テラーノベル
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第4話
確かな恐怖
俺は眉をひそめ、思わず声を荒げた。
「神に会わせる、だと……?」
男は肩をすくめ、あくまで飄々とした口調で答える。
「そうさ。まあ、厳密には“会う”ってほどじゃない。天界に干渉して、君に見せてあげるだけさ」
頭の中がぐるぐると回る。
「待て待て、スケールが大きすぎて、頭が混乱してるぞ……」
言いながらも、どこか胸の奥がざわつくのを感じていた。
男は笑い、肩を揺らす。
「まあ、無理もないよね」
「お前、やっぱり詐欺師だろ」
声に出すと、自分でも少し情けなくなる。
「違うってばあ」
男は軽く手を振る。
「そもそもあんたは何者なんだ?」
問いを投げると、男は顔をくしゃっと崩して笑った。
「僕? 僕はね……ヴェルニクス・ドレイン。ただの旅人さ。そういえばまだそっちの名前も聞いてなかったねえ。」
怪しすぎる。
信用できるわけがない。
でも、どうしても気になる
「カイラ・ヴァレンティアだ。」
案内されるがままに着いていく。
森の奥へと足を進める。
決戦で血と魔法の混じった空気に包まれたあの場所だ。
「おい、ここは魔物が多かった場所だぞ。本当に大丈夫か」
俺の声は、少し震えていた。
「大丈夫さ。ほら、着いたよ」
男が立ち止まり、辺りを見渡す。夕暮れが迫り、森は徐々に闇に沈みかけていた。
俺は松明に火を灯す。
“ここにユノンがいたら、魔法で火をつけてくれたのにな……”
無意識にそう思う。
ユノンは生まれながらに複数属性の魔法を操れる希少な存在だった。
あいつは魔法が大好きで、どんな時でも楽しそうに笑っていた。
火の灯った松明を手に、俺は男の隣に歩み寄る。
目の前には古びた遺跡のような建物、祭壇にも見える台座、そして周囲の空気は不穏で重く、吐き気すら覚える。
「おい、なんなんだここは……」
声にした瞬間、ヴェルニクスは肩をすくめた。
「うーん、僕もよく分からないんだよね。」
森は奇妙な静けさに包まれている。魔物さえ近づかないような気配だ。
建物の中に足を踏み入れると、古い書物が山のように積まれ、中央には祭壇が置かれていた。
礼拝堂のような雰囲気もある。息を吸い込むと、古い木の匂いと湿った石の匂いが混ざり、心臓が微かに高鳴った。
ヴェルニクスが歩み出る。
「じゃあ、この祭壇の前に立って」
「は、まじ?」
不穏な気配は、まるでこれから脅かすぞ、と笑う幽霊を見ているようだった。
吐き気がする。だが、無視するわけにもいかず、俺は重い足を一歩前に出す。
ヴェルニクスはにやりと笑った。
「まあまあ、落ち着け。さあ、始めるよ。神に会う覚悟はできたかい?」
俺は松明を握り直し、震える手を押さえつけながら答えた。
「まだ、信じてねえよ……」
男は肩を揺らし、にやりと笑うだけだった。
「今に分かるさ……」
静かな祭壇。そこで聞こえるのはまるで「待ってたよ」と囁く不気味な風だけだった。
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