「っへんたい!!」
目をぐるぐるさせて そう目の前で叫ぶ彼女
可愛くって頬を撫でる
「わっ、このッ、さ、さわんなへんたい!」
「ひどーい」
「なにがやねん、!!!」
「…んふ、」
「あにきが悪いねんで?」
遡ること数時間
久しぶりに2人で飲もうって そう誘われて
仕事が終わると直ぐに帰路に着く
久しぶりにあにきと呑める!
そんなワクワクした思いが頭を埋め尽くしていた
着替えて コンビニに寄って酒のツマミと酒を買う
少し度数が高いものを選んで。
「あーにき!!来たよー!!」
数年前に貰った合鍵で勝手に彼の家に足を踏み入れる「おー!待っとったでー!」
ごめん今髪乾かしてん!先風呂はいっとこーと思って!そんな声が飛んでくる
「リビング失礼するねー」
ズカズカと入って扉を開ける
掃除したのだろうか 前来た時よりも綺麗で
机の上に飾られた俺ら2人のコロこっとが存在感を増す
「よ〜お前ら〜 可愛いなぁ」
つつくと2人揃って揺れる
物理的に強く引かれ合う2人
こんなふうになるといいなぁ とか 勝手に妄想。
「何見てん〜?」
髪を乾かし終わったのか 彼が後ろから姿を見せる「あーソイツらか まろ好きよな〜それ」
楽しそうに笑う そんな姿が 今はいつもよりも美しく見えた
「だってこれ可愛いやんっ」
しれっと長髪の方だけを指で撫でる
ちらりと本物の彼を見ると
「せやね〜」
と また楽しそうに笑った
「あ、そうだ 簡単なツマミ作ったんよ〜」
「えっ、まろ買ってきちゃった、」
「買ってくると想定して あんま作ってないで大丈夫w」
ありがとな〜 そう言いながら彼は皿を持ってくる
それは俺が昔好きだと言った物ばかり
「美味しそおおっっっ」
かくいう俺も彼が好きと言っていた物ばかり買ってきているのだが。
「さて、呑むか!」
「おう!!!」
カシュッ、と音を立て酎ハイは飛沫を上げる
「かんぱーい!」
2人の声は幸せそうに重なり合った
それから数分
2人とも程よく酒に浸った頃
話も盛り上がり 笑いあっている頃
「あっ、酒無くなってもうた」
「え!まろのあげゆ!」
缶を振る彼に俺はすかさず声をかける
ちらりと彼の横を見ると 空いた缶は約3本
全部割と度数は低いから そこまで心配はしていない
「ほんま〜?」
でも ここで拒否しない所をみると酔っている事は間違いないが。
「じゃぁ、ちょーだい?」
両手を広げ 俺の方に手を伸ばす
「んー!」
カサカサと袋を漁る
「、!」
残っているのは 氷結と度数がだいぶ高いお酒
「……」
俺は迷わず 後方のお酒を手に取った
「どーうぞ!」
「ありがとう〜」
彼も何も疑わず缶を開ける
「んま!これ!」
「良かった〜!」
そうしてまた 俺らは話に花を咲かせた
、
そこからは何があったか覚えていない
ただ楽しかった事は記憶にある
今目の前には 完全に泥酔してしまった彼がいる「ん…ぅ」
眠たいのか目を擦って うとうとと酒を口に運ぶ
「あにき…?」
戸惑った、最初は。
あれ?さっきまで大丈夫だったのに。
でも酔っているのは間違いない、とりあえず今日はお開きにしなければ
「ほーらあにきー もう終わりだよー」
酒缶を奪い取ると
「あぁっ、やーだ!」
子供の様に駄々をこねる
「やーや!返してや まろ!」
伸ばした手俺は取られないように 缶を持つ手を上にあげる
「!」
彼はバランスを崩して 前に倒れこんだ
「うわぁっ」
「っ、」
必然的に前にいた俺も倒れる
軽い後頭部の衝撃と 唇に触れた柔らかい何か
恐る恐る目を開けると 驚いた顔をした彼が
文字通り目の前にいた
「…えっ、?」
俺は間抜けな声を出す
ぶわぁぁっと顔が熱くなるのを感じた
けど彼は 酔いが覚めないのかゆっくりと起き上がって
「んへへぇ…まろとちゅーしちゃったぁ」
頬に手を当てて 楽しそうに笑っている
「…あれ?まろ顔真っ赤ー!」
伸ばされた手に 咄嗟に身構える
その手は俺の頬を捉え 優しく摩った
「りんごみたいでかわいーなぁ」
引き寄せられた様に 彼は顔を近づける
頬にまた 柔らかい何かが触れて
「ん〜…ふふ、まろいい匂い」
ぎゅっ、と抱き着いて来た
小さな呼吸音が聞こえる
「…あにき?」
寝たかと そう思って声をかける
「…まろぉ」
よわよわしく返事が返ってきた
「あにき…ほら、1回離れて?」
「んん、、」
「お水飲んで、もう寝よ?」
少しいつもより甘い声で 彼にそう呼びかける
だけど彼は 唸るだけで動こうとはしない
「ほら〜…起きひんとぉ、」
どうしてやろう、少し考える
ふと先程の彼の顔が思い浮かんだ
まろとちゅーしちゃったぁ と 嬉しそうだった彼
もしかして…彼も…。
そんな期待 いつもだったら勘違いだろうって諦めていたけど
俺は何故かぼんやりと こんな事を口走った
「独身成人男性の俺に 襲われちゃうよ〜?」
ぴくりと彼は肩を揺らす
そうするとゆっくり離れた
やはり ただの勘違いだったか、なんて。
そりゃぁそうだよな、そう思って少し傷付いたなんて お酒の所為にしようと思ったその時
「…、、と?」
「…え?」
「、っほんと、?」
頬を赤らめ 俺の目を真っ直ぐ見据える彼。
「……………え?」
思わず俺は聞き返す
「っそ、その……襲うって、ほんま、、?」
期待が見え隠れする瞳の色
その色の濃さ 深さに酔って 俺は言葉が出ない。
はっとするように 彼は言葉を紡いだ
「う、嘘やんな!ごめん変なこと言って」
瞳を隠すように 目を伏せる
無意識にも 俺は彼を押し倒した
「へ、?」
驚いたような声を出す
「……嘘じゃないって言ったら……どうする?」
今度は俺が期待する番
突き飛ばしてくれたら 諦められるなぁ、なんて呑気に考えながら
「……」
彼は口を開いた
「お前に、年上の俺を満足させられるん?」
神美に微笑み 優しく誘う
言葉に乗せられた期待と煽り
答えはYESと捉えて間違いないだろう。
綺麗な肌にキスを落とす
彼の匂いが酒に染まってしまっているのが
唯一の残念だ。
本来の彼が良かったな、なんて思って。
「…」
焦らすようにキスをして また彼を見つめる
「、?」
とろんと嬉しそうな顔をする彼
俺は言葉を紡ぐ
「もう、逃がしてあげられないよ?」
いいの?俺は最後に聞く
これでNOでも きっと俺は引かないけど。
「…ここまで俺がやってきて、気付かんお前もそうとうやで、」
頬を赤く染めて そんな事を言うもんだから
俺は 意思が固まった。
肌を撫で 服に手を入れる
「、っ」
恥ずかしそうに 彼は目を背ける
俺はそっと 首筋に歯を立てた
ガリッ
「いっ、」
「って……まろ?!?!」
はっとした様に彼は声をあげる
「な、何が起こっ、、ちょっ、は、?!」
俺の手を見るなり これ以上無いほどに耳まで赤くなり 焦り散らかす
「あ、酔い冷めた?」
俺がそう言うと 彼は目を見開く
「よ、酔ってない!とりあえず手をどかせ!」
「えー?これはあにきがやれって言ったからやってるんよ?」
「は、ぁ?!」
ますます混乱して 彼は目をぐるぐるさせる
可愛くて、俺は手を少し動かした
「ひあっ、」
ぴくりと体を震わせる
可愛い、ただそう思って
続けたい、可愛い彼を堪能したい。
「っ、へ、へんたい!!」
若干涙目な彼
「さ、さわんなや、!」
「…ひどーい」
「なにがやねん、!」
「…あにきが悪いねんで?」
俺の事好いてくれてんねやろ?
確認したくて、意地悪にそう言うと
なんで、と彼は声を漏らす
「な、んで……知ってんねん、」
目を背け 今にも泣き出しそうな声
何故か俺まで 顔が熱い
「……俺は、あにきの事が好きだよ」
目を見つめ 彼にそう伝える
はくはく、と口を動かしたあと
「っお、れも……好きやけど、、」
語尾が、段々小さくなり 顔がまた赤くなる
「…かわい、」
「じゃぁもう…我慢しなくていいんだよね、」
君に好きだと伝える事も、
君に愛してると伝える事も、
君を独占する事も。
全部全部。
「、好きに、しろよ」
その代わり俺も嫉妬深いで なんて
「お望み通りに。」
俺は彼にもう一度
深く 甘く
ハジマリのキスを落とした。
コメント
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んふ、すっごい平和や そういうの好き テンプレって良いよね 酔って一線こえちゃうのもアリ だけど、ちゃんと酔い覚めてから ってのがまた、いいなあ 二人とも可愛いし、ちょい鈍感なの 見てとれるからいいわ 今回も神作ありがとう!!