テラーノベル
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麗奈は少しばかり息を切らせていた。どうやら、ビアレストランから追ってきたようだ。
かなり苛立っている様子だった。
「何してるの、二人とも?」
「ああ、麗奈さん…。」
「優香……あんたホントにフザケてるわね……。」
「…………。」
「会社の人や私の誘いは断るのに、晶さんの誘いは受けるのね……。」
「…………。」
「黙ってやり過ごそうとしないでっ!何か言いなさいよ!」
「まぁまぁ、待ってよ、麗奈さん。麗奈さんにメールしなかったのは悪かったよ。」
「晶さんは黙ってて!私は優香が許せないのよ!」
麗奈の怒り、それはビアレストランで優香が言ったとおりだった。
経緯はどうであれ、優香が自分より先をいくことが許せないのだ。
「それに、晶さんも優香の肩触って……何しようとしてたの?……まさか。」
「違うよ!優香が麗奈さんに誤解されたかもって言ってたから、励ましてただけさ。」
「ていうか、『優香』って呼び捨てなんだ……。いつの間に、そんなに仲良くなったの?」
「違うよ、今のは言葉のアヤってやつ。麗奈さん、落ち着いて!」
「…………ホントに?それと、晶さんがレストランで言ったことはホント?」
「え?」
「『たまたま優香に出会した。』って言ってたよね?」
「あ、ああ…それは確かに。」
「じゃあ、別に私より優香がよかったってわけじゃないよね?」
「それは……。」
「『それは……。』なに?」
優香は圭一をチラりと見ると、すぐに背を向けた。
「そうだよ……。」
「だったら、晶さん、今私にキスしてよ。」
「え?」
「嫌なの?」
「そんなことは……。」
「じゃあ、早くしてよ……!」
麗奈は圭一に抱き着くと、目をつぶって顔を上げた。
「あ、ああ……。」
圭一は麗奈の肩を掴んで、キスをした。
圭一はすぐに離れようとしたが、
麗奈は「まだやめないで!」と言って、圭一の頭を掴んで離さない。
麗奈は圭一とキスしながら、勝ち誇ったように優香を見る。
優香は無表情のままではあったが、どこかいつもと違っていた。
優香は「見ていられない。」とばかりに、踵を返してどこかに去っていった。
「あ、優香!」
圭一は麗奈を振りほどいた。
「ちょっと、晶さん!」
「放っておけないよ!またあとでね!」
圭一は慌てて優香を追う。
麗奈は何か言っていたようだったが、圭一の耳には届いていなかった。
優香を見失った圭一は、意気消沈しながら、とりあえず落ち着くためにNightFlowerに向かった。
見慣れたドアを開けると、圭一は不意を突かれた。
優香がカウンター席に座っていた。
まだ何も注文せず、圭一が来るのを待っていたようだった。
圭一を見て、バーテンダーは目配せをした。
酔った中年男性が優香の隣に来て、何か話しかけている。
優香は無言無表情で聞き流していた。
圭一は近寄ると、中年男性の前に手を出して話を遮った。
「なんだお前?」
「…………悪いが俺の連れなんだ。ナンパなら他所でしてくれ。」
「何ぃ……?」
「…………。」
圭一は中年男性を睨む。
その目は怒りに満ちた目……今までの感情を押し殺した冷徹な目ではなかった。
圭一自身、そのことに対して自覚はないだろう。
「…………圭一、遅い。」
手っ取り早く中年男性を追い払うため、優香は圭一の腕掴んで顔を寄せていた。
もちろん、圭一に合わせた演技ではあるが。
それを見て、中年男性は舌打ちしながら自分の席に戻っていった。
「…………。」
圭一は優香の隣に座る。
「坊っちゃん、そちらのお嬢さんは……。」
バーテンダーは優香が「圭一」と言ったことに驚きを隠せないでいた。
「いいんだよ、マスター。もう全てお見通しのようだ。」
「しかし、坊っちゃん……。」
「大丈夫だよ……ありがとう、マスター。あ、それより……。」
「ミリオンダラー……二つ。」
優香がつぶやく。
「……どうやらそのようですね。……かしこまりました。」
バーテンダーは状況を理解し、いつもどおり粛々とカクテルを作りだした。
「…………。」
「…………。」
「お待ちどうさま。」
優香と圭一の前にカクテルが置かれる。
圭一は一口……飲み込むと、ようやく口を開いた。
「なぜ麗奈に話さなかった?」
「…………わからない。」
「…………。」
「麗奈とのキス……よかった?」
「優香、あれは………。」
「いい、言わなくても。いつものこと。」
「……いつものこと?」
「何かあれば、ああやって、私より上に立とうとしてた。」
「あれは、あの場を収めるために仕方なく……。」
「わかってる……けど……。」
「…………けど?」
「…………何でもない。」
「…………。」
優香はカクテルを飲み干すと、立ち上がった。
「優香?」
「……金曜日、港公園で待ってる。」
そう言い放つと、優香は足早に店から去っていった。
「…………。」
圭一は、自分の一番のお気に入りのカクテルをじっと見つめているしかできなかった。
つづく
コメント
1件
ひゃ〜!!第6話もアツすぎた😭💕 麗奈ちゃん、完全にストーカー化しててビビったけど、それだけ優香さんへの嫉妬がヤバいってことだよね…。でも圭一くん、まさかのキスしちゃうんだ…!?あの場面、心臓バクバクしたよ🥺 そして優香さんが「圭一」って呼んだ途端の空気感、やばくなかった!?マスターも驚いてたし、あれは優香さんの中でも何かが変わった合図なのかな…。 次回、港公園で何が起こるの!?待ちきれないよ〜!!🌸
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