「…る?…おる?…透!?」
「え…。」
マネージャーの声が聞こえたと思うと、目の前に声の主。
あたしがびっくりして眠い目を擦っていると、マネージャーは深く安堵したようなため息を付いた。
「まったく…死んだように眠るから、こっちは心配なのよ!」
「ごめんじゃん。それより、病院ついた?」
あたしが謝ると、またため息を付いて、あたしの質問に答えてくれる。
「ついたわよ。なんでわざわざ誕生日に呼び出すのかしらね。こっちも忙しいのに。」
「そうだね、今日くらいゆっくりしたかったのにな。」
あたしが適当に返すと、またマネージャーはため息をついて車を降りた。
4月4日。
それはあたしの誕生日。
ちょっと縁起が悪いけれど、あたしはこの日を気に入っている…わけではまったくない。
縁起が悪いのが当たったらしく、昔からあたしは持病を多く持って生まれてた。
生きているのが不思議なくらいな病気ももってて、いつもお医者さんには驚かれる。
「呼ばれたね。行こうか、透。」
いつもとは違った真面目なマネージャー。
あたしはうん、と頷いてから、マネージャーの後を追う。
「単刀直入に言います。透さん、今年死にます。 」
「は…っ?」
いちばん先に反応したのは、あたしじゃなくて、マネージャーだった。
静かな声で反応するマネージャーにあたしは驚いたけど、なんにも反応を示さないあたしを、マネージャーは驚いたようだ。
「ちょっ…え?透、驚かないの?」
「いつかは死ぬと思っていたので。今年中かぁ、早ければ明日ですもんね。」
淡々と言葉をつなぐあたしに、目の前のふたりは目をまんまるくしていた。
「え、えぇ…そうですけれど、透さん?」
「なんでしょう?」
「怖く…ないんですか。」
答えられなかった。
あたしは昔から愛嬌があるって言われてたんだ。
でも、お母さんとお父さんはあたしを愛くるしいなんて言わないで、ずっと大好きって言っていた。
病気かぁ…。
死にたいわけじゃない。
でも、生きたいわけじゃない。
だから、この1年…。
あたしは、ある決意をした。
「怖くないです。」
そう言えるために。
「人生…勝ち取ったもんがちですよね!」
いつもの明るい笑顔で。
「あたし、人生勝ち取ります!」
そう、宣言した。