俺、尊は、誰にも言えない秘密がある。
尊「あっ!和希!」
笑顔で手を振り返してくれる、俺の幼馴染。
俺の秘密。それは、男に恋心を抱いてることだ。
朝のホームルーム前。俺の机はたくさんの友達に囲まれていた。俺は周りから見れば、俗に言う「陽キャ」に分類されるらしい。
友達も少なくはないし、否定はしないが、、、
尊(和希は何しているんだろう?)
和希はいつも、教室の隅で本を読んでいる。もちろん悪いことではないのだけど、ちょっぴり寂しい。
尊「おーい!和希ー!」
和希「? なーにー?」
本に栞を挟んで、和希がこっちに寄ってきた。何だかいつもに比べて、元気がないように見える。
尊「和希?どーした?」
和希「ふぇっ!?あー、うん。大丈夫。」
さっと顔を覗き込むと、和希は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。必死に隠しているのが、何だか面白い。
でも、和希は変わった。
昔は、よく一緒に遊んで笑い合っていたが、ある日を境に、和希はなかなか「本当の笑顔」を見せてくれなくなった。ゲームだのスマホだの言ってるけど、きっと疲れてるんだろうな。
いつも見るのは、愛想笑い。心の底から笑ってないことくらい、顔を見ればわかる。
和希「尊の方こそ、今日元気なくないか?」
和希が聞いてきた。
尊「あ、わかっちゃう?だって今日持久走だろー、、、俺体力ねーし、毎年めんどいだよな、、、」
俺の声に反応した生徒数名が、顔を真っ青にして、 奇声を上げてぶっ倒れた。
キーンコーンカーンコーン
ホームルームのチャイムが鳴った。生徒が席につくと同時に、大柄な体育教師が教室に入ってきた。
教師「えー、みなさん知っていると思いますが、今日は持久走のテストがあります。10分後に始めるのでグラウンドに出て、各自準備運動を始めてください」
教師の声に、生徒はみんな死んだ目をしていた。
俺も嫌だけど、行かなきゃいけねーしな。
尊「よし!和希、行くぞ!」
ジャージを手にした和希と一緒に、俺は教室を出た。
、、、やっぱり和希の元気がない。何かできないのか、でも俺が何かする必要はあるのか、でも和希の支えになりたい、、、
そんなことを考えているうちに、俺は和希の右手を握った。
尊「和希?」
和希「ん?いや、何でもないよ。」
尊「そう?ならいいんだけど」
握った手のひらが熱い。
どこか苦しげな瞳。俺がその顔をいつか輝きで満たすことが出来ますように。
コメント
1件
いいね100で続き出します!