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「あれが、お城……」


揺れる馬車の窓から、段々と近づいて来た城を見てヴィオラは感嘆の声を洩らした。


ここまでの道中、ヴィオラはレナードの膝の上に座り、窓の外を眺めて過ごした。窓の外は既に暗く何も見えないが、ヴィオラは嬉しそうに眺めていた。そして真っ暗闇の中から姿を現した煌びやかなお城。今日が舞踏会の為か、外壁や城の照明あかりが眩しい程に煌々と光輝いている。


「気に入った?」


「へ、は、はい」


「それは、良かった」


良かったとは、一体何がだろうか。ヴィオラは不思議そうな表情を浮かべレナードを見遣ると、レナードは変わらず優しく笑みを浮かべると微笑んでくれた。


ガタンッと少し大きな振動の後、馬車は止まった。


「さて、ようやく到着したよ。では行こう」


レナードは、ヴィオラを抱えたまま立ち上がり、横抱きにするとそのまま軽々と馬車を降りた。本来なら多くの招待客達がいる筈の門は閑散としており、見張りの兵しかいない。それもその筈だ。入場時間はとうの前に過ぎている。今頃は大広間にて、酒を呑み、ダンスや世間話などに花を咲かせている頃だろう。


「レナード様……」


コツコツと長く広い廊下に、レナードの靴音が響いている。


「どうかした?」


「私……少し緊張してきました」


先程までは楽しみで、ドキドキやワクワク感が優っており自分自身でも気づかなかったが、かなり緊張している。ヴィオラは不安になり、レナードに身を縮こませて擦り寄った。


その姿に気を良くしたレナードは、ヴィオラを抱える腕に少し強めに力を入れると、自身により密着させる。


「フッ、本当にヴィオラは愛らしいね。……このまま広間ではなく、僕の部屋に連れ帰りたいくらいだ」


レナードの言葉にヴィオラは、嬉しそうに笑った。「本当ですか?私、レナード様のお部屋にお邪魔してみたいです。きっと、素敵なお部屋ですよね」などと話、レナードの言葉の意味をいまいち理解はしていない様子だったが。

「なら、舞踏会が終わったら……連れて行ってあげるよ」


レナードは耳元でそう囁いた。



長い廊下を抜けると遂に、大広間の扉が姿を現した。レナードは扉の前に控えていた従者に声を掛け、扉を開けさせる。その際従者は一瞬驚愕した表情を浮かべ2人を見遣るが、直ぐに目を逸らす。


だが、レナードは微塵も気にする素振りを見せる事なく、颯爽と歩き出した。

深窓の令嬢は、王太子殿下に持ち運ばれる

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