太宰 side𝔻
中也 sideℕ
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「それじゃあ、認めてくれる?」
そう彼奴が云った。
そう云えばそんな約束もしたものだ。
俺はそう感傷に浸りながら答えた。
「莫ぁ迦。んなもんで認めれるわけねぇっつーの」
当たり前だ。
唯入手困難の代物を手渡されただけじゃ今後人生を左右されるかも知れない付き合いを決めるわけにはいかない。
でも其の返答は太宰にとって予想外だったらしい。
「何で!?」
「是結構入手不可だったんだよ!?」
そんな事は痛い程知っている。
マフィア五大幹部の俺ですら入手困難だったのだから。
「あのなぁ…入手困難な物を差し出されただけで、今後の人生左右されるかも知れねぇ大切な恋人を決めると思うか?」
「それに手前は少し重すぎるんだよ。」
そう伝えると太宰は少し拍子抜けしたような顔をした。
「…重いの?私?」
無自覚だったらしい。なお悪趣味だ。
「無自覚かよ…」
途端に本音が出てしまった。
「じゃあ中也はどう云うプロポーズの仕方が良い訳?」
どう云うって云われても。
俺はどちらかと云うと告る側だし、告られるなんて想像もしていなかったから。
どれがいいかなんて毛程もわからねぇ。
……
て云うかそもそも。
俺は何で大嫌いな筈の此奴に告られるのを嫌悪してないんだ…?
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『それに手前は少し重すぎるんだよ。』
先程中也に云われた言葉だ。
あの後、中也とは少し話をしてから解散した。
まだ少し中也と居たいと云う気持ちもあったが、考える時間も欲しかったからだ。
私は夜の歩道を歩き、度々誘ってくるガールズバーへの勧誘を断りながら、何時もの探偵社の寮へ辿り着いた。
だが、其処から向かったのは自室では無く。
探偵社オフィスだ。
何か考え事をするのにはオフィスがピッタリだからね。
取手を持ち、そっと扉を開く。
中には誰も居ない。
辺りはシィンとしていて人の気1つない。
時刻は午前2時。
こんな時間にオフィスに入る阿呆なんて居ないだろう。
まぁ、そんな阿呆は私なのだけれど。
オフィスに入って自分の作業机に腰を降ろす。
腰を降ろした瞬間にどっと疲れが押し寄せてきた。
其ンなに気張っていた気はなかったのだが無意識の内に気が張っていたらしい。
私は頭の中で中也に云われた言葉をもう一度復唱する。
『それに手前は少し重すぎるんだよ』
初めて云われた言葉だった。
今迄相手をしてきた女の子達にはそんな事一言も云われなかった。
逆に贈呈品が高いものであればある程頬を赤らめて喜んでいたものだ。
だから其れが普通なのだと思っていた…
でも中也には違った様だ。
あれが重いとなれば何が重くないのだろうか?
ねっくれす?指輪?高級ホテルのディナー券?
其れとも何か中也だけの特注品だろうか?
付き合ってない現時点では之が妥当なのだろうか?
そうこう考えているうちに朝を知らせるチャイムが鳴った。
時刻は午前6時。
嗚呼…もうこんな時間。
私はオフィスの扉をそっと閉め、自室へと向かった。
…マフィア時代にはこんな事を考えたりなんてしなかっただろう。
無理矢理中也に迫り、どんな手を使ってでも中也を堕とそうとしたに違いない。
其れだけ今の私は中也を愛しているのだ。
私の隣の部屋は国木田くん。
彼は未だ寝ているが、あと30分もすれば起床し、自身の手帳の通りに動き出す。
それまで何をしておこうか。
でもだからと云って早く出社する心算もない。
「ん〜、どうしようか」
そんな事を思っていると
コンコン
扉をそう叩く音がした。
朝が早いのに、一体誰だ。
そんなことを思いながら扉を開く。
「はぁい、こんな朝に何方様?」
するとそこに立っていたのは敦くんだった。
「あ、お早うございます太宰さん」
何故敦くんが此処に?
そんなことを思っていると敦くんが口を開いた。
「太宰さんにお客様です」
「お客様?」
太宰さんに、と云う事は勿論私のお客様と云う事だろう。
でも今迄一度も私にお客様なんてきたことないし、あったのは私に付き纏ってくる執拗いメンヘラ女性の手紙だけだ。
私は当然、お客様とやらの存在に困惑してしまった。
「そのお客様って云うのは誰なんだい」
「あ”〜、それが」
「?」
「その方には太宰さんにはまだ云うなと云ってまして…」
何だ、それは。
お客様の癖に私に正体を明かさないのか。
それとも唯の恥ずかしがり屋なのか。
朝早かった私は少しイラッときてしまった。
「はぁ…分かった。玄関に居るのかい」
「はい」
「ん…じゃあ行ってくる」
私はそう云いながら靴を履いて部屋を出る。
「お客様は太宰さんが良く知ってる人ですよ」
敦くんがすれ違い様にそんな事を云ってきた。
私が良く知っている人?
森さん?安吾?姐さん?
それとも…
私は最後に予想した人物が立っている事に期待を持ち、玄関まで走った。
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敦が太宰を呼びに行ってから10分
「大丈夫か…?一寸遅せぇな」
何故俺が此処に居るのかと云うと
太宰を映画に誘いに来たからだ。
今朝重いって云ってしまい、少し反省したから。
流石に認めて貰おうと努力してる奴に「重い」は云い過ぎたと俺も思ってる。
だから償いとして、デェトって訳では無いが映画の誘いに来たのだ。
暫く待っていると向こう側からドタドタと慌しく走ってくる音がした。
やっとお出ましだ。
「ち、中也!」
太宰のクソ鯖が珍しく息を切らして走ってきた。
「応。今先刻振り」
「な、え、如何したの?こんな朝早くにっ」
太宰は俺が来て嬉しいのが隠し切れないのか顔が笑顔1色に染まっていた。
「映画、誘いに来た」
「今朝は重いなんて云っちまって悪かったな」
太宰は少しポカンとして
「はぁぁぁぁ…」
深い溜息をした。
厭だったのだろうか。それなら申し訳ない。
「厭だったなら」
「厭じゃない!!」
謝ろうとした瞬間に太宰にそう遮られた。
あまりにも元気が過ぎる。
「厭なんかじゃないよ!安心したのだよ!」
「もしかするともう関わるなって云われるのかと思って…」
杞憂だったけれどそう云いながら太宰は俺を見て笑った。
(へぇ…此奴こんな表情出来んのか)
太宰は凄く笑顔で、何か愛くるしいものを見るかのような目で俺を見てきた。
「映画…だったよね。行くよ一寸待ってて」
太宰は何かウキウキしながら部屋に戻って行った。
「変なやつ…」
ポロリと口から出てしまった。それと同時に笑みも。
それから数分経ってから太宰がいつもの何着持っているのか分からない仕事着では無く、珍しいシュッとした格好でやってきた。
あまりの綺麗さに圧倒されそうになったが意識をなんとか保ち、言葉を出した。
「へぇ?手前にしては良い格好してんじゃねぇか」
俺がそう褒めると太宰は少し顔を赫くして
「へへ…君に褒められると嬉しいな」
なんて言いやがった。
そのせいで頭に血が上ったのか、俺の顔は瞬く間に熱くなった。
顔が赤面した。
「さあ、行こうか中也」
「お、おう。」
俺は何とか彼奴に顔を見せずに歩き出した。
俺の顔が赫くなってるのは苛立ちのせい。
苛立ち。苛立ちのせいだ。
決して太宰の事を
カッコイイと思った訳ではない。
コメント
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今回も頑張りました!! 13ぐらいから1000いいねまでやりましたぁー!︎︎👍🏻 続き楽しみにしてます✨ 頑張ってくださいねー
NEXT→♡1000 遅くなってしまい申し訳ないです💦