コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ちいちゃんっ!!!」
気づけば私は音楽室を飛び出していた。同級生が私の名前を呼ぶが私はそれを無視して今は全力で走っていた。途中で呼吸が苦しくなり目の前にあった部屋に入っていった。
「はぁ…はぁ…💦」
呼吸を整えたところで周りを見渡すといくつもの棚に本が並べられていた。図書館に来ていた。私の足音に気づいて心配している司書の小山さんの目線が私に向くが、無視して無理やり呼吸を落ち着かせ落ち着くと脱力したように床にしゃがみ込んだ。気がつけば私は泣いていた。瞳から出た涙が頬を通じて制服のリボンを湿らせた。声をあげて泣きなくなかったので何とか堪えようとして、ポケットに入っていたお気に入りのピンク色のお花の刺繍がされているハンカチを取り出し涙で視界がぼやけている目元と濡れた頬を乱暴に拭いた。
どうしよう…。私逃げちゃった…。
みんなに迷惑かけたよね…。あとで謝らないと。でも戻りたくないな…。
みんな私を呼び止めてくれたけど、無視しちゃったし…。しばらく落ち着いてから戻ろうと思い、深呼吸した瞬間…。
「ちいちゃん!!!」
突然背後から私を呼ぶ声が聞こえた。でも振り返らなくても分かっていた。この落ち着いている声、そして私に近づいた時に、優しいフローラルシャンプーの香り、静華だ。
「はぁはぁ、良かった!見つかってよかった。ちいちゃん!」
再度私の背中にいた彼女は今度は私の顔が見えやすい位置に座り声をかけ続けた。
「ちいちゃん、大丈夫?また嫌になっちゃった?」
私は顔を上げることが出来なかった。涙でぐちゃぐちゃな顔を見られたくなかったからだ。
私の友達大山静華はロングヘアでお洒落な焦げ茶の眼鏡をかけており、毎日ご飯を食べているのか疑うくらいスタイルが細い。そして、彼女は学校内では成績上位で入学式では新入生代表として彼女が選ばれていたため、入学式式後は彼女のもとに多くの生徒が集まっていたのを見た。彼女とは高校に入ってから同じ吹奏楽部に入っていたことで知り合い仲良くなった。しかし楽器は私がクラリネット、静華がユーフォニアムで静華はユーフォニアムパートの中でとても上手くてコンクールや定期演奏会前でソロを決めるオーディションでは学年関係なく選出され、静華が毎年ソロを勝ち取るほどだ。
「もう、、嫌だよ、、クラなんかできない!!」
酷く落ち込んでいた。
「出来るところだけ吹けばいいんだよ!確かに部長の指摘が厳しかったのかもしれないけど。」
私の体を擦りながら彼女は言った。
「一旦ここを出よう。図書館だからあまりうるさくしてると注意されそうだから。」
図書館司書の小山さんが私たちの様子を見て休んだら?と言われたが彼女は大丈夫ですとだけ言って私が立ったのを見ると口の動きで行くよと伝え図書館を後にした。
図書館を出ると戻ってこなくて心配だったのか3年の先輩が様子を見に来ていた。
「南さん、大山さんも一緒だったのね。」
「望月先輩、先ほどはご迷惑をおかけしてすみません💦」私は謝罪の気持ちを込めて深く頭を下げた。
「いいのいいの。私の指導が厳しかったかもね。それに時間も限られてたから急かしちゃったのもあるね。ごめんね。」
「いえいえ。」
「望月先輩、もう合奏始まってますか?」静華が聞いた。
「うん、顧問も来たし。ただ、2人が居なくなっちゃったからしばらくはみんな音楽室で自主練してるよ。」望月先輩はそう言って静かに微笑んだ。
「先輩、私戻れないです。戻りたくないです。またみんなに迷惑をかけるかもしれなくて」私は気づけば涙目になりながら言っていた。
先輩は一瞬驚いたがすぐに穏やかな笑顔で私の肩に手を置いて言った。
「じゃあ、別室で練習しようか。あそうそう静華ちゃん、音楽室で先生に南さんが別室で練習するって伝えてくれる。多分先生自主練にしてくれると思うから。南さんはまだ合奏に戻れそうにないと思うから。」
「わかりました。」静華は私と視線を合わせたあと駆け足で音楽室へと向かった。
「じゃあ移動しようか。」
「はい……あ!!」
突然大声を出した私に先輩は少しだけ驚いた様子でこちらを向いた。
「どうしよう……楽器とか譜面台とか全部音楽室だ……あーどうしよう!!」音楽室に私の楽器や譜面台を置いたままにしていることに気づきその場でうずくまってしまい頭を抱えた。
「じゃあ私が音楽室に取りに行くよ。」
「え?いいんですか!?」
「いいよいいよ。先に教室行ってな!」
「分かりました!ありがとうございます。」私は先輩に何度も頭を下げた。
先輩に指示された教室は校舎の三階にある空き教室。元々はアニメ研究部が使っていたそうだが、昨年部員の少なさの限界で廃部という決断に至ったという。その後アニメ研究部が使っていた教室はスライドドアの窓からのぞけばカーテンは閉まっており電気は消えているのでそりゃ誰も入らないわけだ。
先輩が来るまで空き教室で待つことにした。スライドドアを開け中に入ると湿った空気が鼻腔刺激した。その上ダンボールやら機材があちこちで積み上がっているせいで埃っぽい匂いもする。私は換気をしようと窓を開けた瞬間、ガラッと扉が開く音が聞こえた。音の方に視線を向けると私のクラリネットと譜面台を手に持った先輩が入ってきた。と先輩が中に入るに訝しげな表情を浮かべ
「あれ、ここの部屋湿気やばいじゃん。あ、窓開けてくれたんだね!ありがとう。」と私に向かって微笑んだ。
先輩は2人分の椅子を出したあと手でこっちにおいでと合図した。
先輩は私が椅子に座ったのを確認すると真剣な眼差しでこう言った。
「気になってたんだけどね、なんで合奏のチューニングの時に抜け出しちゃったの?」
「話が少し長くなるんですけど、それでもいいですか?」先輩は静かに頷いた。
私はひとつ深呼吸をした。
そして先輩と視線を合わせて言った。
続きは2話で!!