男は満足げに笑い、席を立った。
男の口元には弧が浮かんでいる。
会場は後半の商品に移り、男は湧く会場に戻ることはなく、外に出た。
出口に立っていた男に商品を購入したことを伝える。
その男に案内をさせようと話しているとその男を押しのけ、さっきの司会の男が駆けてきた。
??「む?さっきの…」
司会「えぇ、えぇ!」
??「仕事はいいのか?」
司会「えぇ!交代してきましたから!今回は100億も出して商品を落札していただき、誠にありがとうございます!」
司会「あの商品の受け渡しをお叶いますので、どうぞ、こちらへ!」
男は無言で頷く。
司会の男は、「ささ、こちらへ!」とニコニコと笑みを浮かべながら後ろをついてくるように促す。
コツリ、と足音が響く。
2人分の足音。
買われた”商品”は、どのような心境だろうか。
己を買った人間に対しての希望?
それとも、怒りだろうか。
または、絶望。
本当の心境は本人にしかわからない。
コツリ、と足音が最後に響き、視線を向けた先には、感情の読めぬ目をした、”商品”がいる。
長い前髪で隠れた瞳は、何を映すのか。
楽しそうに口元に弧を描く男か
”商品”が高値で売れて心底満足そうな司会の男か
はたまた、自身の絶望的な未来か
一目で見て取れるのは、何も映らぬ、ただの虚空であった。
??「最初の命令だ。この男を」
「殺せ」
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