テラーノベル
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※実際の団体、個人とは無関係です。****※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他、捏造した設定が多く含まれます。
※中華絵巻を元にしてます。
※※※ 閲覧には十分注意してください。
華やかで堅苦しい花嫁衣装を汚さない様にして、やっと身請けてくれたお客さんの家まで着けた。
ガタつく車の中でも優しく雲雀に話しかけて乗り降りの時も手を差し伸べてくれた。
この人とならきっとしあわせになれるかもしれない、雲雀はそう思った。
「…さて、着きましたよ。ここが今日から貴方のお家です。」
「うぉお〜っ!家でっか!?庭まである!!」
店かその周りの家しか知らなかった雲雀は思わず大声を出してはしゃいだ。
庭で日向ぼっこをしていた2匹の猫が驚いて逃げてしまうのを見て、しまった、と後ろを振り返る。
「ふふ、気にしないでください。もう取り繕わなくていいですから。」
身請けてくれたお客さん、四季凪は子供を見守るような眼差しをして雲雀を見ていた。
彼も庭の方まで来ると雲雀の手を取って庭先に咲いている花や先ほど逃げた猫のことを話してくれる。
優しい横顔、眼鏡の奥にある瞳は光を吸い込んだ宝石みたいだ。
雲雀が四季凪に見惚れていると衣装を踏んづけてしまい、思い切り四季凪の方へ体を傾けてしまった。
「おっと…!大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい……」
咄嗟に支えてくれた四季凪の胸にすがる形になってしまい、恥ずかしい。
雲雀が頬を赤らめていると、玄関先から澄んだ鐘の音が鳴った。
「なにこの音??」
「お客さんが来ましたよ〜って音です。玄関の方へ行ってみますか」
言われるがまま四季凪の後を追って行くと玄関先にはなにやら大きめな箱を持った薄紅の髪をした男性がいた。
「出るの遅いよ、凪ちゃん。……あ、後ろの子が例の?」
「すみません。そうです。雲雀、ご挨拶。できますか?」
長身の彼から注がれる視線がやたら冷たく感じて雲雀は四季凪の背へと隠れるようにして後退りをした。
敵意とか悪意がある視線ではないのだが如何せん背が高いというだけで怖い。
「…あ、えっと……雲雀、です…。」
やっと名前だけを言って彼の目を見るとじ…っと雲雀を見ている。
それから目を細めて柔らかい笑顔になった。どこか申し訳なさそうに笑う彼に雲雀の胸が締め付けられるような感覚がした。
「あら、隠れちゃった。……貴方、大きいんですから怖がらせないでくださいよ、まったく……」
「えぇ?ただ荷物持ってきただけなのに…。……俺、セラフって言うの。よろしくね。」
仲よさげに話す四季凪と長身の彼、セラフ。どうやら一緒に住んでいるらしかった。
ーー
ーー
家の中へ入れてもらい、居間でセラフからお茶をご馳走してもらっていると四季凪は楽しげな様子でセラフが持ってきた箱の中を見ている。
箱の中身は全て雲雀の衣類として買ったものだった。
と、言うのも雲雀が店から受け取った生活用品は数少なく下着を含めても風呂敷1枚で事足りるぐらいだ。
普通の生活をするには少なすぎる。
「わっ、綺麗な服…」
「ぜーんぶ雲雀のですからね。あとで貴方の部屋に運びます。」
「俺の部屋があるん?!」
「あるよ〜。2階に行って、凪ちゃんの部屋の右横ね。行ってみる?」
「あっ、ちょっと!その前に服、着替えなさいって。動きづらいでしょ」
それから、四季凪がさっそく雲雀へと買ってきた服を着せ替えたりセラフが家中を案内してくれたりして1日を終えた。
次から次へと新しいことが舞い込んできて目を回しそうになる雲雀。
興奮した子供みたく頬を上気させて四季凪とセラフの言うことをしっかり聞いていた。
そして、夜。夕食時。
ほどよく霜の入ったお肉、瑞々しい野菜、その他たくさんを持ってセラフが台所に立つ。
手際良く作られていく美味しそうな品々、匂いだけでもお腹が空いてきてしまうぐらいだ。
「セラフって料理上手いんやね!すげ〜!!」
「先に味見してみる?…はい、あーん」
「あっ、ずるいですよ。私も私も」
よく煮込まれて柔らかくなった橙色の野菜をセラフが鍋から出し、少し冷ましてから雲雀の口へと運んでくれる。
舌に載った瞬間、感じた自然な甘さとちょうど良くつけられた塩気とほのかな出汁の味。
今まで桃しか口にしたことがなかった雲雀にとって初めての誰かの手料理。
「美味しい?」
「ん~~!!うんっ!うんっ!」
今日のなかで一等目を輝かせて大きく頷く雲雀。頬に手を当ててしっかりと噛み締める。
四季凪もセラフから橙の野菜を口に入れてもらい、今日も美味しいと口にした。
ーー
ーー
セラフの料理が全て完成し、食事用の大きな机がすぐに皿で埋まった。
「今日は雲雀が来たお祝いです!たくさん食べてくださいね。」
作った本人よりも得意げな四季凪から匙と箸を受け取り、席につく。
「いただきます!」
「どうぞ〜」
店にいた時には絶対食べられなかった温かいお粥に匙をいれると中から半熟の卵が現れた。
白いお粥に鮮やかな橙色がとろとろと流れ出していく。
卵とお粥がよく絡んだところを掬って、一呼吸、意を決して雲雀は食べてみた。
「うまぁ〜!」
柔らかく煮た米とそれに絡む濃厚な卵、野菜とは違う甘さをしている。
雲雀には言葉で表現のしようがない美味しいお粥だ、飲み込むのが勿体ない。
雲雀はしっかりとお粥を味わうと四季凪へと茶碗を差し出した。
「ん!じゃあ、あと四季凪とセラフに」
「え?」
差し出された茶碗を前に明らかな疑問符を浮かべながら、四季凪は茶碗をとりあえず受け取った。
セラフも驚いた顔をしていた。
「お、美味しくなかった…?」
「美味しかった!でも、俺だけ食べたら二人の分無くなっちゃうやん」
「あぁ…そういうこと……。 私たちは自分の分がありますから。これは雲雀の分。」
店での癖だと見抜いた四季凪は雲雀の手へ茶碗を戻す。 でも、きょとんとしたまま四季凪と茶碗を見返す雲雀。
状況を理解できていないのか口が開いたままになっている。
「あ、えっと…じゃあさ、…つ、次のごはんっていつ頃貰えるん…?」
茶碗を大事そうに抱えなおし、どこか怯えながら聞いてくる雲雀。
まともな食事が与えられていなかった事が丸わかりだ。
茶碗一杯だけ、しかも数人と共有していたなんてとても考えたくない。
そんな様子の雲雀から一度目を離し、四季凪は徐に取り分け用の皿を手に取った。
そして、皿の上が山になるぐらい料理を載せ、雲雀の前に置い た。
「明日の朝です。それから明日のお昼と夜も。その次の日の朝と昼と夜。そのまた次の日も朝と昼と夜にご飯が出ます!そのまた次の日も …」
圧倒される雲雀をよそに四季凪は料理を取り分けていく。 セラフがやり過ぎだと呆れた顔をしているがお構いなしだ。
「だから、それは食べてください。」
最後の皿を置きながら四季凪は笑いかけ、雲雀の背をさすった。
手のひらの温度が真新しい服を通して伝わってくる前に、雲雀は泣き出してしまった。
「えっ、ちょ、泣いちゃったじゃん…!」
「ん、大丈夫…いっぱい食べてね、雲雀」
大粒の涙を流している雲雀に驚くセラフ、だが、四季凪は背中をさするばかりで泣き止ませようとはしなかった。
食事が再開されるまで時間はかかったが、冷えることはなく、食卓は温かいままだった。
コメント
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コメント失礼します🙇🏻♀️՞雲雀くんはセラフくんアキラくんの家に出迎えて貰えた中、奏斗くんはどうなっているのかとても楽しみですᐢ ᴗ ‧̫ ᴗ ᐢ ♪続き待っています🙌🏻‼️