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あまね🍡💠
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十五年前――。
能力の薬が発表されてから数か月。
能力社会の是非を問う公開討論会が開かれていた。
会場には多くの報道陣や市民が集まっている。
壇上には二人の人物が立っていた。
一人は能力の薬を開発した男――
イコル・ヤーレン博士。
そしてもう一人は――
ZERO代表、蓬莱良樹。
会場は静まり返る。
司会者が口を開いた。
「それでは討論会を始めます。」
-–
最初に話し始めたのは博士だった。
「能力は、人類の可能性を広げます。」
「医療。」
「災害救助。」
「産業。」
「あらゆる分野で、人々の生活は豊かになるでしょう。」
会場から拍手が起こる。
博士は続ける。
「能力に善悪はありません。」
「それを善にも悪にもするのは、人間です。」
再び大きな拍手が響いた。
-–
司会者は蓬莱へ視線を向ける。
「ZERO代表、蓬莱さん。」
蓬莱は静かに立ち上がる。
「まず、お伝えしたいことがあります。」
「私たちZEROは、能力そのものを否定しているわけではありません。」
会場が少しざわつく。
「能力は素晴らしい可能性を秘めています。」
「だからこそ。」
「慎重であるべきなんです。」
蓬莱は真っ直ぐ博士を見る。
「安全性は本当に十分なのでしょうか。」
「社会への影響は。」
「能力を持つ人と持たない人の格差は。」
「私たちは、まだ検証が足りないと考えています。」
会場は静まり返った。
-–
博士はゆっくり頷いた。
「確かに。」
「未来を完全に予測することはできません。」
「ですが。」
「進歩を止めることも、人類にとっては大きな損失です。」
蓬莱は穏やかに微笑む。
「私も進歩を否定するつもりはありません。」
「ただ。」
「急ぎ過ぎてはいけない。」
「それだけです。」
-–
会場から一人の女性が手を挙げた。
詩織だった。
司会者が頷く。
「どうぞ。」
詩織は立ち上がる。
「博士。」
「もし能力が原因で差別や犯罪が増えたら。」
「その責任は、誰が取るのでしょうか。」
会場が静まり返る。
博士は少し考え、静かに答えた。
「責任は、私一人では負えません。」
「能力は道具です。」
「それをどう使うかは、人類全体の問題です。」
詩織は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
-–
蓬莱が再び口を開く。
「博士。」
「あなたのお考えは理解できます。」
「ですが。」
「人は決して完璧ではありません。」
「怒り。」
「嫉妬。」
「欲望。」
「誰もが心の中に抱えています。」
会場全体が蓬莱の言葉へ耳を傾ける。
「だからこそ怖い。」
「能力は、その弱さを何倍にもしてしまう。」
「私は、それを恐れています。」
博士も蓬莱を真っ直ぐ見つめる。
「だから私は教育が必要だと思っています。」
「能力だけではなく。」
「能力を持つ人間を育てることが。」
「これからの時代には必要です。」
蓬莱は静かに微笑んだ。
「その考えには賛成です。」
二人の視線が交わる。
そこには敵意ではなく、互いへの敬意があった。
-–
討論会は終了した。
司会者が最後の質問を投げ掛ける。
「皆さんは。」
「能力社会について、どう思われますか。」
会場に拍手が響く。
博士への拍手は大きい。
蓬莱への拍手も起こる。
しかし数は明らかに少なかった。
詩織は少し悔しそうな表情を浮かべる。
「蓬莱さん……。」
「悔しくありませんか。」
蓬莱は優しく笑った。
「いいんです。」
「今は少数派でも。」
「十年後。」
「二十年後。」
「『あの時、蓬莱の言う通りだった。』」
「そう思われない未来になることが、一番なんです。」
詩織はその言葉に静かに頷いた。
-–
討論会終了後。
会場の警備を終えた義一が蓬莱へ歩み寄る。
「蓬莱さん。」
蓬莱が振り返る。
「今日はありがとうございました。」
義一は笑顔で頭を下げる。
「お二人とも、とても立派な討論でした。」
蓬莱は照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます。」
義一は少し間を置いて続けた。
「もしよろしければ。」
「今度、研究所をご案内しましょうか。」
「実際に博士がどんな環境で研究されているのか、ご覧になれば、また新しい考えが生まれるかもしれません。」
蓬莱は少し驚いた表情を見せた。
そして穏やかに微笑む。
「ぜひ、お願いします。」
その隣で詩織も小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。」
義一は笑顔で頷く。
「こちらこそ。」
この出会いが――。
後に四人の運命を、大きく動かしていくことになる。
第57話へ続く
コメント
1件
うわああああ第56話、めっちゃ重厚でエモかった……!!😭✨ 博士と蓬莱さんの討論、敵対じゃなくて互いに敬意を払い合ってるところが尊すぎる。「能力に善悪はない」と「人の弱さを増幅させる怖さ」、どっちの意見も正しくて胸が苦しくなったよ…。蓬莱さんの「今は少数派でも、いつか『あの時言う通りだった』と思われない未来が一番」って台詞、優しすぎて泣く。詩織ちゃんの悔しそうな顔も切ないなあ。 そして義一さんの研究所案内の申し出が、四人の運命を動かす伏線って…! もう続きが気になりすぎて授業中に思い出しそう(笑)次回も楽しみにしてるよ、鳳蓮荘さん!🌸💕