「はい、メイクできたわよ。あとは髪型ね。それより貴女、白梨花月さんでしょ?優等生、美人で緑川くんの彼女だなんて凄いわねー。」
「あ、いえ……その彼氏彼女とかではなくて……その……。」
「またまたー。本当に好きな人同士ほど、自分では気づかないものよ。それに、BCC会たちがスカウトして来るだなんて、よっぽどのことだもの。出会いは?付き合ってどのくらいなの?告白したのはどっち?」
「あ、その……出会いは…あまり話したくはないのですが……お付き合いもしていないですし、告白とかも……ないです。」
「ふーん……じゃあ緑川くんのこと、嫌い?」
「い、いえ!そんなことはないです。ただ、分からなくて……。家族としては好き……なのですが、その、それ以外の好きというものが分からなくて……。何をもって恋愛の好きなのか分からなくて……。」
「何をもってなんて、あってないものよ。気づいたら気になっていた、好きになっていた。それ以上もそれ以下もないでしょう?その相手のことを大切に思えるなら、それはもう恋ってことでいいんじゃない?」
「でも……私、自信持てなくて……もし、恋愛としての好きだとしたら……自分にそんなことできる権利なんてないし、不幸にしてしまうことが怖くて……。」
「つまり花月さんは、自分といることで相手が不幸になると思っているわけね。幸せになるか不幸になるかなんて分からないわよ。それに、もし……その相手の人が花月さんのことを好きだったらどうする?」
「そんなこと絶対に……」
「100%無いって言える…?自分以外の感情が分からないのなんて、当たり前のことよ。だって、皆が皆、心の内を表に出すわけじゃないでしょう?近づいたり離れたりしてみてもいいんじゃない?そうやって、相手のことを知っていければ、自信につながるかもしれない。」
「でも……。」
「このベストカップルコンテストってね、元々は友達以上恋人未満の人たちを応援するために作られたの。心が不安定な時期だからこそ、背中を押して幸せになってもらおうっていう思いから始まったのよ。最近はもう付き合っている人に声を掛けることが増えてきたけど、信念は変わらないわ。大切な人と過ごす時間を作って、幸せになってほしい。だから私たちみたいなヘアメイクも協力しているわけだし、何百年も続いているわけ。」
「その……聖さんと私は、友達以上恋人未満に見えますか……?」
「そうねー。でも、ちょっと違う気もするかな。互いに違う路を一方通行で歩いている感じ。まあ、そんなに重くとらえず気楽に楽しんでちょうだい。」
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