テラーノベル
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黒木夫人が寺にやって来た。
山富士は普段通り出迎え、コーヒーを出した。
珍しく夫人の目が据わっており、何かに怒っていた。「どうしたんですか?」「どうもこうも
無いわ…。死んだ黒木が残した家に住んでるんだけど、手広く事業やってたじゃ無い?抵当に入っていて差し押さえになったのよ!」あまり良くわからない山富士とフルタはピンと来て居ない。「事業資金の融資を借り入れた時に担保をつけるのよ。何年も借金の返済が滞ると差し押さえなんですって。」「でもご主人の御長男が継いだんでしょう?」「そう。アイツは知っていてあたくしが住んでるのを放置して、耳に入れなかったのよ。あたくしの家についた担保の分なんか支払う気持ちなんか無いのよ!」「暫くここに置いてくださら無い?前みたいに掃除やなんかやるから。」
山富士は内心(いい気味だ)と思ったが、次に(資金難はこっちにも実入りが無いって事?)と今更気付いた。特に断る訳にもいかず「まあお世話にもなりましたし、好きなだけ居てください。」と世間並みの事を言った。そう言えばいつも土産持ちの夫人が今日は何も持って来ない。山富士は(早速切り詰めにかかったんだわ)と相変わらずの変わり身が速い夫人に感心した。
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saza
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水羽
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コメント
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第70話、読みました。 黒木夫人がまさかの展開で寺に転がり込んできて、山富士さんの内心の「いい気味だ」→「資金難か」という切り替えの速さに、ちょっと笑っちゃいました。現実的な人だなあ。 何より、いつも土産を持ってくる夫人が今日は手ぶら、という細かい描写に「あ、本気のピンチなんだな」とじわじわ伝わってくるところが好きです。人間って、いざとなると変わるものなんですね。ほっこりというか、じんわり沁みるエピソードでした。