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空から、落ちてきた。それも某アニメ映画の如く。例えればそんな感じらしいのだけれど、映画とは訳が違う。聞けばその時には既に血だらけ傷だらけ、とにかくまずい状態だったらしい。そして数日間眠ったままでもあった、というのが彼らの話だった。
『……っ、っ』
「待って、水飲む?」
数日間眠ったままだったという事もあってなのか、声が張り付いたように出てこない。それに気付いたもう1人の男の人が水の入ったペットボトルを差し出してくれた。
『……実は、こうなる前に交通事故に遭った事しか覚えてなくて』
「他に分かる事は?」
『それ以上、は何も思い出せないです。分かるのは自分の名前ぐらいしか』
ペットボトルの水を口に含んでから出た声は掠れていた。多分これはこれから治るものだから大丈夫だろう。だけど、問題はそうじゃない。どう頑張っても、事故の前の記憶が霞んで思い出せない。家族の事も、友達の事も、自分に関係する事も全部。
「……そういえば名前聞いてなかったわ」
『空野ともりです』
「ぼくは叢雲カゲツ。よろしくな」
「オレは伊波ライ。よろしく!」
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