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目が覚めたのは、次の日の朝だった。
「……うわぁ。
もしかして、丸一日くらい寝ちゃってた?」
完全に治ったとは言え、少し前には大怪我をしていたのだ。
そう考えれば寝すぎたのも仕方ない……とは思うけど、治ったことを考えると、やっぱり寝すぎてしまったような気はしてしまう。
しかしのんびりと眠れた感じは無く、長い時間をずっとうなされていたような――
……って、それも仕方がないか。
何せ、殺されかけたんだから。
ベッドから出ると、ルイサさんからもらった服を着ていることに気が付いた。
部屋から一歩も出ていないのに、すでに変なシワがたくさん付いてしまっている。
何で寝る前に着替えちゃったんだろう、とほほ……。
――……ああ、それにしても。
異世界に来たのは良いけど、3日目にしてトラウマが爆誕だよ。
不満を零しながら、服のシワを出来るだけ取りながら、私は身だしなみを整えていく。
嫌なことはあったけど、新しい生活はもう始まっているのだ。
出来るだけ前を向いて、しっかり頑張っていかないと……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アイナさん、こんにちは!」
冒険者ギルドに行くと、受付嬢のケアリーさんが明るい声で迎えてくれた。
この前と同じ、明るい声。
ああ、日常っていうのはこういうことを指すんだな――……と、死線を経験した私はその日常を強く噛み締めた。
「こんにちは!
ポーション用の空き瓶を売ってもらいに来ました」
「はい、おいくつ必要ですか?
ひとつ銅貨3枚になります」
採集した癒し草が50本あるので、今回買うのは50個にした。
空き瓶は1個で銅貨3枚。ということは空き瓶50個で銅貨150枚。
銅貨10枚が銀貨1枚と同じ価値だから――
「50個お願いします。銀貨15枚で良いですか?」
「わ、計算が早いですね。
えぇっと……そうですね、銀貨15枚になります。
でも、50個も持ち帰れますか?」
「アイテムボックスがあるので大丈夫ですよー」
「あ、そうでしたね!
あちらの扉から担当者に用意させますのでお待ちください!」
私はお金を払って、指示された扉の方に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数時間後に再び冒険者ギルドに行くと、ケアリーさんが明るい声で迎えてくれた。
「アイナさん、こんにちは!
……って、あれ? さっきもいらっしゃいましたよね?」
「あはは、今度は買い取りをお願いしたくて」
「そうなんですね。今日の買取品目はこちらになります」
……時間は昼過ぎ。
先ほど買った空き瓶に初級ポーションを作り、今回はそれを売りにきたのだ。
「初級ポーションは……リストにありますね。
買い取りを50個、お願いします」
「ポーションの需要は多いので助かります!
50個なので……銀貨125枚ですね。金貨も混ぜますか?」
ちなみに金貨1枚は、銀貨50枚の価値になる。
つまり銀貨125枚は、金貨2枚と銀貨25枚になるわけだ。
「はい、金貨2枚と銀貨25枚でお願いします」
「かしこまりました。
品質はC級以上でないと買い取れませんのでご了承ください。
担当者に検品をさせますので、少々お待ちくださいね」
「はーい」
……なるほど、買い取りには品質も関係するんだね。
自分で鑑定したら全部S+級だったし、ここは問題なくクリアできるだろう。
しばらくすると、ケアリーさんが慌てて話し掛けてきた。
「あ、アイナさん!?
あの、その、さっきの初級ポーションなんですけ、どっ!!」
「え? 何か問題ありました?」
「あの、検品担当者が、あの、全部、品質がS+級だって! 言ってたんですけど!?」
「はい、それが何か?」
「えっ!? えぇっと、あの!
一般的に、どんなに設備を良くしても、品質がS+級になるの、は、マレ! 稀、ですよね!?」
……あ、そうなんだ。
最高品質のS+級とはいえ、そこまでは貴重なものでは無いと思っていたけど……。
「実は私の故郷に伝わる秘術がありまして……。
それを使うとですね、S+級ができやすくなるんです!」
私はとっさに、不自然なウソをついてしまった。
……我ながら、とても下手なウソである。
「そうなんですか!?
私、この仕事を始めてからS+級を見るのが初めてで……。
検品の担当者も『なんじゃこりゃ!』って焦ってたから、パニクっちゃって……」
「そ、そうなんですね、あはは……」
……困ったなぁ、今のところS+級しか作れていないんだけど。
この調子でいろいろ作り続けると、もしかして他の錬金術師に迷惑が掛かっちゃう……?
「それで、値段の相談をさせてください。
さすがに効果が高いものなので……とは言え中級ポーションくらいの効果なので、買い取り金額は2割増しで大丈夫ですか?」
銀貨125枚の2割増しは銀貨150枚だから、つまりは金貨3枚。
キリも良くて、丁度いいんじゃないかな。
「分かりました、それでお願いします」
「ありがとうございます、早速ご用意しますね。
……それにしても」
「はい?」
「アイナさんって、すごい実力をお持ちなんですね。
……レベル12なのに」
まぁ、実はレベル99なんですけどね……。
その後は代金を受け取って、そのお金で改めて、初級ポーションを作るための空き瓶と癒し草を50個ずつ売ってもらう。
冒険者ギルドで素材を買って、冒険者ギルドで完成品を売る。
採集のために街の外に行かなくても、買い取りが続く限りお金を稼ぎ続けられる。
これぞまさに、錬金術!!
いや、やっていることは実際に錬金術なんだけど――
……あれ、何だかややこしいな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ケアリーさんの話を聞く限り、『一人前』と認められるスキルのレベルは20らしい。
私が公開している錬金術のレベルは12だから、S+級のアイテムで注目を浴びてしまう前に、少しだけ上げておくことにしようかな。
一気に上げてもアレだから、一旦はレベル14くらいで……。
ユニークスキル『情報秘匿』を使って調整して……っと。
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【アイナ・バートランド・クリスティア】
種族:ヒューマン
年齢:17才
職業:錬金術師
一般スキル:
・錬金術:Lv99(Lv14)
・鑑定:Lv99(Lv10)
・収納:Lv99(Lv7)
レアスキル:
・工程省略<錬金術>:Lv99(Lv1)
・不老不死(-)
ユニークスキル
・情報秘匿
・英知接続
・創造才覚<錬金術>
・理想補正<錬金術>
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うん、ちゃんとレベル14になっているから、これで良し。
それにしても、『不老不死』がレアスキルにしっかり追加されているね……。
やっぱり、あの日のことは夢ではないのか――
……ちなみに『(-)』ってなんだろう?
えーい、かんてーっ!
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【(-)】
レベルが存在しないスキル、且つ、
『情報秘匿』の効果で公開されていない場合の表記
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……あ、はい。
まぁつまり、他の人に見えませんよ、ってことだね。りょーかいです。