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今の季節とリンクしてて、ストーリーの情景が頭に浮かびました✨戦闘シーンとのギャップが絶妙に美しいです☺️
episode24 紅色の狛犬
ブライドside(多分今回はずっとブライド視点)
家を出てから数十分ほどたっただろうか。
もう少しで山のふもとに到着する。そして、山に近づくほど空は暗く、黒さが増していく。
でも、ここまで来ても私の体調に変化は特にない。ずっと走っているせいで息が荒くなっているくらいだ。
山を見上げると、まだ祭りの明かりが付いている。主犯はまだ逃げていない可能性が高い。
迷わず山へ直進し、坂をどんどんかけ上る。提灯の飾りが増えていき、日本特有の祭りの雰囲気が強くなる。
山の中に人は全くと言っていいほど居ない。当たりを見回しても、虫と草木と提灯と階段くらいしか無い。音も、響くのは自分のローファーの音だけ。辺りも空のせいで暗いので、ますます不気味さが増す。
階段を上る中、ふと考えた。祭りにしては静かすぎないか、と。私の故郷の山の祭りは、人こそ少なかったものの、音楽や話し声で満たされていた。でも、ここは、、。
考えればどんどん疑問は湧いてくる。
そもそも、これを本当に祭りと言っていいのだろうか。映矢輝から聞いた話では、祭りは大きな信仰を集められている神社でしか基本的には行われないらしい。信仰者はもちろん祭りに来るし、賑わっている祭りを見ると他の人間も祭りに参加したくなる。だから祭りは楽しく、神聖なものなのだと。
だが、ここは真逆だ。人の気配なんてない。さらに不気味な気配で誰も寄り付こうとしない。主犯の目的がますますわからない。
考えているうちに、神社の鳥居が見えてきた。
( 出店もほとんど閉まってやがる…。ほんとに誰もいない。)
辺りを見回していると、後ろから気配がした。
急いで武器を手に持つ。だが、殆ど気配に殺気はないような、。
「人間?もう来たのですね。思ったより早かったわ。」
女性の声だ。後ろを振り返ると、見たことのない美形の女がいた。
誰かもわからない。でも無意識に綺麗だと思った。でも口ぶりからして敵なのかもしれない。
「ここで人に会うとは思わなかったよ。あんた、何者?」
「私の名は酸漿。この神社で守り神、、いわば狛犬をしているものです。」
「可愛い人間さん、今なら見逃してあげます。山を降りことをお勧めしますわ。」
「その様子だと、、この空について何か知っていそうだな。私はブライド・エモーション。あいにく私の知人が苦しんでいるんだ。今すぐこの空を止めてもらおうか。」
「あらまぁ、普通の人間さんじゃなかったのですか。でも、それは無理なお願いですわ。この空は当神社の神を復活させるために必要不可欠なもの。この国の方には悪いですけど、止めることは叶いません。…少し、わたくしの独り言を聞いていただいても宜しくて?」
「、、、手短に。」
「お心遣い感謝致します。ブライドさん、この国の秋はどうやってできているか知っていますか?」
「独り言じゃねえだろ、、、。それに私はこの国に来て初めての秋だ。故郷の秋の成り立ちしか知らねえ。」
「それじゃあ、まずそれから説明してあげますわ。この国の秋は、とても短いんです。でも、そんな秋でも私達秋の祭神たちは忙しくなる。例えばですけど、各地の畑や田んぼに実りの祈りを届けたり、外を秋の香りでいっぱいにしたりするのです。」
「それで、数十年前から直近まで、わたくしとうちの神の担当は木の葉を赤く染め上げることだったのです。人間たちは知らないでしょうけど、葉は一枚一枚丁寧に色塗りされているのです。」
「でも、最近は冬の力が強すぎる。どれだけ急いで塗っても、すぐに寒気が葉を枯らしてしまう。そのせいで、うちの神は秋の神としての力を失い、昏睡状態にまでなってしまった。そこでわたくし達、思ったんです。実りの祈りや、秋の香りを全て集めれば、秋の力をもう一度あの方につけることができる。って」
「そう。あともう少しなんです。あともう少しであのお方が復活できる。だから、あなたが邪魔をするなら問答無用で攻撃しますわ。でも、今なら見逃してあげると言っているんですよ。」
「なるほど。事情は分かった。でも、この空はどう関係があるんだよ。」
「ある方に言われましたの。これを使えば効率的に秋を回収できると。」
(ある方、、、)
「まぁ、心情はわからなくはねえけどよ。ここまできて引き下がるわけにも行かないんだ。」
「今すぐ空を元に戻すか、私に退治されてから元に戻すか。好きな方を選びな。」
「、、、まぁ戻すのにもかなり時間がかかりますがね。私も引き下がれないのです。秋を実らせる邪魔は、させませんわ!!」
「勢いで切り捨てるまで!!」
そう言って、酸漿は綺麗に飾られた刀を取り出す。
私も、武器を構える。
「切れ味で上回る!!」