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『無個性の影 ― 二人きりの部屋』
寮の部屋。
カーテンの隙間から、昼の光が差し込んでいた。
ベッドの上で
緑谷出久 のまぶたがゆっくり動く。
「……ん…」
小さく息を吸う。
視界がぼやけていた。
少しずつ天井が見える。
「……あれ…」
声はかすれていた。
その時、椅子の軋む音がする。
「起きたか、少年」
横を見ると、そこに座っていたのは
オールマイトだった。
「オール…マイト…」
「大丈夫か?」
デクはゆっくり体を起こそうとする。
「無理に動かなくていい」
オールマイトが静かに言う。
「君はかなり疲れていた」
デクは少しだけ視線を落とす。
「……すみません」
「謝る必要はない」
少し沈黙が流れた。
オールマイトは腕を組みながら言う。
「少年」
「君は頑張りすぎだ」
その言葉に、デクの肩がわずかに揺れた。
しかしすぐに首を振る。
「そんなこと…ないです」
「僕はまだ…」
「全然足りないので」
視線を合わせないまま答える。
オールマイトは静かに見つめた。
「……」
「君はまた隠しているな」
デクの手がぎゅっと握られる。
「隠してません」
少し早口になる。
「本当に大丈夫です」
「僕は平気です」
だが声がわずかに震えていた。
オールマイトはため息をつく。
「……少年」
だが、それ以上追及はしなかった。
代わりに聞く。
「今夜まで私がここにいようか?」
デクは少し驚いた顔をする。
しかしすぐに目を逸らした。
「……」
数秒の沈黙。
「……大丈夫です」
小さな声。
「一人で平気です」
オールマイトはしばらくデクを見ていた。
その目には心配があった。
「……そうか」
ゆっくり立ち上がる。
「だが一つ約束してほしい」
デクが顔を上げる。
「今夜」
「一度は部屋から出てくること」
「夕食でも、水でもいい」
「誰かの顔を見るんだ」
デクは少し迷った。
それから小さく頷く。
「……はい」
「夜には出ます」
オールマイトは少しだけ微笑んだ。
「よし」
「約束だぞ、少年」
そして扉の前で立ち止まる。
「君は一人ではない」
そう言って部屋を出ていった。
パタン。
扉が閉まる。
部屋には静けさが戻る。
ベッドの上でデクは膝を抱えた。
「……」
オールマイトには言えなかった言葉が、胸の奥に残っている。
小さくつぶやく。
「……僕は」
「本当にここにいていいのかな」
窓の外では、夕方の光が少しずつ近づいていた。
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我はしゃけおにぎり🍙
ここと🌹🫶 @ペア画
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