「んっ、ああっ‥」
 
 静寂した部屋の中で喘ぎ声と腰を打ち付ける淫らな音、そして荒い息遣いだけが響き渡る。
 そして、薄暗いライトに照らされたベッドの上では2つの身体が重なり合い、上下に揺すられるたびにベッドが軋むのを身体で感じていた‥。
 
 「やっ、だ‥だめ‥イク‥」
 
 身体全身が震える‥
強い快感に溺れる恐怖心で、目の前の彼にしがみつく。
 
 「大丈夫?」
 
 恐怖にも感じる程の刺激に耐えきれずいつも彼にしがみつく俺に‥優しい言葉で囁いてくれる。
だが、言葉とは裏腹に俺を貫く欲望は激しさを増すばかりだ‥。
 
 「きもちいいね‥ほら‥またイッた‥」
 
 ‥これで何度イかされたのか‥もはや覚えてなどいない。
 途中何度も気を失うかと思ったが、そのたびに突き動かされ‥愛を囁かれた。
 
 「好きだよ」
 
 「愛している」
 
 
 そう何度も囁かれるたびに、彼の欲望を注がれるたびに‥
 この愛なしでは生きていけないんじゃないかと‥
 
 そう思ってしまう。
 
 愛は毒にもなる‥。
 
 
 この毒を知ってしまったら、元には戻れない。
 
 
 
 昔には戻れない‥。
 
 
 
 
 
 ‥もうラストが近いのだろうか‥。今までにないぐらいの性急さで彼の動きが加速する。
そんな彼に置いていかれないように、必死でまたしがみついた。
背中に腕をまわし、首元に頭を擦り付ける。揺さぶられるたびに‥彼の汗の匂い、呼吸音を身体全体で感じ‥全部残さず味わおうと‥忘れないようにと‥
 
 必死で抱きつく‥この身体に染み込むようにと‥
 でなければ、明日になったら‥
 
 朝になったら‥
 きっと‥
 
 
 
 「らん?泣いてるの?痛かった?」
 
 揺さぶる動きが急に止まり、心配そうに祐希さんがのぞき込む‥。
 
 
 「ちが‥う、きもちよすぎ‥て」
 
 震える声を必死で隠しながら涙を拭い‥祐希さんにしがみつく‥
 
 「もっと‥して‥激し‥いのがいい」
 
 そう言って唇を重ねる。祐希さんは鋭いから‥俺の本当の気持ちに気付かないようにと願いながら‥。
 
 
 「らん‥煽るなよ‥我慢できなくなる‥」
 
 その言葉通り、祐希さんの動きは激しさを増した。何度も貫かれ両足は痙攣を起こすほどに震え‥幾度となく絶頂を迎えた。
 
 
 「んっ、らん‥俺も‥イク」
 低く耳元で告げられた後‥祐希さんの熱を最奥で感じた‥。
俺を愛してくれる証‥。
 
 ‥達した後、必ず大きな深呼吸をする彼。
“抜くね“と優しく告げ、離れていく‥。
 不思議だ‥。元々挿入する場所ではないのに‥こうやって離れてしまうと‥
 寂しさばかりが襲う。
ああ‥また1人になってしまったと‥。
 
 
 繋がれば繋がるほど‥感じるこの孤独は一体どこから押し寄せてくると言うのだろうか‥
 
 
 寂しくてたまらない‥
 
 
 
 
 
 「藍‥おやすみ」
 
 乱れた身体を整えた後、祐希さんが髪を撫でながら微笑む。
 
 「まだ‥寝らん‥眠くないし」
 「くすっ、嘘だね‥さっきから目がトロンとしてる‥ほら‥寝ていいよ。寝るまでそばにいるから‥」
 
 
 祐希さんは少し微笑み、俺の背中をトントンと優しく叩く。
 「子供じゃないんやけど‥」
 
 口をとがらせ悪態をつくが、そんな俺に構うことなく祐希さんは優しく微笑み、見つめて来る。
 
 寝るもんかと必死で抵抗するも‥それは虚しく、次第に瞼が重くなり‥俺の意思を裏切るように強烈な睡魔が襲う。
 
 必死で開いた目は祐希さんを見つめているのに‥
 
 寝たらだめ‥
 寝てしまったら‥
 
 
 きっと‥
 祐希さんは‥。
 
 
 嫌だ‥
 
 
 そんなのは嫌だ‥
 
 
 
 
 口には出せない願望が溢れてくる。
 
 寂しいと伝えれば‥祐希さんを困らせるだけだ‥
 
 そんな事はよく知っている。
 だから、話せない。
 
 
 お願い‥もう少しだけ‥
 もう少しだけ‥そばにいたい。
 
 
 祈るように祐希さんの腕に手を伸ばし、握りしめる。
 
 どうか‥
 
 目が覚めても‥
 
 祐希さんがいますようにと‥
 
 
 
 
 
 
 どうか‥
 
 
 朝が訪れませんようにと‥
 
 
 
 「藍‥愛してる‥」
 
 
 最後に祐希さんがそう呟いた気がしたが‥
 
 
 
 意識が遠のいた今となっては‥俺の願望だったのかもしれない‥
 
 
 
 
 
 
 「‥ん‥、はっ‥」
 ふと目が覚め‥意識がはっきりすると同時に飛び起き、隣を見つめる。
 
 隣の‥祐希さんがいたはずのベッドのシーツを触ると‥もうすでに冷たくなっていた。
 
 
 
 痛む身体を無理矢理起こし‥慌ててベッドから降り‥祐希さんを探しまわる‥
 
 
 
 でも‥
 
 
 
 
 
 
 
 祐希さんは‥
 
 
 
 
 
 
 
 どこにもいなかった。
 
 部屋は綺麗に整えられていて‥まるで最初から祐希さんは居なかったかのようなそんな錯覚を起こすほどに‥。
 
 
 
 
 
 
 失意の中、ベッドに戻り倒れ込む。
 
 
 
 
 きっと、祐希さんはもう旅立ってしまった。
 
 
 
 
 イタリアへ。
 
 
 「挨拶もなしに行かんでもええやん‥」
 
 
 思わず呟く。祐希さんはいつもそうだ。
さよならを言わない‥。
 
 
 
 見送りぐらいさせてくれてもいいのに‥
 
 
 でも、知っている。
 
 
 
 それが祐希さんなんだと‥。
 
 
 
 今日だって本当は泊まる予定じゃなかったのに‥ギリギリまで居てくれていたんだと思う‥。
 
 
 俺が寂しくないようにと‥。
 
 
 
 それでも‥
 
 朝になり愛しい人が居ない世界は‥
 
 
 寂しく‥
 
 
 孤独で‥
 
 気がつけば‥
 
 
 子供のように泣き喚いた。
 
 
 
 
 願っていたのに‥
 
 
 
 
 届かなかった。
 
 貴方のいない朝が訪れる‥
 
 それからは‥
 
 
 寂しい‥
 
 
 
 夜が寂しい‥
 
 
 
 狂ったように夜が寂しいと思うようになった。
 
 
 
 ああ‥
 
 
 
 この寂しさを‥
 
 
 忘れられるなら‥
 
 逃れられるなら‥
 
 俺は‥‥‥‥‥
 
 
 
 きっと‥‥‥‥
 
 
 
 
 他のぬくもりを探してしまうだろう‥
 
 
 
 弱い心を責めることになったとしても‥。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ※14さんがイタリアに旅立つ前日のお話。そして寂しいが故に12が15の彼と夜を重ねる‥そんなストーリーです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント
4件

そっかー 超遠距離恋愛…超寂しがりの藍くんは会えなくて辛いんだよね 藍くんを好きになる子は絶対叶わない恋になるの確定なんだけどね💦 罪な子だね〜藍くん♡
なるほど、それで藍くんに気があった甲斐くんを捕まえたわけですね!藍くんモテモテやから誘われたら誰でもイチコロですねー😊