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放課後チャイムが鳴った瞬間、
私はそわそわしていた。
冬月さん(澪)が隣にいるだけで、
なんか……空気が変わるんだよね。
静かで、落ち着いてて、でもちょっと刺さる。
(うわぁどうしよ……
ほんとは今日、一緒に帰りたい……)
でも、誘って断られたら恥ずかしすぎる。
そんなことを考えていたら、
冬月さんがスッと立ち上がった。
「あ、帰るの?」
思わず声が出る。
彼女はカバンを肩にかけながら答えた。
「……帰るけど。なに」
「えっと……! ひとり? 今日は」
「いつもひとり」
即答。
(そ、そうだった。
この子、友達いない……いや、作らないタイプだ……)
どうしよう。
ここで言わなきゃ絶対後悔する。
私は机に手をついて勢いよく立った。
「あのね冬月さん!
よかったら……一緒に帰らない!?」
言った瞬間、心臓バクバク。
目の前が熱い。
断られたら明日学校休むレベルで恥ずかしい。
冬月さんは一瞬だけまばたきし、
じっと私を見る。
「……私と帰っても楽しくないよ」
「楽しいよ! 絶対! りな、冬月さんと話してみたいし!」
「どうして?」
「どうしてって……」
(どうして、なんだろ……
ただ気になるってだけじゃ理由にならない?
でも……)
「……一緒にいると落ち着くから、かも?」
言ってから、しまったと思った。
これは言いすぎたんじゃないか……?
でも——
冬月さんは、ほんの少し目を伏せた。
「……変なこと言う」
「へ!? ご、ごめん……!」
「でも、別に嫌じゃない」
「えっ、じゃあ……!」
彼女は小さく頷いた。
「……一緒に帰るくらいなら、いい」
(い、いいって言ったあああ!!)
心の中でガッツポーズした。
外に出たら風がふっと吹き、
冬月さんの黒髪が揺れる。
「風、強いね……」
「うん」
「冬月さん、髪キレイだよね。
風で揺れてもサラッてしてて」
「……観察してるの、あなたのほうじゃない?」
「え、ち、ちが……!」
「嘘。今のは冗談」
くすっと小さく笑った。
(……っ!
なにその笑い方……反則……!)
冬月さん、笑うとめっちゃ可愛いじゃん……!
気づいたら私は口が滑っていた。
「ねぇ冬月さん。
うちと友達にならない?」
歩きながら、彼女は少し考えていた。
そして——
「……友達って、どうすればいいの?」
「え?」
「私、やり方知らない」
その声は、静かで、少しだけ寂しかった。
(あ、この子……
本当に誰かと仲良くなるのが怖いんだ)
私は立ち止まって向き合った。
「簡単だよ。
一緒に帰ったり、話したり、笑ったり……
そういうの全部できたら、友達!」
冬月さんはじっと私を見て、
小さく呟いた。
「なら……もうなってる」
「えっ」
「だって今日、全部やったでしょ」
その言い方がやけに素直で、
私は胸の奥がじんわり熱くなった。
「……じゃあ今日から友達だね!」
「うん」
それは、ものすごく小さな声だった。
けど、確かに聞こえた。
この日、
“ギャル × クール”の不思議な関係が、
やっと動き出した。