「それより映山紅さん、学校は?」
「無断早退してきた」
「早く学校に戻りなよ! 僕と学校のどっちが大切だと思ってるのさ?」
「夏梅に決まってる」
間髪入れずにそう言われるとさすがにうれしい。
「学校なんてたかだか三年間の居場所。夏梅とは死ぬまでの長いつきあいになる。比べるまでもない」
死ぬまでのつきあいって、僕と結婚するつもりなのだろうか? それを聞いてもちろんだという回答が返ってきたらリアクションに困るからそれ以上は尋ねない。
「でも風邪を移したら嫌だから」
「キスしようか。ボクに移して治るなら移せばいい」
「移したって治らない。病人が増えるだけだよ」
「キスしたかっただけなのに。正論言って楽しいか」
そのとき彼女のスマホがけたたましく鳴った。
「お父さん? 今忙しいんだけど。――無断でいなくなったと学校から電話があった? 非常事態だから仕方ないじゃない!――夏梅が高熱を出して寝込んでるの!――夏梅に無理やり来いと言われた? ボクが自分の意思で来たんだよ。――夏梅を殺す? やれるものならやってみろ!」
煽ってどうする? 殺されるのは僕なんだけど……
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