「お前が寺の金を盗んだんだろ!!」
「だから、俺じゃねぇって言ってんだろ!」
いつものように床掃除を終え、俺は少し休憩をする為に居間で休んでいた
悲鳴嶼さんは町へ用事があるとかで留守の為今いるのは数人の子供達と俺だけだ
少し仮眠を取ろうかと瞼を閉じた瞬間、障子が勢いよく開いた
驚いて目を向けると、そこには怒りの感情を浮かべる子供達がいた
そして、周りより体格の大きい男子が俺の胸倉を掴み立ち上がらせた
何事かと聞けば、寺の金が無くなっており、俺が金を盗んだと疑われていた
そんな事ある訳がない。第一、金を盗んで一体どこで暮らせば良い?
盗んだとして俺になんのメリットがある?
しかし、俺がいくら弁明しようと全く聞き耳を持ってはくれなかった
挙げ句の果てには、寺を追い出された
そこで俺は悟った。
嵌められた。完全に
元々あまり良い目では見られていなかったのは分かっていた
しかし、まさかこんな手を使ってくるとは思わなかった
俺は仕方なしに、その辺りを彷徨いた
やがて、空腹に限界が来て道端で座り込んだ
俺はここで死ぬ、いやだ。まだ死にたくない
死の気配を感じた瞬間、俺の前に木刀を腰に差した女が現れた
女はじっと俺を見つめ、軽く問答を交わした後に握り飯をくれた
怪しさより食欲が勝り、俺は握り飯に齧り付いた
女はそんな俺を見つめながら隣に座り、何故こんなところで座り込んでいるのかと聞いてきた
最初は話さないつもりだったが、何故か、この女になら話しても良いかもしれないと思い
事の顛末を話した
女はしばらく考える素振りを見せると、俺の口端に手を伸ばしご飯粒を取った
“お前、私と一緒に来るか?”
俺は目の前の女に驚きを隠せずにいた
こんな得体の知れないガキを、ただでさえ旅というのは危険と隣り合わせだというのに
子供というだけで、足手纏いなのに
俺はその疑問を女にぶつけると、細かい事は気にすんなと誤魔化された
女は俺の前に立ち上がり、手を差し伸べた
この手を取れば、俺は死なずに済む
そして、本当の幸せというのを手に入れられるかもしれない
そんな予感を感じ、俺は女の手を取った
______
「さて、まずは浅草に行くついでにお前の笠を買いに行かねぇとな」
私はチビ獪岳と手を繋ぎながら、近くの町を目指していた
金は奏んとこで手伝いの小遣いとして貰っていた為、それなりに余裕はある
「っし、町に着いたらお前の笠買って、あとは甘味でも食いに行くか」
「まだ食うのかよ、さっき握り飯食ったつってただろ」
「糖尿病予備軍舐めんなよー。定期的に糖分摂取しねぇと禁断症状出んだよ」
呆れる獪岳を横目に、私は欠伸を一つ溢した
さて、甘味食った後は宿でも探すか、
流石に9歳の子供に野宿はキツいし、何より私が児童虐待で捕まりそう
そんな事を考えているうちに、町へと辿り着いた
しかし、何やら活気がない
どこの店を見ても閉まっており、人々も私達を怯えるような目で見てくる
「なんだぁ?季節外れの肝試しでもすんのか?」
「いや、どう考えても違うだろ。しかも今冬だし」
「冬でも肝試しするかもしれないだろー?」
私は辺りを見回し、どこの店も閉まってはいるが人はぽつりぽつりといる
「とにかく、まずは事情聴取でもすっか。じゃねぇとあんみつ食えなさそうだし」
「結局それが目的かよ!いい加減甘味から離れろ!」
「うっせぇな、こちとら糖分切れて本調子じゃねぇの。分かったら大人しくしとけ」
「いや、なんもわかんねぇよ、」
私は獪岳を連れて近くにいた婦人に話を聞く事にし、足を運んだ
「おーい。ちょっと話聞いて良いか?」
「、?」
婦人は私達の方へ振り向き、しばらくじっと見つめると、いきなり泣き始めた
「鬼狩り様!?鬼狩り様ですね!?」
「「!?」」
なんのこっちゃと困惑していると、いきなり婦人が私に抱きつき始めた
「ちょ、一回落ち着けって!獪岳!コイツ離すの手伝え!」
「お、おう!」
その後なんとか婦人を離すことには成功し、私達は婦人の家へと招かれた
「、んで、一体この町で何があったんだ?」
出された抹茶を喉に運び、私は女性に問いかけた
獪岳はというと、私の膝元で大人しくお菓子を食べている
「数ヶ月前まで、この町は温泉が有名な観光地だったんです。」
婦人の話を要約すると
ある日突然、夜中に若い男が消えるという事件が発生したという
その次の日、また次の日と行方不明者は増え
必ず消えるのは若い男だという
そして最近では、若い娘や子供が消えているという
「、それで、この町の連中は怖くて外に出歩けねぇって事か」
「はい、このままじゃ私達、」
婦人は膝の上に置いた握り拳を強く握り、俯いた
十中八九鬼の仕業だとは思うが、私には今、日輪刀がない
つまり、鬼を倒すという事が不可能だという事
鬼殺隊にもこの噂が伝わっているはず、ならば、
「、なぁ奥さんよ。」
「、?」
私は出された団子を咀嚼し、飲み込んだ後
ニマァと口角を上げ婦人と視線を合わせた
「その行方不明事件ってやつ、私が解決してやっても良いぜ」
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