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和希「疲れたぁぁ、、、」
体育のテストが終わって、今は10分休み。テストの結果は、尊が18位、並走していた俺が19位だった。クラスの人数が40人弱なので丁度真ん中くらいだ。
そんなことを思いながら、体力を使い果たし、寝ていた俺の前に、スポーツドリンクのペットボトルが置かれた。
尊「お疲れ様っ!ほら!差し入れ!」
その隣では、満面の笑みの尊が座っていた。
和希「おう、さんきゅ!」
ボトルのキャップを開けて、スポドリを勢いよく飲んだ。そんな俺を見て、尊がくすりと笑って言った。
尊「なあ和希。今日お前の家行って良い?」
和希「、、、! 何で?」
尊「いやー?なんか。久々に行きたいなーって」
まったく、尊はいつもこうだ。自由奔放でやりたいように過ごす。でも俺は、予期せぬラッキーに胸を躍らせた。
和希「ふーん。まぁ行けると思うよ。」
尊「よっしゃ!さんきゅ!和希!」
キラキラした顔で笑う尊。楽しそうな笑顔を見ていると、何だか俺も嬉しくなってくるようだった。
和希「ただいまー」
尊「お邪魔しまーす」
俺の声に合わせて家に入ってくる尊。こんなの何年ぶりだろうか。
母「おかえりー!尊も来たんか!いらっしゃーい!」
尊「お母さん!お久しぶりっす!相変わらずお綺麗ですね!まだまだ現役というか、いつ見ても昔と変わらないというか、街中で見たら————」
始まった。尊のお世辞大会。うちに来るといつもこうだ。何だか無性に腹が立って、俺は尊の手を引いた。
尊「うおっ」
和希「部屋にいるから。なんかあったら呼んで。」
そうとだけ言って、半ば無理矢理に尊を部屋に連れて行った。
連れてきたは良いものの、別にすることが決まっているわけではない。2人することなく布団に寝転がり、くだらない話をして笑った。
午後6時ごろ、尊が帰ろうとしていると、尊のポケットの携帯が、大きな音を立ててなった。
尊「悪い、母親だ。」
尊は嫌そうな顔をしながら電話に出た。
尊「うん、うん、、、はっ!?」
急に声を荒げた尊は、電話を切り、困ったような顔で笑った。
尊「俺の親、今から友達と飲み会だと。鍵持ってねーし、どうせあいつも帰ってくんの12時回るだろ、、、」
イライラしたような口調で頭を掻く尊に、ちょうど部屋まで来ていたお母さんが言った。
お母さん「なら尊、せっかくだし泊まっていく?」
お母さんが言った何気ない言葉に、俺は色んな意味で血の気が引いた。
尊「まじで!ありがとうございます!」
それから俺たちは、飯食って、ゲームして、風呂、、、は流石に別々に入った。尊は不満げだったが、一緒に入ったら俺が理性を保てるか危ういところだった。
お母さん「あんたたちー!もう11時だからねー!早く寝なさいよー!
2階から親の大声が響いてくる。こういう時は、さっさと寝た方がいいに決まっている。
和希「はーい!っと、じゃあ寝るか。」
尊「へへっ。なんか修学旅行みたいだな。」
いつものように、見慣れたイタズラっぽい顔をして尊が笑った。
部屋の電気を消して、尊は布団、俺はベッドに潜り込んだ。
数十分後
寝つきの悪い俺は、なかなか眠りにつけずにいた。 尊は気持ちよさそうな顔で、寝息を立てていた。
和希(綺麗な寝顔だな、、、)
このままいてもなかなか寝られない。俺はこっそり、尊の布団に体を忍ばせた。
顔と顔が近い。息がかかる。自分の顔が熱を帯びているのが自分でもわかる。こんな距離で理性を保て、という方が難しいに決まっている。
和希(少しだけ、、、ほんの少しだけ、、、)
頭の中でずっと繰り返しながら、俺は尊の頬に唇を近づけて——我に返った。
和希(っ!あっぶねえ、、、)
顔を真っ赤にしながらいそいそとベットに戻ろうとすると、腕のあたりをぐっと掴まれた。
尊「何だよ。してくれねーの?」
俺は心臓が止まるかと思った。
和希「ばっ—、起きてるなら言えよっ!」
ニヤニヤと笑う尊に腹が立つ。
尊「いやー、面白いなーと思って? それで、話したいことがあるんだろ?」
俺の心臓が大きく音を立てた。尊は相手の顔をよく見ている。ダメだとわかっていても、自分の気持ちに歯止めが効かなかった。
和希「、、、俺。尊のことが、、、」
言いかけて止まった。
和希「やっぱりいい。寝る。」
尊「ちょっと!待てよ——。」
その後の尊の声は聞こえなかった。
いつもは全然寝れないくせに、今日その日に限っては、意識が沈むように眠った。