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トキとの休日は一瞬で過ぎ去っていった。そして今日は平日、僕たち戦闘部隊が動く忙しい日々の始まりだ。僕は機械を発動させる。その機械は僕の命と共鳴する。僕の欲求を糧にして、僕に力を与える。そうして戦闘服に着替えていると、トキが着替え終わったのか僕に近づいてきた。


「兄さん、今日は××区で暴動が起きたみたいだよ。相手は人質を取ってるみたい、武器はナイフとか銃が主だね。」


トキはどんな時でも冷静で、状況を客観的に見て最善の行動をとることが出来る。僕はそんなトキを心の底から尊敬している。


「ありがとうトキ。じゃあ行こうか、今日は気分もいいし、天気もいい。こんな日にはさっさと仕事を終わらせよう。」


そう言って玄関のドアに手をかけようとした時、トキがいきなり僕を抱き上げてきた。


「ちょ!トキ?!」


「徒歩で行くよりこうした方が早いでしょ?」


トキは僕を抱き上げたまま上空に飛び上がった。人間の生の力を利用した精密機械、通称、コンセプター。これを上手く使うことで、人間を遥かに超えた力を得ることが出来る。例えば脚力だったり、腕力だったり、主に身体能力を強化できる。でも、これは各個人の欲求に比例する。どんな欲望を持ち、それを欲する欲望の深さ。欲望が深ければ深いほど、できることの幅は広がる。だから、頑張ればもしかしたらビームなんてものが打てちゃうかも…?なんて、それこそ余程の欲望を持った人か…いや、それはもはや悪魔とも言えるかもしれない。そうこうしているうちに××区に着くことが出来た。そこは争いの跡が絶えない、血にまみれた異臭が漂う、まさにこの世の地獄であった。そこを僕らはゆっくりと歩いていく。血の跡が続いている、銃で撃たれて深手負ったのだろうか?政府の人間が居ないのを見るに、相当激戦だったのだろう。どちらも深手を負って、冷戦状態…と。僕はそこら辺にあった拳銃を拾って、近くの遮蔽物に向かって発砲した。


「おい、出てこい。いるのは分かってるんだ。出てこないなら…」


「兄さん、後ろ!」


そうトキの声が聞こえたと同時に、後ろから血飛沫が舞った。醜い声を上げながら男が倒れる。


「ありがとう、トキ。トキは怪我してない?」


「大丈夫だよ、兄さん。後ろは任せて。 」


すると、トキはどこからかナイフを取りだした、いや、”創り出した”。コンセプターは変幻自在。欲の形が明確になればなるほど、そのイメージが具現化される。トキのナイフの刀身は、トキそのものを表すかのように青く光る。そして、そのナイフを男目掛けて刺突させた。


「っひ!なんだお前ら!まさか政府の人間の増援か?!こ、こっちに来るな!」


遮蔽物に隠れていたであろう男が、その手に拳銃のようなもをもって構えている。そのくせ殺意に混じって、この場から逃亡しようという意志を感じる。そして男が動き出す。それよりも先に僕は男の間合いに侵入する。胸ぐらをつかみあげ、顎の下に拳銃をあてがう。


「お前を殺しはしない。あの男のようになりたくなければ、この騒動を企てた首謀者のことを洗いざらい吐け。」


+++++++++++++++++++++++++++++++


その状況を見ていた僕は興奮を隠せずにいた。やっぱり兄さんはすごい!いつものあの愛らしい兄さんとは打って変わって、今は特有の圧迫感と恐怖でこの場を支配している。あの優しい兄さんが、今は末恐ろしい悪魔のようだ。兄さんは昔からふわふわしていて、周りの人からも一定の好感度を持つ、みんなのゆるふわ担当のはずなのに…!あぁ、カッコイイなぁ…。…そんな兄さんに、昨晩僕は…。いやいや、こんなことを考えている場合じゃない。今は目の前のことに集中しないと…。そんなしょうもない事を考えていた僕は、背後に迫るヤツに気が付かなかった。


「ッ!」


なんだこれは…全身が何かに縛られている?縛られた箇所から感覚が奪われていく。視界もぼやけてきた。これは…毒。全身に回るのが明らかに早い…!そんじょそこらの毒じゃないことは明確。口元が抑えられているのか声が出せない。もはや視界は黒く染まり、自分が何で縛られているのかさえ視認することが出来ない。今使えるのは、手首と聴覚のみ。聞き取れるのは、何やら粘性のあるものが触れ合うような、あまり聞いていて心地いいものでは無い音。それと、その音の中に誰かの声のようなものが混じって聞こえる。これは、兄さんだろうか?手前の音が大きくてよく聞き取れない。でも、聞いていて悪いものじゃな、い…。

そこで僕の意識は途切れた。


+++++++++++++++++++++++++++++++


油断した。今僕が胸ぐらをつかみあげている男は、とっくの昔に気絶しているようだった。その男を放り投げ、トキの方へ視線を向ける。そこには、肉塊のようなものがトキを巻き付けていた。それを見て確信した。この男たちはブラフ、本命はトキに巻き付くあの肉塊だ。事前に来た情報の”人質がいる”というのは 全くの嘘の情報。僕たちの行動に制限をかけることが多方の目的だろう。僕たちは、人質がいることで下手に動くことが出来ない。その行動の慎重さが裏目に出たようだ。そしてもうひとつ分かることは、


“僕らの中に嘘の情報を流した裏切り者、スパイが紛れ込んでいるということ_”

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