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ngsu
口調完全把握しておりません
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『もしもーし?颯馬起きてる?』
『起きてる。風呂から出たとこだ』
『そっかー!まだしばらく帰れそうにないや』
『…そうか』
『あっ、今ちょっと寂しいって思ったでしょ』
『……正直、寂しい』
『そうだね、俺も寂しい!』
カフェを始め早1年。仕事を覚えるだけで手一杯で忙しい日々を送っていたが、やっと最近になり余裕が出てきた。そういう生活を始めて半年が過ぎようとしていた。
『今日は県外研修だったから今ビジホ』
「大変だなそっちも」
『颯馬もね』
今回は俺だけ帰宅した。こういうことも少なくない。そもそも残業やらで、一緒に過ごせる時間は限られてる。
『明日は?』
「休み。そっちは?」
『残念だけど午後から』
会えるのはどうやら先になりそうだ。その後も他愛もない会話をしばらくして「おやすみ」と通話を切る。この瞬間があまり好きではなかった。終了ボタンを押した瞬間にしんっと静寂の帳が降りる。ずっと一緒にいたのだ。手を伸ばせば触れられる距離にいた。だからこうして何週間も一人で過ごすのは正直まだ慣れない。カフェでは仕事モードに脳が切り替わっているから平気なのに。
会いたい。
不意に襲ってくる寂しさは胸に穴を開けてしまい、空白に蓋をするようにスマホを握りしめた。
寂しくて、会いたくて、足りなくて。そんな感情で自分がこんなにも弱くなるなんて思ってもみなかった。あと一週間で渚も帰ってくる。希望を目の前に下げもう寝てしまおうと寝室へ行く。家くらいは一緒に寝ようと大きめのベッドを買ったけれど結局二人よりも一人で眠る回数の方が今は多い。
「渚、また脱ぎ散らかして…」
シーツの上に散らばったシャツや靴下を見て前回慌てて支度をしたのだろうと予想がついた。カフェから距離があるため時折寝坊することがあった。そういうときには大抵服が犠牲になっている。まあ自分も人に言えるほどしっかりしていないんだが。
白のスエットを拾うとふわりと微かに鼻を何か掠めた。これはもしかして。服を抱いたままベッドにポスっと横になる。もう一度顔を近づけると、やっぱり渚の匂いがした。小さな彼を抱きしめているような、そんな疑似体験。いつも彼が俺を包んでくれているから、なかなかない貴重な経験だ。
渚は今ごろどうしているだろう。もう寝ただろうか。それともまだ起きてテレビでも見ているのか。いっぱ話したいことがある。仕事のこと、昨日食べたご飯のこと。向こうの話も聞きたい。どんな場所に行って、どんなものを食べて、どんな風に過ごしているのだろう。電話だけじゃ足りない。帰ってきたら真っ先に抱きしめて、一緒に御飯をたべて、風呂に入って。それから-
「…ぁ」
先の期待で自分のそこが僅かに反応してしまった。見ないふりをしてそのまま無理やり眠ってしまっても良かったが、寂しさもあってか今日はなんだかしたい気分だった。
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