橙山BL要素有、完全なバドエン
サタンと付き合って数ヶ月。
『……なぁ、あいつらだろ?男同士付き合ってるやつって』
『うわぁ、そうなの?きっも、w』
『裏で人いじめてるらしいよ〜』
『えー、?ないわーw』
酷い罵詈雑言ももう慣れっこだ。
最初は苦しかったが最近はサタンが隣に居るだけで満足。
サタンもいつも通り厨二全開の発言を元気にかましていて大丈夫だろうと思っていた。
思っていたら、
なぁ、じぇる
僕と死なないか?
サタンは突然そう言ってきた。
俺は動揺して全く言葉が出ない。
やっと喉から絞り出して紡いだのが、
「……なんで?」
だった。
サタンは少し考えてこう言った。
「全部嫌になった。
周りから軽蔑されるのもありもしない噂を流されるのも有り得ないくらい酷い言葉で罵られるのも」
俺はまたなにも言えなくなってしまう。
「ジェルが傷ついているのはもう見たくないし僕自身ももう限界なんだ」
さらにそう言ったサタンは滅多に見せない表情をしていた。
眉にぎゅっと皺を寄せて、泣き顔のような笑顔のようななんとも言えない感情の顔。
俺は彼が元気なものだと勝手に思い込んでいた。
よく笑ってよく照れて。
変わっていないと信じ込んでいた。
本当は1人で限界まで抱え込んで苦しくなって。
ごめんね。
でももう1人じゃないよ。
俺は数秒間を開けてサタンを抱きしめた。
「うん、そうだね」
一緒に死のう?サタン
次の日の朝。
いつも通り学校に少し遅れて着いた。
相も変わらずひそひそと気持ちの悪い悪口を囁かれる。
いつもなら無視していただろう。
俺は気色悪い集団の中の1人を思いっきり突き飛ばした。
『うわぁ、!!』
『い、痛っ!?』
『な、なにすんのよあんたたち!!』
「うるさいな、サタンはもっと辛い思いしたんだよ、痛かったんだよ」
『は、はぁ!?知らねぇよ!!』
「じゃああんたらの痛みも知ったことじゃねぇよ、失せろ」
『っはぁ!?なんでそんな大口を……!!』
「サタン、行くよ」
「あ、あぁ」
俺はサタンのしなやかな手を取って思い切り廊下を走り抜けた。
運動は得意な方なんだ。
「……!?」
その時、後ろからすごい勢いで走ってくるのは……。
「遠井さん!?」
「遠井!?!?」
「あん、たたち、な、なんでそんな、こと、してん、の!!」
相当全速力で走っているのか言葉が途切れ途切れになっている。
「俺ら、もう全部終わりにすることにしたんだ、ごめんね遠井さん」
「、は、はぁ!?ちょ、くわ、しく、!!」
「僕とジェルで一緒に死ぬんだ。もう疲れたんだ」
「……!?」
後ろを振り向くと泣きそうな顔をして俺らを見つめてくる遠井さんがいた。
くそ、分かってもらえないか。
こうなったら逃げ切るしか…………
「………………わ、かった」
「え?」
遠井さんは暗い顔のまま走る速度を遅くした。
「2人、辛かったんだね。もういいよ、十分頑張った」
そのまま立ち止まって、
「はぁ、またね、幸せになり、なよ〜!!はぁ、はぁ、」
と走った反動で息を切らしながら手を振ってきた。
遠井さん、分かってくれたんだね。
ありがとう、!!
俺は遠井さんに向かって思いっきり微笑んだ。
同じようににまっと笑顔を作ってくれる。
『と、遠井さん退いてくれる?』
「ん。お前らジェルに悪口言ってたやつ?やだよ、退かないね」
『え、えぇ、!?ど、退けよ!!』
「食らえ!!卍手裏剣流星群!!」
「ぐ、ぐわぁっ!!なんだこれ、?!」
遠井さん、足止めまでしてくれてる……!!
感謝したいところだがそんな暇はない。
下駄箱でスニーカーを出して雑に履いた。
そして閉まりかけの校門にダッシュして俺たちは学校から飛び出した。
近くの商店街。
少し息を切らして俺たちは人気のない路地に入った。
「よし!!無事逃げ切れたね、サタン」
「あ、あぁ、……」
「どうしたの?」
「やっと……自由だなって」
柔らかい表情で俺を見つめた。
生温かいけど心地いい何かが胸の奥からぎゅっと込み上げてくるような感覚に襲われる。
どうしようも無くなってサタンを抱きしめた。
「……っあ……」
サタンの顔を見なくても照れていることはわかる。
きっとゆでダコみたいに赤くなっていることだろう。
このままずっと抱きしめたまま移動したいが無理そうだ。
俺は惜しいけどサタンを離した。
「……なぁ、遊び行かね?俺たちで」
「……遊ぶ、って?」
「今日が最後やしさ、ゲーセンとか2人で行かへんかなって」
「……い、いいな、それ!!」
「俺もありったけのお小遣い持ってきたし!!」
「そうしようそうしよう、行くぞ!お〜!!」
にぱっと笑ってサタンはゲーセンの方向へ駆け出した。
「……ジェル、なんでそんなぬいぐるみ取れんだよ!!」
「ふふー、上手いっしょ」
「こ、このキャラのぬいぐるみ取れるか?」
「よい、しょ、!!わ!!取れた〜〜〜〜!!」
「すご、すごいぞジェル!!さては異能力を使ったか!?」
「次はボーリングや!!」
「うわぁ、ボール重ぉ゛……な、投げない、おぉっと、やばジェル、コケそう、や、やば」
「へ?サタン俺支えっ……うわぁぁああぁぁああああ!!」
スッテーン!!
「いだだ……ごめんジェル」
「ふふふ、かわいい」
「、!?な、なにを!!」
「世界一かわいいよ、サタンは」
「はー、めっちゃ遊んだなぁw」
「そうだな!!……で」
俺たちは高いビルの屋上に来た。
「手繋ご、俺たちは落ちる時も一緒やから」
「……ああ」
風に吹かれてよろけながらフェンスを乗り越えた。
「ジェル、天国でも来世でも一緒だぞ」
「うん、っ……うん!!」
……あれ、?
気づいたら俺の目から水がこぼれていた。
意外にも俺の方が先に泣いてしまったらしい。
「な、泣くな!!……僕も泣きたくなるだろ!! 」
「っう……、さた、サタン、っ、ありがとう……っ」
「……僕の方こそ…………ジェル、ありがとう」
俺たちは涙を流しながら静かに見つめあって、静かに夜空に踏み出した。
最期に見るのがサタンの顔で良かった。
夜の新鮮な空気の中に俺たちは細い体で飛び込んだ。
「……ジェル、大好き」
風を切る音と共にサタンの声が耳に入る。
「俺も!!大好きだよ、サタン」
俺はサタンの体に腕を絡めて思いっきり抱きしめる。
数秒後、俺の意識は途絶えた。
……あれ、
さ、たんは?
身体中の激痛で目が覚める。
真っ白い天井だけが俺の目に映っていた。
しきりに誰かが何かを言っていることはわかる。
痛みに耐えながら俺は声を発した。
「…………あ゛の…………さ、たん、は……」
医者らしき人物は深刻そうな顔で俺に語りかけてきた。
「サタンくんは___」
落下死で亡くなられました。
「さたん……が………………死、ん……」
サタン
俺は君と『一緒に』死にたかったよ、。
コメント
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ぐ…神作だ…グヘヘヘヘヘ…((殴