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ーーーーーーーーあれから半年たった。
私は東京に戻ってきた。
待つと決めた。
決めたけど、そのまんまあの場所にいることは自分には無理だった。
荷物があるたびに顔を合わせる。宅配ボックスを利用したとしても、生活圏内がかぶる。絶対に会ってしまう。会ってしまったら決意が揺らぐ。それだけは絶対してはいけない。会わないようにしたところで、遠くにいても後ろ姿でも彼に絶対気付いてしまう。
家の中でも彼との日々を思い出す。コンビニに行っても買い物にいってもどこに行っても一緒にいた時のことを思い出してしまう。
無理だった。
彼はきっちりけじめをつけてくると言った。
でも相手が応じなかったら?
簡単にいかないとはおもう。
ズルズル長引いたら?
…
彼があっちに戻ってしまったら…?
2人で歩いているところを見るかもしれない。
私には耐えられない。
彼との思い出しかないところだ。
引っ越しの決意をするのは容易かった。
彼に別れを告げた夜、泣きまくった。
数日間はご飯も食べれなくてたった数日でガリガリになった。毎日泣き腫らした腫れた目でいた。
幼馴染のみきに電話をした。
次の日には来てくれた。
みきは私が泣くのを初めてみたから慌てふためいていたが、「そのあきらくんって子とゆうちゃんがどんな関係だろうと、ゆうちゃんが笑っててくれてたらなんでもいいんだよ、私は。…でも待つって決めたならそれを尊重するよ。引っ越しも、もちろん手伝うよ。」と言ってくれた。
その日は2人で散々飲んだ。
ほんとに、救われた。
引っ越しの時、あきらくんに伝えようか悩んだ。
悩んだけど…
言うのをやめた。
仕事上、絶対私が引っ越したらわかる。だからいいやと思った。
荷物の受け取りは宅配ボックスにしていた。
…といっても、引っ越すのでほとんど何かを買い足すことがなかったので荷物も無かった。
引っ越す当日、宅配トラックがアパートの駐車場に止まった。
手越さんだった。
『手越さんっ』
「あー!ひさしぶりっすね!!」
『ね、なにげにひさしぶりですよね♪丁度よかった、私東京戻るのでご挨拶したかったんです』
「え?!引っ越すの?!いつ?!」
『…今日。午後に引っ越します。手越さんには引っ越してて友達居ない時話相手になってくれたから救われましたよ〜♪(笑)』
「今日?!ちょっと待ってまじ?え、さみしいなぁ」
『他の方にも宜しくお伝え下さい♪…寺田くんにも宜しく伝えてください』
こうして東京に戻ってきた。
引っ越しでバッタバタしてる間はさみしさも消えた。
仕事は、姉ちゃんのエステの栄養管理のは続けたがあとは販売に戻った。
私が東京に戻ってきたのを知った元いた会社の社長から直々に戻ってこないかとのお誘いを受けたからだ。
人員不足で困っているとのことで、仕事内容も商品のこともわかっているので即戦力になるからぜひ来てほしいとのことだった。
実は、引っ越したあと一度あきらくんから着信があった。
登録の無い番号だったが、彼の番号だとすぐにわかった。
あきらくんの連絡先は削除していた。名前をみるだけでつらくなるからだ。
あんだけ毎日電話をしていたからもう一目見ただけで分かる。
自分以外の人間の電話番号で覚えているのはあきらくんのだけだった。
…だから連絡先を消せたのもある。
かけようと思えばかけられるから…。
でも電話には出なかった。
まだ出るべきではないと思った。きっと引っ越しのことを聞いてかけてきたのだと思ったから。
全て終わってからではないと出てはダメだと思った。
私はいつまで待てばいいのだろうと思うようになった。
期間が決められていれば頑張れるが、今はただ深い闇に落とされた状態に感じた。
連絡を取らないからこそ状況がわからない。
もしかしてあっちとよりを戻すことを決めていたら?
…嫌な想像ばかりしてしまう。
1年まとう。
1年は待つ。もしすごく良い人が現れても1年はそういう相手を作らないと自分の中で決めた。
それだけでもなんだか少しスッキリした。
東京に戻ってから友達とも会いやすくなったので色々出かけた。
そのせいか出会いは沢山あった。
男の人に声をかけられることは多かった。
高校時代からの男友達と焼肉屋に行っている時その友達がトイレの隙に声をかけてきた人もいた。結局みんなで飲んで盛り上がったが、男友達は「こいつなら勝てるって思われたんだろ(笑)普通彼氏かもしんねーのに男連れに声かけねーよ(笑)」
と男としてのプライドが許さないのか少し怒っていた。
これあきらくんどの時にされたらその場でブチギレてるんだろうなあと思った。
この期に及んでも忘れたと思ってはふいにあきらくんを思い出していた。
最初の爽やかな印象とは違い、付き合っていてあきらくんは意外と短気なことがわかった。
なんで俺と付き合ってくれてるんだろう、美女と野獣だとよく言っていた。
それは私からしたら逆だったけど、時折「子供扱いしないで」と怒られることもあった。
実際、すぐ不貞腐れたり子どもっぽいところもあって困るけどそこもかわいいと思った。
でも彼にとって私は歳上だから歳下の自分が子ども扱いされるのはコンプレックスを刺激されるようなものだったのかもしれない。
身長も私が170あるのに対して彼は162。
背が高いのが嫌だったが、彼は低いのが嫌だと言っていたから私はコンプレックスを刺激する存在だったのかと考えたりもした。
だいたい喧嘩の原因はあきらくんのヤキモチから始まっていた。
そうすると不機嫌になり話を聞かない、連絡をしなくなる。
最初はなんとかなだめようとしたがこれじゃダメだとブチギレたことがあった。
逆ギレしてくるかなとも思ったが、反省し、直すと言っていた。その後からムッと来ているなとこちらにもわかるくらいでも、キチンと対話をして話して解決出来るようになっていった。
自分を変えるってなかなかできない事だ。
だから素直にすごいと思った。改善しようとしていることがすごいと思った。
私も昔はものすごく短気だった。
喧嘩で言い合いになっても絶対に言い負かさないと気が済まないタイプだった。言い返してこようもんなら、グーの音も出ないほどに叩き潰した。
自分が最後にぶん殴らないと気が済まないタイプだった。
今まで付き合った人にも元旦那にもそうだった。
でもあきらくんにはしなかった。
これじゃダメだと思った。あきらくんが勘違いで先走って怒ることを、そうじゃないと説明した。今までなら「分からないならいいめんどくさい」と切り捨てていたが、何度でも説明した。
そうするとあきらくんは「そういうことか」と納得する。
…私はこの場合こうするという正解の答えを出すのは得意だった。
自分の感情よりも先にやるべきことをやるタイプだ。動きながら考えるタイプ。そして、やるべきことや他人の気持ちを優先して…自分の気持ちを蔑ろにする。
私はよく考える。すごくすごく考える。
でも、ある程度で「まぁいいか!」で処理することができる。
しかしそれは感情を処理しているだけで消化しているわけではない。
感情の圧縮保存をしているだけだ。
いつか爆発する。
そうなる前に離れた。
仮にケリがつくまでもそのまんま付き合うとしたら自分がそうなるのがわかった。
必ず限界がくると。
限界が超えたらもう…二度と彼に会いたくないほどになるだろうと。
その前に離れた。
あきらくんは「甘えてほしい」とよく言っていた。
誰かに甘えたことがないから難しかった。
何度も何度も言われるうちに、慣れていった。
小さいわがままを言うと「かわいい!嬉しい!」と言ってニコニコするのがあきらくんだった。
…元気にしてるかなぁ…。
会いたい。
仕事帰りの夜道を歩いていると携帯が鳴った。
誰だろ。
カバンから出そうとするがなかなか携帯が出てこない。
あった!
携帯の画面には登録のない番号だった。
あきらくんだった。