もう、嫌だった。今までの自分が恥ずかしくて情けなかった。優斗君には私は似合わないという事は分かっていたはずなのに。言葉にするとどうも嫌気がさす。
地面を見て歩く。そうすれば時間は短く感じる。涙が溢れるよりも早く家に帰りたかった。その時。
「ねぇ、大丈夫?」
突然引き止められたと思ったら、クラスメートの麻央君に顔を覗き込まれ、心配そうにこちらを見ている。
「えっと、七瀬さんだよね。いつもと様子が違うし辛そうだったから、声かけちゃった。ごめん、迷惑だったかな?」
そんなにわかりやすかったかと、驚きながらも
「大丈夫です。少し嫌な事があって。迷惑なんか、全然。声かけてくれてありがとうございます。」
と返事をした。すると、
「前からさ、君のつけてたキーホルダーのキャラが好きで七瀬さんも好きなのかなって、気になってたんだ。」
「本当ですか。あまり人気のないキャラなので同士がいて嬉しいです。これからも話しませんか?」
辛さを紛らわせたい。そんな気持ちでこれからもなんて付けて、麻央君を利用した。そこからは仲良くなるのに時間は要らなくて。昼休みや、お昼ご飯は一緒に食べるようになった。あれから優香とはあまり仲良く出来なくて。避けてしまっていた。もう、あの事は忘れて幸せな日々を過ごしていた。…はずなのに。
美術のデッサンで相手が優斗君。なんて意味がわからん。やっと忘れられると思っていたのに。仕方がないから何も話さず描いていく。話さずやっているのはこの組だけ。だけど突然
「七瀬さんってさ、最近麻央といるけど何か共通点でもあったの?」
急に聞いて来たもんだから、すぐに返事はせず、ゆっくりと口を開く。
「うん。好きなキャラクターが一緒でね、意気投合しちゃって。…どうして急に?」
少しだけ、希望を持って付け足していく。
「別に、少し気になっただけ。そーいえば、優香さんが最近構ってくれなくて寂しいって言ったよ。…もしかしたら恋かもってね。」
少しだけ、顔が険しくなっていく。私はこの顔を知っている。気分が嫌な時になる顔だ。あぁ、つくづく嫌われてるなぁ〜。やっぱり諦めよう。そうしよう。
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