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ゲファー
22
こはく
43
好きな人は、男遊びが激しい。
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「この間の男はまっっじでハズレだったわー…お互いに遊びでいいよねって言ってたんだよ?」
彼女は中村 玲花(なかむら れいか)。高校で出会った。24になった今でも、仲良くしている。
華奢な指の間にタバコを挟んで、玲花は大きなため息と共に白い煙を吐き出す。3週間前に知り合った男が最悪だった話をしてくる。
「そいつ急に家押しかけてきて、君に本気になった、責任取れって言って腕強く掴んできたの!!マジ意味不明、警察呼んで何とかしてもらったけどさ…はぁ。」
「優しそうな人だったのにね、とにかく玲花が無事でよかったよ」
嘘。優しそうじゃなかった。胡散臭い雰囲気だったし、いつも玲花を下に見てる感じがあった。本当はそう言って共感してあげたい。けど、そうすると玲花には逆効果である。
3年前のことだ。
「バーで出会った男、無理やりホテル連れてこうとしてきてさ、キモすぎて逃げたよね。だって会ってまだ1時間だよ!?いや、最終的に行く流れになるかもしれないけどさぁ?性欲おばけすぎでしょって話!!」
「確かにあの人はちょっと気持ち悪いよね、初めて見た時もなんか玲花の体ばっかり触ってたし。」
「…だよね」
急にテンションが下がる。この時にわかったのは、玲花は自分が言いたいことを全部言ってスッキリしたいタイプだから自分が言いたいことを他人に言われるとあからさまにテンションが下がる。そういう難しいところが玲花はよくある。玲花の可愛い見た目や抜群のスタイル、愛らしい笑顔や明るい話し方を見て女の子達は友達になろうとするが、みんなだいたいギブアップする。
皆が玲花から離れる中、ただ一緒にいたいという気持ちだけで過ごしてきた結果今に至る。
「ほーんとそう!優しいし、割と温厚そうだったから遊んでたけどあんな強引なヤツだとは思わなかったわー。」
「うんうん」
「なんかイライラしてきたーっ…。ぜーんぶ面倒!!」
そう言って玲花がタバコを乱暴に踏み潰して火を消す。可愛くて目立つため、玲花がタバコを踏み潰すと通行人がギャップにやられてギョッとするのももう見慣れた。
「はぁー…一緒にいて面倒じゃないのってあんただけだなぁ…」
「そりゃ8年も一緒なんだから」
「もうそんなに経つのかー…今うちら24だもんねー。私も本格的に結婚とか考えないとアラサーまっしぐらだよぉ」
「…結婚が全てでは無いじゃん」
「んー…まぁね?でも一人で生きてくのは辛いじゃん?」
鈍感だ。道端の男の好意にはすぐ気づくくせに。
「友達と生きる人もいるよ。」
「あはっ!私友達なんてあんたしかいないし。じゃあなに、あんた一緒にいてくれるの?」
「そうしたいけどさ」
「でしょ。あー!私と結婚できるやついるかなー!」
玲花が高い声で子供みたいに笑う。一瞬つられそうになる。こらえて、下を向く。
いや、今日はこんな世間話をしに来たんじゃない。下を向いたまま話しかける。
「玲花はさ」
「んー?」
カチッと新しいタバコに火をつけながら返事をする。
「私が玲花を好きだって言ってたら、付き合ってくれた?」
「え?」
横目で見て分かる。玲花の動きが止まった。
「…」
『私今なんて言った?』が頭の中を巡った。普通に考えて、8年一緒だった女友達から急にこんな質問されると困るはずだ。どうすればいいか分からないまま固まっていると、玲花が口を開いた。
「んー…」
怖くて玲花の方を見れなかった。
嫌われたかもしれない。
怖い。
何も言わないでほしい。
ごめん。
気持ち悪いよね。
「どんな回答したって、あんた今日許嫁のとこに嫁ぐじゃん。」
現実を知らされて、急に気持ちが落ち込んでしまった。私は割と大きい会社の社長の娘で、今日はウチの会社と協力関係にある会社の御曹司の元へ行く日であった。
玲花が私の髪を触って耳にかける。
「ねぇ、どうしてそんなこと聞くの?」
「それはっ…」
「…….変なやつよね、あんた。」
そう言って玲花が笑いながらタバコを咥える。新幹線の時間が近づくにつれて、涙が出始める。
「…私っ…行きたくないっ…」
「あはっ、2人で逃げちゃう?そんなのできっこないけど。」
そう言って私の頭をくしゃくしゃにしてくる。長いネイルが少し痛い。
「お見合い前にウチらがどうしたって環境がウチらを引き裂いてくる、それが現実よ。」
「…」
「新幹線、もうすぐじゃん。」
「玲花…」
「ほーら行った行った!玉の輿に乗れるんだから笑って行ってよね!私も結婚頑張るんだから!」
そう言ってスーツケースを乱暴に渡してくる。甘い香水の匂いがする。
「玲花、最後にお願い聞いて?」
「なに?」
「最後に、名前呼んでよ」
「あー…そういえばあんたあんたばっかり言ってたね、私」
「うん、もう、それ聞いたら、ちゃんと行くから」
「あはっ、なんか今更恥ずかしいんだけどー」
言ってくれなそう。私は不貞腐れて、玲花に背を向けて歩き出した。
本当は、行きたくない。
社長の娘なんて、なりたくなかった。
唇をきつく噛んで涙をこらえる。しかし、自分の意思とは反してどんどんこぼれてくる。
玲花、玲花。
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「いろは」
後ろから聞こえたあの大好きな声に、思わず立ち止まる。
「こっち見て」
振り返ったら、もう、動けない気がした。でも玲花を見ずに新幹線に乗ったら、私は消えてしまう気がして振り返ってしまった。
「私いろはの事好きだったよ。いや、これからもずっと好きなんだと思う。」
玲花の金髪の髪が風に揺られている。頬を赤くしながら、目に涙を浮かべながら私にそう言った。
「あんたが、社長の娘なんかじゃなければ、私が男で、御曹司だったら。ずっとそう考えて生きてくと思う。」
そう言ったあと、目を細めて、子猫のような目で睨みながら私にこう言った。
「ぜーんぶ、いろはのせい。ずっと、恨んでやるんだから。」
新幹線が来てしまった。乗らざるおえなくなってしまった。玲花は歩いてこちらに近づいて顔を近づけてきた。
「いろは、行ってらっしゃい。」
そう言って私にキスをした。そのまま玲花はヒールの音を響かせて去っていった。
新幹線に乗ったあと、何も考えられないでいた。とにかく玲花が恋しかった。
〜5年後〜
「おはよういろは」
現在社長で、私の夫はそれなりにいい人。
大切にされているし、不満もない。スキンシップも慣れればどうってことはない。
「いってくるよ」
「行ってらっしゃい」
そう言って笑顔で私にキスをしてくる。もう慣れた。
夫がいない時に、ふと玲花を思い出す。甘い香水の匂いや、金髪でサラサラのストレート。横でタバコ片手に笑う玲花が恋しい。
郵便物の確認をすると、知人からの手紙が入っていた。どうやら玲花は結婚するらしい。ようやく、いい人が見つかったんだなという安心よりも、苦しさが勝ってしまった。
「っ…はぁっ…」
泣き出しそうになっているとき、知人の手紙の最後の行が目に入った。
『玲花ちゃんがどうしても伝えたい事があったみたい。同封してるから読んであげて。』
それを見て封筒を探すと入っていたのは1枚の紙切れ。
『まだ恨んでるからね( ー̀εー́ )!!』
「…ふっ」
なによこの絵文字。
そう思いながら紙切れをポケットに入れた。
あぁ、来世は、普通の女の子になってあなたに出会いたい。
fin
コメント
1件
うああああ読んだ…読んじゃったよおお😭💔 8年も一緒にいて、お互い好きなのに「社長の娘」っていう壁で引き裂かれるの辛すぎる…「いろは」って名前呼ぶシーンで涙腺崩壊したよマジで。最後の『まだ恨んでるからね( ー̀εー́ )』の紙、恨みって形の愛情でしかなくて胸がギュッてなった…。現実に負けた恋、めちゃくちゃ刺さる作品でした…✨