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奪えないキャンディ

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奪えないキャンディ

1 - 奪えないキャンディ

♥

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2024年09月03日

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※ケーキバース

※フォーク×ケーキ

※誕生日を祝ってくださると全私が喜びます





ライブ後。誰もいないトイレに甘い声が響く。

遠くから楽屋でわちゃわちゃしているメンバーの声が聞こえてくる。

けど、そんなのも気にならないくらい僕は眼の前のないちゃんに夢中で。

項に舌を添わせて、喉仏に噛みついて、鎖骨に吸い付く。

あまい。おいしい。

ないちゃんの汗はシロップみたいな味。

飲み込んだら、ふわっと甘い、ないちゃんの香りがする。

「……っ、そんながっつかなくても逃げないから」

ないちゃんはそう言って僕の頭を優しく撫でる。

僕ばっかり余裕ないみたいでなんか悔しいけど、ライブ中ずっと甘い香り漂わせてたないちゃんが悪い。

こんなのがっつくに決まってるじゃんか。

それに、ないちゃんは僕だけのケーキだし。

「あ、ないちゃんまた怪我してる」

「え、うそ」

不意に、ないちゃんの指が切れてるのを目にしたから、それをぱくっと口に含んで吸血鬼みたいにちゅーっと吸ってみた。

唾液が染みるのか、顔をしかめるないちゃん。

ないちゃんの血は、チョコレートみたいだった。

甘ったるくて、口の中に甘さがずっと残る。

おいしい。

上から、くぐもったないちゃんの喘ぎ声が聞こえてくる。

目尻に涙をためて、頬はほんのりと赤い。

「……ないちゃん、痛いのきもちいの?」

首を横に振るないちゃん。

「痛いのやだ、きらい……」

涙で潤んだ瞳のないちゃんがかわいい。

どう考えたって気持ちよさそうな顔してるのに。

涙もぺろっと舐めてみる。

汗と同じで、シロップみたいな味がした。

瞳は、どんな味がするんだろうか。

キラキラ光るキャンディ。カラコン越しの桃色の瞳は何味なの?

きっと、とびっきり甘いんだろう。

みんなの笑顔と希望を閉じ込めた、あまいあまいキャンディ。

でもそれは僕だけのじゃなくて、みんなのだから。

誰もあれを味わえない。

ないちゃんは僕だけのケーキで、あのキャンディは誰にも奪えない。

でも、それでもいいんだ。

少なくとも今、ないちゃんの瞳に映ってるのは僕だからね。

「……いむ?」

「あ、ごめんないちゃん、考えごとしてた……」

「いや、それはいいんだけどさ、……いつまで俺の指しゃぶってんの。指の血液無くなるわ」

「うわぁ!?!?!?ごめんないちゃん!!!!」

「……っふは」

無意識にないちゃんの血を吸ってたらしく、慌てて指を口から離す。

そんな僕を見て、ないちゃんがくすっと笑った。

ギュンッ、って心臓がすごい音立てた気がする。

「いむらしいね、そういうとこ大好き」

……前言撤回。ないちゃんの瞳も全部食べたいです。僕だけがいいです。




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