※ケーキバース
※フォーク×ケーキ
※誕生日を祝ってくださると全私が喜びます
ライブ後。誰もいないトイレに甘い声が響く。
遠くから楽屋でわちゃわちゃしているメンバーの声が聞こえてくる。
けど、そんなのも気にならないくらい僕は眼の前のないちゃんに夢中で。
項に舌を添わせて、喉仏に噛みついて、鎖骨に吸い付く。
あまい。おいしい。
ないちゃんの汗はシロップみたいな味。
飲み込んだら、ふわっと甘い、ないちゃんの香りがする。
「……っ、そんながっつかなくても逃げないから」
ないちゃんはそう言って僕の頭を優しく撫でる。
僕ばっかり余裕ないみたいでなんか悔しいけど、ライブ中ずっと甘い香り漂わせてたないちゃんが悪い。
こんなのがっつくに決まってるじゃんか。
それに、ないちゃんは僕だけのケーキだし。
「あ、ないちゃんまた怪我してる」
「え、うそ」
不意に、ないちゃんの指が切れてるのを目にしたから、それをぱくっと口に含んで吸血鬼みたいにちゅーっと吸ってみた。
唾液が染みるのか、顔をしかめるないちゃん。
ないちゃんの血は、チョコレートみたいだった。
甘ったるくて、口の中に甘さがずっと残る。
おいしい。
上から、くぐもったないちゃんの喘ぎ声が聞こえてくる。
目尻に涙をためて、頬はほんのりと赤い。
「……ないちゃん、痛いのきもちいの?」
首を横に振るないちゃん。
「痛いのやだ、きらい……」
涙で潤んだ瞳のないちゃんがかわいい。
どう考えたって気持ちよさそうな顔してるのに。
涙もぺろっと舐めてみる。
汗と同じで、シロップみたいな味がした。
瞳は、どんな味がするんだろうか。
キラキラ光るキャンディ。カラコン越しの桃色の瞳は何味なの?
きっと、とびっきり甘いんだろう。
みんなの笑顔と希望を閉じ込めた、あまいあまいキャンディ。
でもそれは僕だけのじゃなくて、みんなのだから。
誰もあれを味わえない。
ないちゃんは僕だけのケーキで、あのキャンディは誰にも奪えない。
でも、それでもいいんだ。
少なくとも今、ないちゃんの瞳に映ってるのは僕だからね。
「……いむ?」
「あ、ごめんないちゃん、考えごとしてた……」
「いや、それはいいんだけどさ、……いつまで俺の指しゃぶってんの。指の血液無くなるわ」
「うわぁ!?!?!?ごめんないちゃん!!!!」
「……っふは」
無意識にないちゃんの血を吸ってたらしく、慌てて指を口から離す。
そんな僕を見て、ないちゃんがくすっと笑った。
ギュンッ、って心臓がすごい音立てた気がする。
「いむらしいね、そういうとこ大好き」
……前言撤回。ないちゃんの瞳も全部食べたいです。僕だけがいいです。
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