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クリスマス












「メリークリスマス!」


そう言いながら元気にリビングの扉を開け放つ


部屋には大きなクリスマスツリーが飾っており、ツリーの飾り付けまで完璧だった


外は雪が降り続いており、誰も外には出ようとはしなかった


「本当に朝から元気な人ですね」


軽いため息をつきながら紗知にそう言われては自分の声が大きすぎた事に気づく


「でもでも!せっかくのクリスマスなんだよ!」


クリスマス、その言葉を聞くだけで幼い子供かのようにテンションが上がる


今日だけは仕事も依頼も何もかも忘れて楽しむ


「…黒美、せっかくだし一緒に食材でも買いに行くか?」


少し悩むような様子を見せてから怜はそう告げた


見た目はどんなに冷静沈着な怜でも中身は幼い少年のようにクリスマスを楽しむつもりだった


「え!行こいこ!」


そう言っては雪が降り積もる中、2人は必要最低限のものだけを持ち外へと飛び出してしまった




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


黒美 × 怜



黒美 side


「ぁ~も~…寒…」


そう言いながら手を擦り、街中を歩く


大きな商店街の中はたくさんの人で賑わっている


ここの商店街は数少ない他人類と人類が共存しあえる場所だ


大きなケーキに大きな鶏肉、クリスマスの夜の主役たちが並んでいる


手がかじかんでいるのを誤魔化しながらたくさんの料理たちに目が引かれる


「ねぇ、あれ買ってみない?」


そう言って指さすその指先は赤くなっていた


「その前にこれつけとけ」


その言葉と同時に手袋を外し、怜はこちらに渡してくる


表情こそ分からないものの渡し方がとても不器用な渡し方で少し戸惑ってしまった


「ぇ…ありがと…」


正直に感謝を伝えるのは慣れていないためかその言葉は徐々に小さくなリ目を逸らす


遠くもなく、近くもない、絶妙な距離感で隣を歩く


そしてそのまま王道であるケーキや鶏肉、ローストビーフをどんどんと買い続ける


食材を買いに来たつもりがいつの間にか定番料理を大量に買ってしまった


「ぁ、これ食べたい!」


そう言って指さしたのは可愛らしい花の飾り付けがされた小さなケーキだった


「は?もうケーキは買ってるだろ」


小さなケーキの前に、もう一つちょうど四人前ほどのケーキを既に買っていた


「デザートは別腹だし?」


その小さなケーキは2人前ほどの大きさに見え、怜が何かを言っているのを無視しては購入した


どうやら最後の1つだったようだ


両手には大量のエコバックを持っており、るんるんの気分で帰路を辿っていると隣から声が聞こえてきた


「俺が持つ」


短くそう言っては怜は半ば強引にこちらの荷物を持ってくれる


全ての荷物を持つその姿はとても優しい影があった


「いや、流石にそれは悪いって」


「いつものお礼ってやつだ、このぐらいやらせろ」


意地でもこちらに荷物を持たせる気はないようだ


でも、いつもの馬鹿みたいな作業量のせいか荷物を持ってくれるという些細な気遣いは本当に嬉しかった



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



怜 side



急な提案を受け入れてくれたのは良かったがこんなに黒美がはしゃぐとは思わなかった


隣を楽しそうに歩く黒美になんだか自分の子供連れているような感覚に陥った


だがそんな感覚も黒美の声で消された


「ぁ~も~…寒…」


そう小さく呟く黒美の指を見ると軽く赤くなっており、自身の手袋を貸してやろうかと少し迷っていると夜狐花が貸してやれと言わんような顔でこちらを見てくる


そうこうしているうちに黒美が笑顔で「ねぇ、あれ買ってみない?」と勢いよくこちらを向きショーケースを指を指す


その反動で赤色の可愛らしいマフラーについている鈴が揺れ、黒美の口から吐き出された息が白く染まってすぐに消えてしまった


そして今にも走り出しそうという黒美の腕を握る


その腕は驚くほど冷たく、そしてほんの少しだけ赤く染まっていた


ろくな防寒対策もしないでこんな所に来るからこうなる


小さくため息を吐いては、自身の黒の手袋を渡してやる


少しオーバーサイズな手袋をつけている姿を見ては小さな声で感謝を告げる黒美に少しだけ頬が緩んだ


いつも皆の中心でどんな状況でも的確な判断を下し場合によれば個人での相談も常に乗る


そんな黒美が幼い子供かのように今日ははしゃいでいる


「ぁ、これ食べたい!」


小さな可愛らしい花の飾り付けがされているちょうど2人前ほどのケーキだった


先程ケーキなら買ったため疑問には思ったが「デザートは別腹」というお決まりのセリフを言われてしまえば何も言い返す事は出来なかった


恐らく紗知と二人で食べるのだろう


気がつくと黒美の両手には大量のエコバックが握られていた


気を使うのは慣れておらず、苦手だ


だがどうもここで躊躇うのは違う気がして言葉よりも手が先に動いた


「俺が持つ」


そう言っては強引に黒美からの荷物を奪い取り両手でバランス良く持つ


「いや、流石にそれは悪いって」


少し驚いたような顔をしながらこちらから荷物を取り返そうとする黒美に「このぐらいやらせろ」と言っては丁度良い距離感で歩き続けた


赤いマフラーの裏で荷物を持たせてくれない黒美が幼い子供のよう頬を膨らませて拗ねていた事を知っていたがあえて黙り、隣を歩いた




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


紗知×アズ



紗知side


クリスマス、そんな単語は少しだけだが心が踊った


だが今は怜も黒美も外出しており、アズと2人だ


よりによってアズと2人…あまり嬉しくない


「アズは今日、どう過ごすつもりで?」


静まり返った空気を引き裂くかのように言葉を発する


すると返ってきた反応は意外なものだった


「俺さ、クリスマスってまともに過ごすの初めてかも」


年は16、クリスマスを過ごしていないはずはない


「誕生日などは?」


そう聞く自分が不思議だった、心配でも疑問でもなくただ気になっただけだと自分で言い聞かせた


「…ぃや、悪りぃ、変なこと言った」


そう言うアズはどこか寂しげな雰囲気を纏っており、少しだけ心を揺さぶるものがあった


軽いため息をつき食器棚からマグカップを2つ取り、飲み物を注ぐ


毎日過ごしていると自然に好きな飲み物も覚える


アズのマグカップには暖かいココアを入れてやり、自分のマグカップには悩んだ末、結局同じココアを入れた


それをアズの目の前に出してやっては自分も彼の目の前へと座る


アズは一瞬目を丸くし、こちらを見たたかと思うとすぐに目線を戻した


「お前…甘い物苦手なんじゃねぇのか?」


「たまには飲んでもいいと思いまして」


そう言って口につけた暖かいココアは酷く甘く、どうしても口には合わなかった


だが彼と飲んでいると心做しか心はその甘さも忘れてしまいそうになった


「…紗知はクリスマスとかなんか貰ってたのか?」


少し迷う素振りを見せたかと思えばそう口を開く


特別な思い出で何かを貰ったのかと言われればあるのはあるが今それを彼の前で正直に言うのはどうかと思ってしまった


なので慎重に言葉を選び彼に伝える


「私はこのような日が特別だとは思っていません」


アズがマグカップの中に入っているココアから目を離し、こちらを見る


「ですが、昔は家族が何かしらを用意してくれていましたね」


淡々と事実を述べるようにそう言っては、それ以上の説明はしない


自分にとっての精一杯の気遣いだ


楽しかった、嬉しかった、なんて子供のような感情は何も出さない


そんな感情を出せばこの良くも悪くもない空気感が壊れてしまうような気がして仕方がなかった


「…そうかよ」


どこかぶっきらぼうで重みのある返事だった


アズの返事が心のどこかで引っかかるような感覚に陥ってしまう


そんな空気感に耐えられずに「それでは」と一言告げては自身の部屋へと戻ってしまった


「まだクリスマスを楽しんでもいい年…」


アズの歳は16だ、まだ十分に特別な日を楽しんでいいはず


そう思っては部屋の隅から裁縫道具に、布地、金属糸、特殊繊維、そして細かだが先程適当に書いた設計図を広げる


人のために何かをするなど過去の自分からしたら考えられなかった


だが今の自分は誰に頼まれた訳でもなく、人のために一つのものを作ろうとしている


これは今後の任務を効率的にするためなんて自分に言い聞かせながら作業を進めた



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



アズside



今日はクリスマスだ


と言っても何をしたら良いのかがあまり分からない


小さい時はもしかしたらクリスマスプレゼントを貰っていたのかもしれないが今はその記憶すらなく、嬉しかった、楽しかったなどの記憶がなかった


小さくため息をつくと同時に後ろに髪を束ねた紗知がこちらは見ずに夕食の準備をしながら一つの問いを問いかけてきた


その問いかけにどう答えたら良いかわからず、脳内に出てきた単語を素直に並べる


「俺さ、クリスマスってまともに過ごすの初めてかも」


そう言うと紗知の包丁を持つ手が一瞬止まったような気がした


「誕生日などは?」


そこにはただの疑問だけだった


だがどうもその質問が自分にとっては重苦しく思わず紗知から目を逸らしてしまった


「…ぃや、悪りぃ、変なこと言った 」


そんな事を言ってはその場を切り抜け、そのままのノリでこんな重苦しい雰囲気から抜け出そうとしていると


紗知がため息をついているのが微かに聞こえた


何か不味い事言ったか?


なんて不安に思っては紗知の手を目で追う


紗知は左目がほとんど見えていないと話では聞いたがそうとは思えないほど手先は器用で何でも完璧にこなす


そんなことを思っているとマグカップを2つほど食器棚から取り出す姿が見えた


それに何の違和感も覚えずに、自室に戻ろうと立ち上がろうとするとあまりにも近くでマグカップの中でぶつかる軽い音が聞こえたもので思わず顔を机の方へと向けた


するとそこには紗知が椅子に腰をかけており、マグカップをこちらから取りやすい位置に置いてくれていた


「これ、俺飲んでもいいのか?」


「無理して飲む必要はありませんが」


そう言われては紗知のマグカップに目をやると、普段ブラックコーヒーしか紗知が甘ったるいココアを飲んでいて目を丸くしてしまった


それと同時に、紗知が自分に飲み物を用意してくれるなんて普段では有り得ない事だった


なんとかその同様を隠そうと言葉を繋ぐ


「…紗知はクリスマスとかなんか貰ってたのか?」


その後はただ淡々とした言葉を並べられたがただ何かを貰っていたという出来事があることすら少し羨ましかった


今更そんな文句を言っても誰も聞いてくれはしないと思いわざと口には出さずにただ返事を返す


だがどうもそれが自分でさえ冷たく聞こえ、言葉を発した後に後悔してしまった


「それでは」


紗知はそう告げてリビングを後にしてしまった


「またやっちまったな…」


深くため息をつき、自分の発言を改める


人と喋るのはいつになっても苦手だ




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



黒美side




「ただいま~!」


勢いよく扉を開け放ち、雪が少しかかった靴を雑に脱ぐ


部屋を見渡すと、スマホに目をやったままのアズが小さく「おかえり」と言ってくれる


それに対し、少し頬が緩み怜が持ってくれていた荷物を受け取り「ありがと」と大人しく告げた


そのまま手を洗い、机に買ってきたクリスマスの主役たちを並べる


どれもこれも美味しそうな匂いが鼻に通ってくる


だがそれと同時に部屋を見渡すと、一人いない


どうせまたアズが余計な事を言ったんだろうとあまり気には止めずに「先に食べといて」と伝え、紗知の部屋へと足を運ぶ


紗知の部屋の扉を三回ほどノックをすると少し遅れて返事がやってきた


ゆっくりと扉を開けると設計図を平げたままこちらを向いている紗知がいた


「もうご飯の時間、食べよ」


そう告げると紗知は素直に立ち上がる


それと同時に机の上に平げていた設計図に目をやる


手袋…?


指先が出ている手袋、所謂オープンフィンガーグローブと言われるようなものだった


形はどこかアズがいつもつけているものに似ていた


アズは自分の能力が不安定なのを分かっているためそれを制御しようとしているのか度々自作している姿を見てきていた


「ふーん、アズのため?」


「いえ違います、これは今後の任務を効率的にするためのものです」


ほぼ即答だった


だが、口ではそういうものの本人は心のどこかではアズのためを思っているのだろう


昔とは随分変わったものだ


そう内心驚きと喜びが浮かび上がり笑みがこぼれるがそれを隠すよう再度夕飯へと誘った


それからは色々と早かった


皆でたわいもない会話を楽しみ、怜がデザートだけを先に食べようとしたり、アズが飲み物を零したり、それを何も言わずに紗知が片付けたり


ゲームをして、罰ゲームを楽しんで、自分はほぼ酒を飲んでいるだけだったような気がする


紗知もいつもよりかは表情豊かにこの少ない時間を楽しんでいたような気がした


「ぇ、もうこんな時間?」


あまりの楽しさに時間を忘れていたのか久々に時計に目をやると時刻は23時を回っていた


「そろそろお開きかな…」


そう言っては皆なんやかんやで楽しかったのかその時を惜しむように片付けを手伝ってくれた


片付けが終わり、自室へと皆が戻っていく


そして怜が自室へ戻ろうとするのを唯一呼び止めた


「これ、食べよ?」


そう言うと怜の手は一瞬だけ止まったような気がしたが特に気にとめずにもう綺麗に片付けられた机の上に花の飾り付けがされた小さなケーキを置き、椅子へと腰をかける


「紗知と食べるんじゃないのか?」


「別に誰と食べようが私の勝手でしょ?」


「それもそうかもな」と小さく笑う怜に釣られて笑みがこぼれた


やがて面の外れる音が聞こえたかと思えば面で少し乱れていた髪が綺麗に落ち、夜狐花が今はもう既に寝ているため青く澄み切った瞳が真っ直ぐにこちらを捉えていた


「見て、可愛くないこれ?」


そう言ってはオレンジと黄色の綺麗な造花を指さす


それに対して適当に声を返す怜を見ては包丁をケーキを入れ、皿へと分ける


互いにケーキを口に運んではそれぞれの感想を述べる


そんな会話もどこか楽しく感じ、またすぐに怜が口を開いた


「黒美は今日…楽しかったか?」


いつもとなんら変わらない様子でケーキを食べる手は止めずに聞いてきた


「うん、もちろん楽しかったよ?」


「そうか、ならまたこんな日も作るか」


そこまで言うと怜はまるで少年のような笑みで笑いとても楽しそうだった


たまにはこんな日もいいのかもしれない




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




紗知side



「ようやく出来た…」


黒美が一度部屋へ来たときは少し驚いたがこれでアズに渡す事ができる


血液の干渉量などを全て計算して作り上げたものだ


余計な説明は必要ない、必要最低限の言葉だけ伝えて渡せばいい、これはこれからの任務を効率的にするために作り上げたもの


そう自分の心の中で何度も繰り返しアズの部屋の扉を三回ほどノックする


返事はないが扉を開ける


すると扉から差し込んでくる光に気づいたのかアズはゆっくりと体を起こした


どうやらもう既に寝ていたみたいだ


「起こしてしまい申し訳ありません、良かったら受け取ってください」


そう言っては白の小さな箱を差し出す


アズは目を丸くして箱を受け取った


「これ…開けていいのか?」


首を傾げるアズに静かに頷く


アズはまるで幼い子供のように目を輝かせる


まるで初めてプレゼントを貰ったかのように


その姿に妙に心が締め付けられる感覚を覚えた


そしてその箱の中身である手袋を見てはアズはゆっくりとはめた


「これ…凄い使いやすそうだな 」

何度か手を開いたり閉じたりを繰り返しそう告げた

「それなら良かったです、今後の任務で役立ててください」

淡々と告げては部屋を後にしようとする

だがそれをアズが引き止めた

「なんです?」

「…これ、俺から…」


そう言って渡してきたのは雑に梱包された箱だった 


戸惑っていると更にそこにアズが声を重ねた


「要らねぇなら受けとんなくていい」


「…いえ、貰っておきます」


そう言ってはそれを受け取り部屋を後にした


部屋を出る瞬間にアズが小さくありがとうと発したのをわざと聞いていないふりをした


自室へと戻りアズから貰った雑な梱包の箱を開ける

 

中には白く綺麗なマフラーだった


とても可愛らしく、好きな色だ


「…意外とセンスありますね」


昔の自分なら人からものを受け取るなど絶対に有り得なかった


「たまにはこんな日もいいですね」


久しぶり人から貰ったそのマフラーは体も心も温まるようなぬくもりを持ったマフラーだった















ここまで読んでくださりありがとうございました🫶

皆さんも良いクリスマスをお過ごしください🫶

今回は7159文字でした!!

それでは!

この作品はいかがでしたか?

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