TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

_数十分後_

さっき幻覚を最初にかけられていたふわっちが目を覚ます。

『 …んぁ、?…あ、もちさんにガっくん!はょざいま〜! 』

起き上がったふわっちは、さっきみたいなピリピリした雰囲気はなく、いつも通りのふわふわしていて、不破くんらしい雰囲気を纏っていた。

僕に酷いことをした記憶、ましてやさっき大泣きしていた記憶が無くなっているかのような立ち振る舞いをふわっちはしてみせた。

『 …?どうしたんすか、そんな神秘な顔をして 』

「 それを言うなら神妙ね。…いやそれどころじゃないんだよふわっち!? 」

『 ぁえ、どゆことッスか? 』

『 …ふわっち、刀也さんにしたこととか、さっきの出来事覚えてない? 』

ガっくんがそう単刀直入に聞く。

『 ぇ〜…いやぁ〜…覚えてない〜….というか…なんかここ最近の記憶?が無い〜…というか….? 』

『 なんか、収録とか配信とかはぼんやり覚えてるんすけど…その後の記憶が全く無くてぇ…』

ここ最近の記憶が無い?ガっくんの幻覚が効きすぎてしまったか、或いはガっくんがふわっちに強く幻覚をかけすぎてしまったか…?

だけどショックで記憶が消えるとはいえ、前の出来事くらいはちょっとでも覚えてるはず、そんな曖昧な事ってある??

『 …これぇ〜…まずいよ…刀也さん… 』

「 …え? 」

ガッくんがそう言い出す。顔は青ざめており、冷や汗が流れている。

『 多分…加賀美さんや晴くんに聞いてもふわっちと同じような返答が帰ってくる。 』

「 …それの何処がまずいの? 」

『 率直に言うと…最近入ってきた新人マネージャーの子、…人間じゃない。 』

『 人間の形をした神様…或いは___ 』

そう言いかけた瞬間、楽屋のドアが開く。

『 すみません〜っ、ちょっと御手洗が長引いてしまいましたっ、、、! 』

新人マネージャーが来る。こちら側としては来てくれるのは好都合。…….な筈だった。

『 !ゆいちゃ〜んっ! 』

ふわっちが目の色を変えて新人マネージャーに飛び付く。自分のデカさを理解していない大型犬のようにほっぺにすりすりと顔を擦りつけ甘えている。

『 ゎわわっ、不破さんっ、w…..それに伏見さんに…!!……剣持さん、か。 』

僕の方を見れば落胆したような、残念そうな顔になる。

『 ぁはは〜…w 』

苦笑いしながら2人を見つめるガッくん。その目は怒りを含んでいた。新人マネージャーに対する明らかな怒り。

『 オレぇ…マネージャーさんに用があってきたんですけどぉ… 』

『 …私に…ですか? 』

ガッくんが用がある、とマネージャーさんに話しかけると、犬を待て、するようにふわっちを軽くあしらう。ガッくんに向けてあざとく首を傾げて、ガッくんに上目遣いをして近付いていく。

『 そのぉ…別の部屋で話したいなって思ってるんスけど… 』

『 ふふ、全然!私と話しましょう! 』

ニコリと笑みを浮かべてガッくんの腕を取る。ガッくんも新人マネージャーに向けて笑みをしかえした。

そのまま2人は部屋を出ていく。

あのマネージャーの笑みは、ガッくんの復讐に気が付いている上での笑みなのか、僕を貶める為の道具が増えると喜んでの笑みなのか、なにも知らない、ただガっくんと話せて嬉しい笑みなのか…僕には分からない。

『 …な、なんや今の… 』

「 …どうしたの?ふわっち… 」

マネージャーとガっくんが部屋から出ていったのを見送っていると、隣で呆然と立っているふわっちがいた。

『 いや、なんか、急に身体が勝手に… 』

「 え、無意識だったんですか?さっきの… 」

『 や、…まぁ、…なんか既視感めっちゃあっていやや~… 』

マネージャーが離れた瞬間、いつものふわっちに戻ったどころか、記憶もある。

これも全てガっくんの幻覚の効果…?

『 ん゛~…ふゎ~ぁ… 』

『 あ、甲斐田。 』

『 ぉはようございます…てか僕なんでこんなとこで寝てたんだろ… 』

『 なんでお前が分かってないん?? 』

『 僕も知りたいですって… 』


…。


いつも通りの会話を繰り広げるアニコブ。本当に記憶が無いのか…。

社長を試しに起こしてみるか…。

「 お〜い、社長~? 」

社長の身体をゆさゆさと揺らし、声をかけて起こそうと試みる。

『 …ん、…?剣持さん…? 』

ぱちくりと瞬きをして、ゆっくりと身体を起こす。

『 …な~…んか違和感が… 』

肩を回したり、手を握ったり開いたりを繰り返したりして、リハビリ?というものをしているのだろうか。

…とりあえず、これで皆起き上がって…、元に戻っ…たのかな…。

でも…なんか…。


「 …。 」


『 っちょ、アニキ!? 』

『 にゃははw 』

『 あ、お二人共何してるんですか!?!? 』

普通。

「 …。 」

普通。

『 もう…事務所なんですから少しは慎んでくださいよ… 』

『 僕は悪くない…!!! 』

呆気なく普通。

『 俺も悪くないぞ~。 』

『 いや不破さん!? 』

僕は今更何を求めているのだろうか?記憶がない彼らに。


謝罪?

償い?

弁明?


いいや、そんなものは全て煩わしい。今の僕にとって全て無駄なもの。

みんなが戻ってくれて嬉しいはずなのに。

何故か心のモヤが無くならない。なんなら…もっと酷く、濃く。心を蝕んでいく。

ダメだ。ダメだダメだダメだ。

溢れ出る負の感情。そこから繋がる抑えられない虚空。

ダメだと分かっているのに…。

僕を保て!!!!!!”剣持刀也”を保つんだ!!!!!!!

嫌われる。巻き込んではダメ。嫌われたくない。嫌だ。収まってくれ。

冷や汗が頬をつたる。

虚空は母なる大地だ。虚空は全てを受け入れてくれる。虚空は何も無い。そんな虚空が好きなのだ。


虚空は素晴らしいのだ。


虚空の魅力をもっと知るべきだ。


僕は無意識のうちに3人の方へと手を伸ばしていた。


さぁ、素晴らしい虚空へ。





_伏見視点_

『 …それでぇ…伏見さんがやりたい事、分かってますよ? 』

別部屋に移動した瞬間、ドア側に立ち、ニコリと上目遣いをしながらそう言う。

「 …ぇっ、? 」

俺が何かを言おうとするのを許さないように、間髪入れずにしゃべり続ける。

『 お狐様にはワタシの正体、バレバレだったか、やっぱり。 』

『 でも、ワタシのしたい、あの小僧にしたいことはできたの。 』

『 彼は新しい世界を作ってくれる。 』

新しい…世界?

…まずい、…ッ!!!!!!!

「 …それって…つまり…ッ!? 」

『 さァ、祓いなさい。狐の神よ。祓うのです。このワタシを。 』

新人マネージャーは人の形からどんどん人ならざるものになっていく。

ここまでは俺の予想通りだった。

ここ“までは。

この神、…..いや、邪神とでも言うべきだろうか。コイツはただ加賀美さん達を刀也さんを陥れる為に利用したわけじゃない。

刀也さんの精神状態を弱らせる為だけじゃなく、刀也さんの中にある負の感情を最大限に引き出し、抑えきれなくなったその核心部にある”虚空“を暴発させる為。

『 ホラ、いいのか?そんなことをしてる間にもあの小僧はどんどんこの世界を蝕んでいくぞ… 』

かといってコイツを祓う訳には行かない。祓ったら”完成“してしまう。

「 くッッ…そぉっ、!!卑怯な真似してくれるなぁ゛本当にィッ゛っ!! 」

コイツを祓ったらスピード勝負。

『 さァ、さぁさァサァ。ワタシを楽しませておくれ。狐の神よ。 』

「 ッうるさい゛ッ!!! 」

感情に任せて術をそいつに向けてぶっぱなした。

これでコイツは消えたのだ。後は刀也さんを止めるだけ…ッ!!!!!!!

念の為に札をペシりと貼り付け、刀也さんがいた部屋へと走って向かった。

僕の存在価値 "完結"

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

724

コメント

3

ユーザー
ユーザー
ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚