この作品はいかがでしたか?
20
この作品はいかがでしたか?
20
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
︎
「あ、えと…」
手伝いといっても、なにをすればいいのかサッパリ分からない。
その場に突っ立っていると、洗い物をしている少年の母親から声をかけられる。
「ところでアンタ」
「は、はい…」
「名前はなんて言うんだい?」
「あ、えと…星乃…です」
「ホシノォ?…随分変わった名前だねぇ…まあ、いいさ。とりあえずこのお盆運んでおくれ。」
「あ、はい…」
なんだかよく分からないまま、仕事を任されてしまった。
お酒のグラスがたくさん置かれたお盆をもって厨房を出ていく。
歩いているだけで、次々とお酒がとられてゆく。
いいのかな…これ。お代とか…
「さぁ、さぁ皆さんご注目!
吟遊詩人の詩の時間だ!コインは多めにご準備を!」
声の方を振り返ると、あの少年だ。
正直、驚いた。
彼があんな大声を出すような人には見えなかったからだ。
空になったお盆を持って厨房へと歩く。
後ろからは彼の歌声。少し懐かしくて暖かい…
でも賑やかな曲調はどこか惹かれるものがあった。
昔話でも語っているんだろうか…
「す、すごいですね…息子さん」
勇気を出して、少年の母に話しかけてみた。
「だろぉ?うちのリボルトは、将来吟遊詩人になるのさ!
世界中を飛び回って語るんだってよ」
「へ、へぇ…」
それは…素敵な夢。
「さ、次はこれだよ!」
「は、はい!」
次から次へと運ばれてくる料理の数々、目が回るほどの大仕事だった。
閉店の時間には、すっかり疲れ切っていた。
☾
閉店時間を過ぎると、さっきまで賑やかだったはずの酒場も
夜の静けさを取り戻す。
「お疲れ様。ごめんね…急に頼んじゃって…」
「大丈夫…です」
ギリギリ聞こえるほどの声量で答えた。
「…僕、リボルト。」
「ぇ…」
「自己紹介…まだだったね…」
「…ホシノ…」
「ホシノ…?変わった名前…
じゃあ、改めてよろしくね。ホシノ」
そう言って微笑むと、彼女も…ホシノも少し笑ったような気がした。
☾
夕食を食べた後は、ベットに入って寝る支度をした。
ちょうど僕の部屋には空いてるベットがあったから、そこを貸す。
「ホシノ…君はさ、どこから来たの?」
ベットに腰掛け、ホシノに尋ねる。
「…トウキョウ…」
「…トウキョウって、どこにあるの?きっと別の国なんだろ?」
「多分…」
そう言って困ったように笑った。
「ニホン…」
「に…ほん…?聞いたことないな…。御伽の森の向こう側?
そこなら僕、行ったことないんだ。」
「……」
さらに困ったような顔をするホシノ。
どうやら違うらしい。
「御伽の森はわかるだろう?」
此処ではだいぶ有名な森だ。
世界中どこを探してもその森を知らないものはいない。
「おとぎの…森?」
まさか…知らない…?
「じゃ、じゃあ君よっぽど遠い所から来たんだね…」
「多分…気づいたら…此処に」
「気づいたら…?」
「はい…さっきまで…家のベットにいたはずなのに…」
「??」