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桃彩学園SNS部
第2話
「5月 ~結成」
乃愛と達矢らの計らいでSNS部に入部させられた社。イマイチ納得がいかない彼だが、2人の説得もあって、とりあえずは部室と思しき一室に来ていた。
なおきり「さて、この部・SNS部は文字通りSNSを使って色んなイベントやグランプリに参加して作品を投稿する。他にも、学校行事を保存するアルバムや紹介するブログの記事作成なんかも担当するぞ。」
たっつん「へー…」
直切がSNS部の活動について簡単に説明する。既に知っている枝美と博文はともかく、新入部の達矢、乃愛、社はきっちり説明を聞いて納得した。直切はさらに続ける。
なおきり「とりあえず、これで部員が揃ったことで晴れてSNS部結成だ。今後の活動についてはショートメッセージで送ったりもするから。後で携帯の番号も教えてくれ。」
たっつん「ん?」
直切の話の一部に「部員が揃った」とあった。そこに達矢と乃愛が疑問を持つ。
のあ「部員が揃った…って何?」
なおきり「ああ、それはな…」
?「入るぞー。」 ?「失礼する。」
男子生徒が2人、部室に入ってきた。1人はクールな顔立ちをした、いわゆる「イケメン」の男子生徒・羽黒龍宇。もう1人の獣耳を持つ白髪の男子生徒は土井白斗。
じゃっぴ「うり坊?」
うり「うり坊はやめろ!イノシシじゃねえんだぞ俺は!」
のあ「2人もここの部員だったの?」
うり「違え!退屈しのぎに来ただけだ!」
どぬく「…龍宇の言い分はともかく、俺も今日はこちらに出られる。」
なおきり「悪いな。忙しいとこなのに。」
どぬく「うむ。」
龍宇と土井はそれぞれ言いたいことを言った後、席について一服する。そこで、達矢が再度聞き直す。
たっつん「なあ、先言っとった部員が揃ったって何や?」
ヒロ「ああ、それはね、この2人が正部員じゃないから。」
のあ「へ?」
博文が龍宇と土井を指して言う。そこに枝美と直切が付け加える。
えと「この学校、部活動を作るには最低4人の部員がいるの。でも、掛け持ち部員は正部員としてカウントされないから、あんたたちにも入ってもらったってワケ。」
なおきり「土井は剣道部との掛け持ちやら家の都合やらで忙しいからしゃーなしとして、龍宇のヤツは退屈とか言って来てる割には入部届も出さねえ。」
じゃっぴ「何だそりゃ。」
社は龍宇を見て飽きれる。何しに来たんだ、と思った。
じゃっぴ「おい、うり坊。お前、何しにここ来てんだ?」
うり「お前にゃ関係ねえだろ。つか、うり坊って言うな!」
のあ「もう…ケンカはやめて。」
社と龍宇は危うくケンカしそうになるが、乃愛により止められる。
たっつん「あとは、この部て結構前からあるんと違うんかい?」
なおきり「ああ、この学校自体のブログとかSNSを使った動画や記事の投稿は普通にあった。でも、それとは関係ナシに俺らで部を創った。俺らは俺らでやっていく。もちろん、正式な部になった以上、学校の許可ありきでな。」
説明を一括り終えた部員たち。そこで乃愛があることを疑問視し、提案する。
のあ「ところで、この部ってネットとかSNSに詳しい人っている?」
ヒロ「ん?…まあ、それなりにはね。」
えと「でも、詳しい…て程じゃないね。」
のあ「だったら、私に1つ提案があるんだけど、ネットに詳しい部員が1人居た方が良くない?」
じゃっぴ「…確かに。」
たっつん「名案やな。」
乃愛は部の状況や特徴を考えて、インターネットに詳しい人物が1人必要だろうと考えた。社と達矢もこれに賛成するが、それが誰かという候補はない。だが、そこは達矢が心当たりを挙げる。
たっつん「それやったら、俺に心当たりが1人おるで。」
SNS部員たちは達矢のクラス・1年C組に行った。そこで目を付けたのは窓際の自席でスマホをいじっている黄緑の髪をした男子生徒・柴林太郎。休み時間等には常にスマホや持参のPCで何かしている彼ならネットに詳しいだろう、と達矢は考えた。SNS部員たちは早速、柴に話しかけてみた。
たっつん「おーい、柴!」
シヴァ「ん?」
~カクシカ
シヴァ「ふ~ん…ネットに詳しい人、ね…」
たっつん「そや。せやから柴に入部してもらえたら助かるんやけど。」
シヴァ「お断り。」
部員たち「は!?」
柴はSNS部への勧誘をキッパリ断った。これまで彼はネット世界に入り浸っていたため、現実(リアル)の人付き合いに慣れていなかった。そのため、部活の勧誘等は断るようにしていた。
シヴァ「俺、人付き合い苦手なんだ。だからごめん。」
柴はSNS部員たちから目を背けるように断る。その臆病な態度にイラっときた社は彼に厳しく当たる。
じゃっぴ「お前な、人付き合いは人間社会で避けて通れねえんだ。苦手とか、逃げるような言い訳すんな!」
のあ「じゃっぴ、やめて!」
ケンカ腰になる社を乃愛が止める。だが、社の先の言葉に感銘を受けた柴は心が動いた。
のあ「ごめんね。強制するわけじゃないから。でも、ネットに詳しい人が入部してくれるとホントに助かる。」
シヴァ「…分かった。」
SNS部員たち「へ!?」
シヴァ「俺に何ができるか分からないけど、入ってみる。」
SNS部員たちは耳を疑った。当初、入部を拒否していた柴があっさり態度を変えて入部を希望した。その3秒と経たない心変わりは疑われて当然だ。
たっつん「何や、その心変わり?」
ヒロ「のあちゃんにホレたとか?」
じゃっぴ「…おい!下心とかじゃねえだろな?」
博文の何気ない一言で社は柴を睨む。そこは当然、柴も言うことを言う。
シヴァ「いや、ちょっと考え直してみたんだ。俺、誰かに頼られたり、必要とされたりしたの初めてでさ…」
部員たち「…」
シヴァ「ただ、ネットに詳しい人っていうと、俺にも1人心当たりがいるんだ。そいつも誘いたい。」
部員たち「へ?」
昼休み中、学校の図書館、1人の男子生徒が古文書を読んで調べものをしていた。調べものをしているのは紫苑風太。4月末の学年模擬試験で1位を取った学年主席の勉強家だ。その彼に1人の女子生徒が話しかけてきた。
るな「紫苑君、今日も調べものですか~?」
もふ「ええ。趣味でね。」
風太に話しかけてきたのは水色のポニテが特徴の女子生徒・水城流菜。
もふ「水城さんも何か調べものですか?」
るな「いや、私は紫苑君の勉強法を知りたいだけですよ~。どうしたら学年1位が取れるのかな~て。」
もふ「そうですか。でも、今回のはただの俺の趣味です。」
流菜は学年主席の座を狙って、その主席である風太の勉強方法を探ろうとする。そんな時、SNS部員たちが彼女らの元に来た。
なおきり「アイツか?あのメガネの。」
シヴァ「そう。」
直切は風太の方を向いて聞く。柴がそうだと言うと、SNS部員たちは早速、風太に話しかけてみた。
SNS部員たちは風太と流菜にSNS部について話してみた。だが、風太の返事は連れなかった。
もふ「お断りです。部活の内容自体は否定しませんが、問題は別にあります。誰とは言いにくいので伏せておきますが、ここに約1カ月前、学校中を荒らし回った問題児が1人いますよね。その彼と同一視されるのは勘弁です。」
じゃっぴ「な!?」
部員たち「あー…」
じゃっぴ「退くな!」
もふ「そういうことです。」
風太は問題児だった社と同一視されるのを嫌がる。社にも自覚は多少あるが、今では初期のような悪ふざけはやっていない。そこに、流菜が助け舟を出した。
るな「良いんじゃないですか~?SNS部、楽しそうですよ?」
もふ「そうは言われましてもね…もう中間テストも近いですし…」
流菜までもが風太に入部を促す。だが、風太はウンと言わない。そこにもう1人、別の人物が来た。社のクラスメイト・赤楚悠安だ。
ゆあん「お、何か面白そうなことやってる!」
じゃっぴ「お、悠安!」
ゆあん「お、じゃっぴじゃん!」
社と悠安は入学して間もなく仲良しとなった間柄だ。2人は軽く握手をすると、事の成り行きを話す。そして、悠安にも入部を促す。
ゆあん「良いよ~俺もスマホでゲームとかよくやるし♪」
じゃっぴ「サンキュー♪」
るな「私も入部しまーす♪面白そうだしー♪」
ゆあん「俺も俺もー♪」
なおきり「おう、良いぞー♪」
流菜と悠安は面白そうだという理由でSNS部に入部する。少々不純な気もするが、理由としてはありがちなモノだろう。
うり「…またうるせえ女と子供(ガキ)入れんのかよ。」
なおきり「良いじゃねえか。賑やかになる♪さて、んじゃ次は部室の用意だな。」
たっつん「は?部室?」
直切の「部室」という発言には達矢だけでなく、乃愛、社らも耳を疑った。
のあ「あの部屋は部室じゃなかったの?」
ヒロ「ああ、あれは昔、生徒会室だった空き部屋を適当に使ってただけだから。でも、こうして部員が増えた以上、正式な部になったから、部屋の1つも正式に使える。」
えと「これで機材とかも運べるってワケだね。」
なおきり「あとは機材の用意だな。PCはヒロが家で使ってたお古を用意してくれたから、まずはそれを使おう。ネット回線は学校の借りて使えばいいだろ。」
じゃっぴ「んじゃ、早速準備すっか!」
ゆあん「おー!」
るな「楽しみです~♪」
SNS部員たちは改めてスタートを切るべく、職員室に掛け合って部室とネット回線の使用許可を貰いに行く。その様子を見ていた風太はやれやれ…といった表情をしていた。
もふ「…まったく、テスト前なのに呑気な。」
学校の許可を得て正式に部活として認められたSNS部は早速、空き部屋を借りてそこを軽く掃除し、その後に機材を運び込んだ。結局、以前に直切らが屯していた旧生徒会室がそのまま部室となった。そこに博文が家から持ってきた型落ちのPCとプロジェクター、プリンター等の機材も置き、ネット回線も繋いだことでSNSを使う環境はバッチリ整った。
のあ「…これで全部かな。」
えと「そうだね。結構小汚い部屋だったから割と時間かかったけど。」
るな「後は早速、回線を繋いでネットが使えるか様子を見ることですね~♪」
掃除を終えた女子3人がそういうやりとりをしている中、男子たちは早速博文のお古のPCを置いてネットに繋げるか試していた。しかし、PCは起動したは良いが、使い古されていた旧式のため動作が遅い。それを知らない悠安は苛立っていた。
ゆあん「…何で動かねーんだよ?」
ヒロ「しょうがないだろ。古いんだから。」
ゆあん「…だったら!」
悠安はPCの前に立って感情任せにPCを力強く叩きつけた。
男子一同「あー!?」
女子一同「へ!?何?」
悠安の一撃でPCは大破した。内部メカは潰れ、液晶は半分見えなくなり、さらにキーボード部分もヒビが入って完全に壊れた。
じゃっぴ「ゆ~あ~ん?」
ヒロ「どうしてくれんだ?」
ゆあん「いや…その…ごめん…」
男子部員たちは悠安を厳しい目で睨む。さすがの悠安もこれには反省を余儀なくされた。
なおきり「…ったく!柴、直せそうか?」
シヴァ「いや、こうなるともう無理…」
ヒロ「…しょうがない。全員でお金出し合って新しいの買おう。」
直切は柴に直せるかを聞く。だが、柴もこれにはお手上げだ。そのため、部員たちは仕方なく全員で資金を出し合って新しいPCを買うことにした。
数日後、部室には新しいPCが来た。早速、起動させてネットやプリンターに繋ぐと問題なく作動した。
シヴァ「問題なし、だな。」
なおきり「っしゃ!」
じゃっぴ「これで正式にSNS部始動だな!」
PCの配備を無事に終えたことで全員が歓喜した。その矢先、風太がSNS部員たちの後ろから来て拍手を送った。だが、それには少しした大事な忠告があった。
もふ「まずはおめでとう、ですね。」
なおきり「お、祝ってくれんのか?」
もふ「ええ。ただ…」
たっつん「何や?」
もふ「何か大事なこと忘れてませんか?」
どぬく「ぬ!?」
うり「あ…」
じゃっぴ「やべえ!」
社、龍宇、土井は風太に言われて、中間試験の勉強を完全に忘れていた。時期は既に中間試験の目前だった。にも関わらず、彼らはPCや部のことばかり考えていた。日頃から勉強している乃愛や達矢らは良いが、勉強していない社ら3人は一気に萎えた。
そして、中間試験を終えた案の定、社、龍宇、土井の3人は結局、5教科全て赤点だった。3人は当然、赤点の後に出される課題や補習、追試に頭を悩ませることとなった。
じゃっぴ「あ~あ…」
どぬく「…これは笑えんな…」
うり「…まあ、いいか…いや、良くねえな…」
3人は廊下で頭を痛めていた。その様子を見ていた風太はあることを提案する。
もふ「やれやれ…と言ったところですね。」
じゃっぴ・うり「あ?」
もふ「俺も入部します。君たちおバカさんを放っておけません。」
部員たち「は!?」
全員が耳を疑った。バカ騒ぎ等に縁のなさそうな風太がまさかの入部希望とは、と。
なおきり「どういう風の吹き回しだ?」
もふ「何、俺も少々堅物になり過ぎてるのを自分でも気にしてましてね。たまにはおバカになってみるのも悪くないと思ったまでですよ。もちろん、学年主席の座はキープします。」
風太は以前から自分でも自分が少々堅物過ぎるのではないかと思っていた。SNS部に入ってバカをやって頭をもみほぐすのも悪くないと考えて入部を決意した。
なおきり「よっしゃ!これで部員11人…いや、掛け持ちのどぬを入れて12人か!」
じゃっぴ「ん?12人?」
なおきり「ああ、龍宇のヤツも今日、入部届出したのよ。」
うり「…ほとんど何もしねえけどな。」
じゃっぴ「んじゃ、うり坊も部員てことか!」
社はいつの間にか入部届を出していた龍宇の入部を歓迎するが、嫌っている「うり坊」呼ばわりされたことで龍宇は怒って社に殴りかかる。
うり「誰がうり坊だこの野郎!」
じゃっぴ「痛っ!?…ああ?やんのかコラ!」
のあ「…もう、ケンカはやめて!」
もふ「課題は良いんですか?」
2人は乃愛の制止よりも風太の「課題」という言葉に少し冷や汗が出つつも、ケンカを止めることは中々しなかった。