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大きめのアタッシュケースを ギターケースのように肩にかけた。 任務からの帰り道、一人で路地裏に入る。
視界に入ったのは、路地裏に座っている一人の少女。汚れたワンピースを着ている。
いくら殺し屋でも、人を殺す職業をしている人間でも、少女を放っておくほど残酷ではない。
「ねぇ、なんでこんな暑い中道端で体育座りしてるの。」少女の隣にしゃがんで言った。
少女は少し驚いた顔をしてから口を開いた。
「お父さんとお母さんが大きな声で……」それだけ言って黙った。家庭に何か問題がある、そうとしか考えられない。
「『全部お前のせいでなってるんだ邪魔なのはお前なんだよ俺たちは何も悪くないのに』 って言われちゃった。」
「そっか、確かに家族って大変だよね」 にこっと微笑む。
しかし、毒親でもそこまで言うのかと少し驚いた。服も体も洗っていない、家にも入れない。果たして、それは”家族“や”保護者“と言うのだろうか。
「私、なにかしちゃいました か。」
「いや、お洋服可愛いなあって思ってさ」
彼女の着ている服に目線を落とす。少女の顔が少し明るくなった。
「この服はおばあちゃんが買ってくれて、おばあちゃんはわたしに優しいんだ」自分の服を少し見て優しく微笑んだ。
僕が生きてきた中で一番嘘の無い笑顔だった。
「そうなんだ。 ちなみに最近お風呂に入ったりしたかな。」独り言なのか分からないような言い方だった。しかし、『どうしたら少女が怖がらないか』など、この殺し屋には分かるはずが無かった。
「お風呂は入ってない」当然の答えだった。考えれば家に入れていないのに、お風呂に入れるなどおかしな話だった。
「お兄さんと水遊びしない?」話がすっ飛んだ。風呂の話から水遊びの話へ。
「水遊び…」まだ幼い子供なのに、真剣に殺し屋を見て何かを考えている。しかし、普通の小学生ならこの身長の高めの男に水遊びをしないか、などと言われれば断るどころかお巡りさんに直行だろう。
「行って良いの」疑問形なのか独り言なのか分からない言い方だった、イエスやノーではなく。
皇は自然に常識を言うように、うんと言った。
殺し屋、それだけで避けられ罪人扱いされた者。家族も親戚も居なかった。それ故、殺し屋以外の道など残されていなかった。死なないために戦い、殺した。生きていく楽しさなどもう無かった。行きたくもない、死にたくもない、殺し屋を続けるだけ。
「行く」一言、それだけ。「行きたい」でも無く。だが、それで充分だった。
俺が助ける、この男にはそれしか無かった。
「じゃあ、今から僕の家行こっか。」言い方はちゃらちゃらしていて、お持ち帰りをする時の男のそれだった。しかし、少女は少し微笑んでうんとだけ言った。
少女に向かって手を差し出す。
「手、繋ごうよ。雫ちゃん。」それだけ言った。おそらく、殺し屋のこんなことを聞く少女はこの子以外に居ない。普通の少女ならこんなことを殺しを仕事にしている俺にそんなこと出来ない。何も言わず、彼女は手を取った。