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どうせ、無理だと思っていた。もう、人のものになったのだと…
自分に繰り返し、言い聞かせていた。
でも、もし、違うとしたら?
そう思った瞬間、
繰り返し繰り返し、
拳の中に握りつぶして隠してきた、
「秘密」が
暴れ出した…
少しでも触れたら
指先から、熱が、
想いが伝わってしまいそうで
友人として触れることすら、
自分に禁じていたのに…
裕真は、そっと手を伸ばした。
窓からの日差しにきらめく真っ黒な髪に、指先を梳き入れる。
(さらさらだ…)
慰めるように、雪也の頭を撫でた。
「おまえは、なんも悪くないって」
雪也は、何故か声を上擦らせた。
「な、なんだよ、慰めてくれんの?」
「うん」
言いながら、あれっ、と思った。
俺は、友達として、慰めてるだけで、
ただ、頭を撫でてるだけで…
なのに、
何で、
「おまえ、なんでそんな顔をしてんの…」
裕真は囁いた。
裕真を見上げる雪也は、白い肌に血が上って、耳まで赤くなっていた。
(やっぱり、触ってしまったから。
なにか、伝わってしまったのか?)
ちらとそんな思いが心を過った。
でも
それよりも、
そんなことよりも、
自分の手で…
いつも、ポーカーフェイスで
めったに表情をゆるめることさえない
こいつを…
(こんな顔に、できるんだ)
心臓がどんどん速くなる…
心臓の音が聞こえちゃうのではないかと、
思うくらいに強く打つ。
(やばい…やばいやばい!)
裕真は、腕を上げて顔を隠した。
だが、遅かった。
雪也は、
透きとおるように赤くなった顔で
ポツリと言った。
「おまえこそ、なんて顔してんの…」