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この学校には、多くの職業がある。
その中でも、依頼を受けて、調査するのは探偵だ。
そして、歩美たちがだんだん有名になり始めた六月ごろ、とある依頼が入ってきたのだ。
「何でも屋?」
「そーです。わ、私、Englandから去年、来て、日本語、あまり無理で……その、シゴト?を決めるの、difficult……難しい、でした。でも、そこで三年生のショチョウ?に拾う、されたんです」
客用の赤いソファに座っているのは、依頼人だ。二年生の外国人。
「つまり、去年から転校してきたんだけど、就活がうまくいってなかったところをその、所長って人に拾われたのね」
「そーです!!あ、My nameは、アイリス・アドラーです」
彼女は自分の胸に手を当てて言った。
「アイリーン・アドラーみたいな名前だね」
「まあ、いいんじゃない?綺麗な顔してるし」
「確かに」
「親、Holmesianで……」
アイリスのが恥ずかしがるように言ったセリフに紗季が訝し気な顔をした。
「ホームジアンって何?」
「シャーロックホームズの大ファンの人たちの事。アメリカや日本ではシャーロキアンと呼ばれることが多いんだけど、イギリスではホームジアンって呼ばれているんだよ」
「なるほど」
歩美が紗季に自慢げに教えたとき、アイリスが不思議な顔で、二人の方を見た。
「ここは、そう呼ぶ、じゃないんですか?」
「ここではイギリス英語より、アメリカの方が使われているから」
歩美が屈託のない顔で笑った時、アイリスは納得がいったように声を漏らした。
「Oh……やっとわかりました!!Englishのclass、すごく難しい。少ししか、分からないです。Americaの方が言い方、難しい」
歩美が納得するようにうんうんと頷く。そんな彼女を隣で見て、疑るような視線を向けた。
「アメリカ英語の方が慣れてるんじゃない?」
「いや、そうでもないんだよ。アメリカでは、野菜のトマトのマをメって発音するけど、イギリスでは日本と同じ。tの発音も同じで、アメリカは濁すけど、イギリスははっきり言うんだよ。letterとか、vitaminとかね」
「へえ。良く知ってる……」
紗季が納得したように言うと、アイリスが咳ばらいをした。
「その……頼みたいこと、ですが、私と所長に日本語、国語を教えてほしいです。所長は日本語話せても、国語無理で、私ひらがな読めても、漢字読めない。所長、Americanで英語できる、でも、私、英語無理。助手の人もイギリスだけど……その人昔から日本語出来る。だから教えてもらったけど、難しい。だから教えてほしいです」
決して流暢とは言えない彼女の日本語。ここから教えるとなると、骨が折れる。
「ああ、いいけど……そんなに一気に上達とまではいかないよ?」
「分かってる。一週間後の定期テスト教えてほしい」
「なるほど、一週間で、この期末テストの点数を取りたいのね。まあ、英語の方は文法が同じでしょうし。漢字の読み方だけなら何とかなるわ。日本語の文法をってると、まあ、どうなるかは分からないけど」
紗季は歩美の背中を叩いて、「じゃ、よろしく?」と言った。
「え!?紗季ちゃんもだよ!!」
歩美が驚いて肩を揺らした。
「だって私は、弟に勉強教える約束してるし」
「……」
歩美が不満そうな顔で、仕方ないというように、アイリスの依頼を引き受けた。
後日。
歩美はいつも投稿する一時間前に、学校に到着し、アイリスたちの居る部屋へ向かった。
いつにも増して浮かない表情だ。
ノックを三回すると、ドアを左にスライドさせた。
「こんにちは~」
中に入ると、綺麗な部屋で、19世紀イギリスの部屋のようだった。
「あ、あなたが歩美さん?」
「はい。そうです」
話しかけてきたのは、アッシュブロンドの髪色をした、二年生の男の子。
「こんにちは。俺は、アルバート・ワトソンです」
「へえ。ワトスンみたいな名前……」
歩美が彼の名前に感心していると、後ろから話しかけてきたのは、アッシュブラウンの髪色をした三年生の所長。
「ここの所長のアーサー・ホームズです。今日からよろしくお願いします」
「あ、ど、どうも」
歩美はもうわざとだろ、としか思えない、名前に少し驚いていたが、何事も無いように、普通にお辞儀をした。
所長の後ろには昨日のアイリスも居て、小さく会釈していた。
「では、皆さん、今までの答案用紙は持ってきましたか」
アーサーはもちろんというように、それぞれ三つのクリップでまとめられた答案用紙を渡してきた。
「……」
歩美は三人の点数を見て、これは……軽装備でエベレストに登るくらい難しい。そう思った。