夕方。
咲が台所でお茶を入れていると、リビングから亮の声がした。
「妹、悪い! 調味料切らしてたの忘れてた! 悠真、一緒に買い出し行ってくれ」
「は? 俺?」と悠真が苦笑する。
亮は財布をひらひら振って、「任せたー!」と部屋に引っ込んでしまった。
気づけば、玄関に立つのは咲と悠真の二人だけ。
「……ごめん、付き合わせちゃって」
咲が小声でつぶやくと、悠真は肩をすくめて笑った。
「気にすんな。むしろ助かるよ、妹ちゃんが一緒で」
その言葉に胸が跳ねて、慌てて靴を履く。
夜風の吹く外へ出たとき、並んで歩く距離がほんの少し近く感じられた。