「助けて」 そう言えなくなったのは、一体いつからだったろうか。
── 刹那/1月4日/10時 ──
カーテンから差し込む朝日で深い眠りから目を覚ます。「今何時…?」手元にあったスマホの電源を入れ、時刻を確認すると10時を示していた。今日は確か惟月と約束をしていた日だったはずだ。急いで準備しなければ、とベッドから飛び出した。
「おはよう、出来損ないの刹那」鏡に映る自分に挨拶する。鏡の中の自分は、一瞬悲しそうな顔をした。何を今更、そんな事を思いながら、最低限の化粧をした。
── 惟月/1月4日/10時25分 ──
「惟月〜?今日は用事があるんじゃなかったー?早くしないと遅れるわよ〜!」1階から聞こえてくる母の声で目を覚ます。目覚まし時計に目をやると10時はとっくに過ぎており、自分でかけた目覚ましは、無意識のうちに切っていたらしい。母がいなければ遅刻確定だっただろう。母に感謝しながら1階へと降りていった。
「おはよう、お母さん」 「あら、やっと起きたのね。おはよう」そう言いながら母が出したのは、惟月の大好きなオムレツだった。今はのんびり食べている場合ではないのに…そう思いながら口に詰め込んでいった。
── 惟月/1月4日/11時 ──
何とか時間には間に合った。オムレツを味わえなかったのは辛かったが、約束が最優先だ。しかし、面白いこともあるものだ。いつもなら時間の10分前には着いている刹那が、時間になってもいないのである。確認する為に電話しようと思ったその時、刹那から着信があった。
「もしもしー?」 「もしもし、惟月どこいるの?」「え、どこって…待ち合わせ場所だけど」 「私もいるよ」 「え?見当たらないけど…」 「惟月どこいる?」 「えと…やよい公園」 「…そこじゃないよ?」 「え、あ、間違えたごめんすぐ行く」
珍しいことがあると思ったら自分が間違えてただけとか…ほんと今日はついてない日だな。
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