濡れた上着の裾の様に重い。ぶちまけられ、本来より膨れ上がった肉に触れるザラザラとしたコンクリートの感覚に、良かった、まだ神経は生きているらしいとホッと息をついた。
そうだ。まだ僕は『皆』とは違うんだ。まだ心臓は動いているし、考えることだって出来る。痛いと思えるんだ。……だいぶ、鈍ってきたけど。
いや、鈍ったのは違う。痛みに慣れただけだ。こんなんになっても手当ては出来ないし、ずっと痛いだけだから麻痺しているだけだ。だからまだ、まだ僕は………。
僕は…………大丈夫?
本当に?だって肉見えてるよ?
繊維までぐちゃぐちゃなんだよ?
そもそも動脈を引き千切っておいて、止血もしてないのになんで血が止まるんだ?
僕の体はまだ本当に人間なのか?
「……被検体68。投与の時間だ」
死ねたらいい。
『皆』みたいにこの部屋で、肉を削がれて吊るされて、床に肉塊になって張り付いて。次の僕達を迎え入れられるならまだ幸せだ。
でももし……もしこの実験が、上手くいってしまったら。
勝手に開け放たれたドアのお陰で少し部屋が明るくなって。丁度視線の先にあった『それ』が目に入った。
『たすけて』
酸化しどす黒くなったその色に、僕は目を伏せる他無かった。
僕はまだ、『皆』とは違う。
早く同じになりたい。
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