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R-18『バニーになったのでぴょんぴょんあなたに捕まっちゃいました』~m×s~
side佐久間
「はいカット!OKです!お疲れ様でしたー!」
ディレクターのよく通る声がスタジオに響き渡り張り詰めていた空気が一気に弛緩する。煌々と俺を照らし出していた強い照明が少しだけ落とされ周囲のスタッフたちが一斉に撤収作業へと動き始めた。
俺は「お疲れ様でした!」「ありがとうございました!」といつも通りの明るい声を張り上げながら四方八方に向かって深く頭を下げる。
「いやー最高だったよ!まさかそこまで体張ってくれるとはね!」
「あのポーズめっちゃウケてましたよ!」
すれ違うスタッフや共演者たちが口々に俺を茶化してくる。
その視線は当然ながら俺の『顔』ではなく俺が今身に纏っているふざけた衣装へと向けられていた。
俺は「そうでしょ?頑張ったんだからちゃんとオンエアで使ってねー!」とおどけた調子で笑い飛ばす。
今の俺の格好は控えめに言っても異常だった。
頭には黒いスパンコールが散りばめられた長いうさぎの耳。
首元には窮屈な白い付け襟と真っ赤な蝶ネクタイ。
そして身体を包んでいるのはボディラインをこれでもかと強調する光沢のある黒いサテン生地のバニースーツだ。
女性用として作られたであろうその衣装は男の俺の身体には明らかにサイズが合っておらず特に胴回りのコルセット部分は息をするのも苦しいほどにきつく締め上げられている。胸元は大きく開き本来なら豊かな膨らみがあるべき場所は平坦だがその分鎖骨から胸板にかけての肌が容赦なく晒されていた。
さらに最悪なのは下半身だ。
腰骨のずっと上まで深く切れ込んだハイレグ仕様のせいで腰のラインから太ももの付け根までが完全に剥き出しになっている。
そこを覆うのは肌が透けて見える粗い網目の黒い網タイツだけ。
お尻のあたりには不釣り合いなほどに白くて丸いふわふわの尻尾が縫い付けられていて俺が動くたびに滑稽に揺れる。
足元は普段絶対に履くことのないピンヒールの黒いパンプス。
慣れない高さのせいでただ立っているだけでもふくらはぎの筋肉が悲鳴を上げている。
(……あー恥ずかしかった……)
笑顔の仮面の裏側で俺は内心盛大なため息を吐いていた。
バラエティ番組の罰ゲーム企画。
それが俺がこんな格好をさせられている理由だ。
台本を見た時は一瞬目の前が真っ暗になったが仕事は仕事だ。
カメラが回っている間は羞恥心なんてものは完全に捨て去らなければならない。
プロとして求められた役割を120パーセントの力で全うする。
それが俺の矜持だった。
だからスタジオでは誰よりも大きな声で笑いわざとお尻を突き出して尻尾を揺らしてみせたり網タイツの脚を強調するようなポーズをとったりして笑いを取りにいった。
周りからの容赦ないイジりも全部おいしいと思って受け止めた。
でもカメラが止まった今急速に冷静さを取り戻していく自分を感じる。
スタジオの冷房が露出した肌を撫でていく。
網タイツ越しの脚がスースーと冷えて鳥肌が立っているのがわかった。
コルセットの締め付けで肋骨が痛いしヒールのせいで足の指先は感覚が麻痺し始めている。
「お疲れ様です。着替え楽屋に用意してありますので」
「あ、うん。ありがとう。すぐ着替えてくる」
衣装さんの言葉に頷き俺は逃げるようにスタジオを後にした。
廊下に出るとスタジオの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
カツンカツンと俺の履くピンヒールが硬い床を叩く音だけがやけに大きく響き渡る。
すれ違う局のスタッフたちがギョッとしたように俺を振り返るのがわかった。
無理もない。テレビ局とはいえ廊下をフル装備のバニーボーイが歩いていれば誰だって二度見するだろう。俺は顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり俯き加減で足早に自分の楽屋へと向かった。
(早く……早くこれ脱ぎたい……)
頭の中はそればかりだった。
この締め付けから解放されていつものダボッとしたスウェットに着替えたい。
メイクを落としてただの『俺』に戻りたい。
仕事だと割り切っていたはずなのに一人になった途端自分がどれだけ痴態を晒していたのかを実感してしまい耳の先まで熱くなる。
ハイレグの食い込みが気になって歩き方までぎこちなくなってしまう。網タイツのザラザラとした感触が肌に擦れるたびに妙に生々しい。
ようやく自分の名前が書かれた楽屋のドアの前に辿り着いた。
周囲に誰もいないことを確認して俺はホッと息を吐き出す。ドアノブに手をかけガチャリと扉を開けた。
「あー疲れた……っ」
独り言を呟きながら楽屋に足を踏み入れた瞬間俺は全身を硬直させた。
誰もいないはずの楽屋。しかしそこには先客がいた。
部屋の奥パイプ椅子ではなく少しだけ上等な革張りのソファ。
そこに深く腰掛け長い脚を組んでスマートフォンをいじっていた人物がドアの開く音に反応してゆっくりと顔を上げた。
「……え?」
俺の口から間の抜けた声が漏れる。
そこにいたのは蓮だった。
「……お疲れ」
蓮は俺の姿を見るなりスマホを操作していた手をピタリと止めた。
いつも通りの低くて落ち着いた声。けれどその漆黒の瞳は俺の全身を舐め回すように上から下へとゆっくりと動いていた。
頭のうさぎの耳。
首元の蝶ネクタイ。
胸元が大きく開いた黒いサテンのボディスーツ。
コルセットで不自然に細くくびれさせられた腰。
ハイレグの切れ込みから覗く白い太もも。
そして黒い網タイツに包まれた脚とピンヒール。
蓮の視線が動くたびに見られている部分がカッと熱を帯びていくような錯覚に陥る。
スタジオで何十人ものスタッフや共演者に見られていた時よりも今蓮たった一人に見られているこの状況の方が何百倍も恥ずかしかった。
「な、なんで……蓮がここにいるの?」
動揺を隠しきれないまま俺はドアノブを握りしめたまま立ち尽くしていた。
俺と蓮は付き合っているわけではない。
ただの仲の良い関係だ。
―――夜を含んだ上で。
でもそれ以上の明確な言葉を交わしたことはない。
友達以上恋人未満。そんな曖昧な境界線の上で心地よい距離感を保ってきたはずだった。
「近くで別の仕事があって。終わったから一緒に帰ろうと思って寄った」
蓮はソファからゆっくりと立ち上がった。
長身の彼が立ち上がると楽屋の空間が一気に狭く感じられる。
蓮は俺から視線を外さないまま静かな足取りでこちらへと近づいてきた。
「そ、そうなんだ。ごめん連絡見てなかった。今すぐ着替えるからちょっと待ってて……」
俺は慌てて視線を逸らし部屋の隅に用意されているパーテーションの裏へ逃げ込もうとした。
しかしピンヒールを履き慣れていない足がもつれバランスを崩してしまう。
「あっ……」
倒れると思った瞬間。
強い力で腕をぐいっと引き寄せられた。
「危ない」
気がつけば俺は蓮の腕の中にすっぽりと収まっていた。
蓮の大きな手が俺の腰をしっかりと抱きとめている。
サテン生地の薄いバニースーツ越しに蓮の手のひらの熱が直接肌に伝わってくるようだった。
「あ、ありがとう……」
至近距離で見上げる蓮の顔は恐ろしいほど整っていてそして何を考えているのか全く読めないほどに静かだった。
いつもならここで「お前何その格好」と笑ってくれるはずだ。
俺もそれを期待していた。「仕事なんだから笑わないでよ!」とツッコミを入れていつものようにふざけ合ってこの異常な状況を笑い話に変えたかった。
でも蓮は笑わなかった。
ただじっと俺を見下ろしている。その瞳の奥に普段は見せないようなどろりとした暗い熱が渦巻いているのを感じて俺は背筋がゾクッとした。
「……佐久間君」
低く甘く俺の名前を呼ぶ声。
その声色に心臓がドクンと大きく跳ねた。
「うん……?」
俺の返事は自分でも驚くほど震えていた。
蓮の手が俺の腰からゆっくりと滑り上がり背中のファスナーの金具に触れる。
しかしそれを下ろすことはせずそのまま背骨のラインをなぞるようにして首元の白い付け襟へと移動した。
「これ仕事?」
「……うん。罰ゲームの企画で……」
「スタジオでこれ着てたの?」
「うん……」
「周りの奴らにも見られた?」
「……うん。仕事だから……」
蓮の指先が蝶ネクタイを弄りそのまま俺の鎖骨のあたりをスッと撫でた。
ただそれだけの接触なのに全身の産毛が逆立つような感覚に襲われる。
「……仕事でも嫌だ」
蓮の声はひどく低く独占欲に塗れていた。
「こんな格好他の奴らに見られるのすごく嫌だ」
蓮の顔が近づいてくる。
彼の吐息が俺の鼻先を掠めた。蓮の使っている微かに甘い香水の匂いが俺の嗅覚を支配する。
「蓮……あの着替えるからちょっと離れ……」
俺は蓮の胸板に両手を当てて軽く押し返そうとした。
しかし蓮はビクともしない。逆に俺の腰を抱き寄せる腕の力がさらに強くなった。
ハイレグの切れ込みのすぐ下網タイツ越しに剥き出しになっている太ももの付け根に蓮のもう片方の手が添えられる。
「ひっ……」
直接肌に触れられたわけではないのに網タイツのザラッとした感触と蓮の指の熱が混ざり合って変な声が漏れてしまった。
蓮の大きな手が俺の太ももをゆっくりと撫で上げる。
親指がハイレグの縁をなぞるように動く。
「佐久間君これ……エロい」
「っ……!バカ、やめ……っ」
「やめない。……佐久間君も本当は俺に見せたかったんでしょ?」
「ちがっ、そんなわけ……っ!」
続きは、pixivにて同タイトルで公開中です。
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※最初から最後まで甘く、濃く、容赦なく。読み応えたっぷりのR-18作品となっております。
コメント
1件
読み終わりました…!これ、バニーボーイ姿でペナルティをこなす佐久間君の羞恥とプロ根性のギャップがもうね、たまらなくて。特に、カメラが回ってる間は笑顔で演じきって、楽屋に一人になった途端にあらわになるリアルな照れとか恥ずかしさがすごく伝わってきました。あのハイレグと網タイツの描写の詳細さに思わず息を呑みましたよ…。そして蓮さんの登場シーン!あの「仕事でも嫌だ」って独占欲丸出しのセリフ、静かな迫力がやばかったです。普段は友達以上恋人未満の距離感なのに、あの場面で一気に色っぽくて危険な空気になった瞬間、心臓が跳ねました。続きが気になりすぎる…!