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『故郷に』
そう夢を見て研究をまた続ける。氷に覆われたここで私はひとり、いつからだったろうか寂しいなんて思わなくもなった。
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『まて、この者は盗賊とは決まってはいない、証拠なんぞありはしないではないか』
誰がこんな俺の事を庇うのか、こんな俺になんの得がある?こんな嫌われ者になんの用がある?
人目見れば俺が盗賊である可能性など見いだせるであろうにこんな俺を助ける愚か者。
意識が遠のく、聞こえた声は幻聴だと心に言い聞かせて死を覚悟した。
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
『う、ん?』
パチッ
重い瞼を開けた。そこはみしらぬ天井だった。
『目が覚めたか?』
『お、まえは』
『名乗る必要なんてないとは思うな』
訳の分からぬ事を言われるが考える余裕もなかった。
辺りをチラチラとみるだけでその他は動くことも不可能に近かった。
『お前はPhantom、この星1の盗賊だな』
『Phantomと呼ばれてるかは知らないがそうだ』
喋ることが少しづつできるようになりはっきりと言えるようになった。
『頼みたいことがある』
『依頼か?この状態で?』
『違う』
『?』
依頼ではない頼み、なんだと言うのか分かりもしなく返答を待つのみだった。
『盗賊の集団がある。そこのリーダーになってくれ』
『は?』
『依頼も入りやすい』
デメリットといえば何も無いかもだが正直単独で行動できる方がいいとも捉えられる。
だがメリットは”面白くなりそう”というところだけあった。
『俺にしかメリットがないと……?』
『ああ、そのはずだ』
この星での散策も大分やってきた。小さなこの星で全てを回ることは難しくとも色々なところで盗みをしてきたと思う。
正直抜け出したい、そう思いを馳せるも意味は無い船だってないのだから。
『俺がリーダーでいいのか?』
『この星での1番はお前だ。』
『意味がわからない』
『分かった。1度試せばいい』
“試す”この言葉の意味が分からず混乱する。
換気のためといまさっき開けられた窓からは風が入り込み俺の結ばれた髪をゆらゆらと揺らした。
『た、試す?』
『気に入れば正式なリーダーとなればいい』
『ちょっ、待て!』
『ああ、名乗り忘れたな』
『考えておいてくれ、決意が固まったらそこの髪に書いてある場所へな』
名前を言うと嫘は去っていった。
greedy Liar、強欲な嘘つきということだろう。嫘の呼ばれ名はそうらしい。
確かにメリットは多くある。だから言ってみるのもありだとは思った。
『いったた、これが完治したら行ってみるのもありか』
そう独り言を漏らす。このくらいの傷ならすぐ治るであろう。前の暮らしよりはいい物、それを求めていたはずなのに……
この傷も酷いものだな、と空を見上げ思った。